今回は、『∀ガンダム』の感想記事第17回目です。
いよいよ『∀』の物語も最終回。ロランたちと、ラスボスの立ち位置となったギンガナムとの最終決戦が描かれることになりますが、それに負けないくらい大きく重きが置かれていたのが、最終決戦後のロランたちの未来の描写でした。最終回の1/3くらいの時間を割いて、エピローグをやるなんて、かなり珍しくて大胆な構成だよなぁ。
なお、前回(第46~48話)の感想記事は↓コチラです。
bongore-asterisk.hatenablog.jp
第49話「月光蝶」
2000年3月24日放送
登場した敵他:ターンX、バンデット、マヒロー
「∀が、征く―。」「ロランが、乗ったのか!?」
STORY:ディアナ・カウンターとギンガナム隊の戦闘は激化し拮抗状態にある中で、ジョゼフは、前回奪還した∀ガンダムをロランに返すことなく、自分で運用し続けていた。そんな中、戦局を大きく動かすべく、ギンガナムは再びターンXに搭乗し、戦場へ赴いた。それを捉えたジョゼフは、∀ガンダムで挑むも返り討ちに遭い、またターンXを止めようとするハリーのゴールドスモー率いるスモーの連合隊は、逆にそのエネルギーを奪われ、ターンXの月光蝶システムの起動を許してしまった!もはやディアナ・カウンターそして人類側に打つ手はないのか?この危機的状況の中で、ついにロランのもとに∀ガンダムが戻った!
サブタイトル通り、今まで不完全ながらも発動していた月光蝶システムが、いよいよ本格的に稼働してしまうお話。しかも、それは∀ガンダム側のものではなく、敵であるターンX側のものという、厄介なドラマ展開になりました。物語も次回で最終回ということもあり、ほぼ全編にわたって様々な角度から戦闘シーンが描き続けられているのは、『∀』としてはかなり珍しいところ。そうした中でも、「ガンダムシリーズ」らしい人間の狂気や、『∀』らしいロランたちの人間らしさがしっかりと挿入されていることに、注目させられます。
前回、ロランたちと合流したことで、実質的に味方になったディアナ・カウンター。北アメリア大陸を侵攻するギンガナム隊を迎え撃ちますが、戦局は拮抗しており、損害もじょじょに拡大している状況でした。コレンも戦線復帰して加勢する一方で、ロランは∀ガンダムを奪還したにもかかわらず、未だコアファイターで戦闘の補助に回っている状態。それもそのはず、前回奪還に尽力したジョゼフが、以降∀ガンダムを返してくれず、そのまま乗機として運用していたからでした。今回は、序盤よりディアナ・カウンターとギンガナム隊の激戦が描写。シーンだけ観ると、ギンガナム隊の優勢に見えますが、実際の戦局は拮抗状態にありました。ディアナ・カウンターの主力モビルスーツは、ここでもウォドム。大柄な機体であるため、マヒローに下から潜り込まれる等するとやられていましたが、総じて観ると決して悪い活躍ではありませんでした。物語序盤から運用されているウォドムが、ここでもまともに活躍しているのには、この機体の汎用性の高さが窺えます(使える装備が限られているというのもあるんだろうけど)。そして、そんなのを相手に前からまともに戦ってきた地球人って…意外にスゴくね?そんなディアナ・カウンター側も負けてはおらず、コレンが魔改造されたカプル(コレンカプル)で出撃し戦果を挙げたほか、∀ガンダムも戦線復帰。しかし後者について操縦していたのは、ロランではなくジョゼフでした。前回∀ガンダムを奪還して以降、ちゃっかり自分の乗機としてしまっていたジョゼフ。ロランは「南方生まれとしての意地を見せるため」と言ってたけど、実際はギンガナムの言う闘争本能にかられていたからじゃないかなぁ。しかも、すっかり英雄気取りだし、死亡フラグがビンビンに立ってるんだけど…。
ポゥの部隊がスエッソンのマヒロー隊と接触し、戦闘を繰り広げていた頃。リリの乗るギャロップは、敵陣のすぐ目の前まで進撃中。マリガンはリリのことを思って後退を提案しますが、リリにその選択はありませんでした。同じ頃、代わらぬ戦局に業を煮やしたギンガナムは、ターンXで出撃。ウォドムやボルジャーノン等のディアナ・カウンター側のモビルスーツを、次々に撃破していきます。Aパート後半では、いったんロランたちと離れ、マリガンたちとともにいたリリの様子が描写。攻撃の雨あられを受け、ビビリちらかしながらもリリのことを案ずるマリガンに対し、リリは全く動じず、的確に兵士たちの動きにつき指示を行っていました。「兵隊は命を懸けているのに、命令を出す者が後ろにいられますか!」と言い放ち、マリガンの言葉を跳ね除けて、ほぼ最前線で戦い続けるリリ。すっかり彼女も、立派な女性になりましたね。一方のギンガナム隊では、とうとうギンガナムが再びターンXに搭乗して出撃。迎撃してくるボルジャーノン等を次々に破壊し、周囲ではそれの爆発による黒煙が各所で上がります。確かに戦局は拮抗状態なのですが、ギンガナム隊側の攻撃が遅々として進まないという感じではない状況。ここでのギンガナムの出撃は、少々時期を早まり過ぎている印象を受けます。自身の唱える人間の闘争本能に、自分も囚われていっちゃってたんだろうなぁ。錯乱状態になって、自らスエッソンも倒しちゃってるし…。
定期飛行船に隠れて、ギンガナムの本拠地まで接近したジョゼフは、ターンXを発見するや否や、すぐに降下して戦闘を開始。なかなかの空中戦を見せ、一度はターンXを撃破したかに見えましたが、それはギンガナムのワナでした。分離したターンXの術中にはまってしまったジョゼフは、最大のピンチを迎えますが、そこへハリーのゴールドスモー率いるスモーの連合隊が到着。すんでのところで、ジョゼフを∀ガンダムごと救出します。Bパートでは、ジョゼフの乗る∀ガンダムと、ギンガナムのターンXの戦闘が描写。最初こそ、ギンガナムのスキを突いて奇襲に成功したジョゼフでしたが、逆に返り討ちに遭って大ピンチに陥ってしまいます。ターンXを撃破したと思い込み、フランの名前を口走ってしまって以降、一転してやられる側になってしまったジョゼフ。明らかな死亡フラグだったので嫌な予感がしたのですが、それが的中する形となりました。ちなみに、ここでギンガナムはジョゼフを殺す気はなく、彼を解析して使い物になりそうであれば兵士にしてやろうと画策。彼の身体を解析していました。「サイコミュ」や「精神波」といった、「ガンダムシリーズ」ではお馴染みのワードも多数出てきたけど、ちょっとムリヤリねじ込んだ感は否めなかったかな。
ハリーは差し違える覚悟でギンガナムのターンXに挑みますが、ターンXはただでさえ強い他、スモー各機のエネルギーをじょじょに吸い取って月光蝶システムを発動。極彩色の異様なオーロラが空一面を覆い、ソシエたちはその光景に唖然とします。そんな中、∀ガンダムからジョゼフは救出され、空いたコクピットを取り外してコアファイターのドッキングが完了したことで、久しぶりに∀ガンダムは本来の姿を取り戻し、パイロットもロランに元通り。すべての人々を救うため、彼はターンXのもとへと出撃していきます。実質的に囚われの身となっているジョゼフを救うため、今回大奮闘したのがハリーたち。スモー隊のエネルギーを利用されて、ターンX側の月光蝶システムの起動を許してしまいますが、それでもターンX側にダメージを与え、∀ガンダムごとジョゼフを救出する等、しっかりと戦果を挙げていたのはGoodでした。月光蝶含むここらへんの描写は、かなり気合いが入っており、ギンガナムもハリーたちも並々ならぬ表情に。ハリー、ギンガナムを倒そうとしているのは当然なんだけど、刺し違える覚悟まであったんだね…。こうしたハリーたちの尽力あって、∀ガンダムを取り戻したロラン。コアファイターをそれにドッキングさせ、久しぶりに完全な形で出撃していきます。倒すべき敵は、当然ターンX/ギンガナム。さあ、これが最終決戦だ―!
第50話(終)「黄金の秋」
2000年4月14日放送
登場した敵他:ターンX、バンデット
「あれ…、繭の玉が立っているみたい…。」
STORY:上空で激しくぶつかる、∀ガンダムとターンX。しかしそれは、ロランの意図せぬ月光蝶システムの起動を呼んだ。多くの人々のおかげで、最悪の事態は回避されようとする中、ロランとギンガナムの、人類の明日をかけた戦いは続く。人類は本当に、闘争本能にとらわれた一動物に過ぎないのか?そして、起動してしまった月光蝶システムは、かつての黒歴史と同じく破滅を呼ぶしかないのか?ロランが戦いの中でその答えを出すとき、各々が、それぞれの未来を歩みだす―。
とうとう『∀』も最終回。当然ギンガナムとの決着がつく一編になるのですが、それは前半15分ほどで終了し、残りの10分近くは、戦争終了後のロランたちの姿が長い時間をかけて描かれるという、かなり異色の構成となりました。この後半のエピローグの情報量がえげつないほど濃く、今までこの作品を観てきたからこそ、様々な感情が次々に押し寄せる感じになっているのは秀逸。何回もこのシーンを反芻することで、「『∀』という作品を観てよかった」と思えました。『∀』という作品は、異質ながら何かとてつもなく大切なものを内包している作品だったなぁ。
前回、再び∀ガンダムに乗り込み、ターンXに立ち向かっていったロラン。ギンガナムはそれを待ってましたと言わんばかりに迎え撃ち、激しい戦闘となり、やがてそれは∀ガンダム側の月光蝶システムも起動してしまいます。黒歴史が再来しつつあると悟ったディアナたちは、使えるエネルギーをすべて投入してバリアを張り、月光蝶による被害の軽減を敢行。そうした中で、メリーベルのバンデットを排除し、月光蝶システムの完全起動をすんでのところで妨害したのは…。前回の続きからスタートのため、今回は∀ガンダムとターンXの激戦からスタート。両者一歩も引かない戦いっぷりを見せ、またギンガナムの考え方に徹底的に反抗してみせるロランでしたが、そのぶつかり合いが、∀ガンダム側の月光蝶システムの起動を許してしまいます。このままでは黒歴史の再来は時間の問題でしたが、それを身を挺して妨害し、そして時間稼ぎを行ったのが、コレンでした。前回、カプルを魔改造したコレンカプルを駆っていたコレン。今回彼は、ソシエとメシェーのカプルをブースターとしてさらなる強化改造を施し、ロランたちの戦いに介入しようとしたメリーベルのバンデットを文字通り叩き潰したうえで、∀ガンダムとターンXの間に割って入って、月光蝶システムの完全起動を遅らせます。命を賭して立ち向かい、そしてガンダムの存在に恐怖と恨みがあるはずなのに、「∀だって、時代を開けるはずだ!」と叫んで散っていったコレン。もうこの時点で、涙無しに観ることが出来ません。最初はイカれた軍人として出てきたコレンが、こんな感じのキャラにまで成長するとは、完全に予想外だったよ。
コレン「その金縛り状態をほどかないと、また黒歴史が来るぞ!∀だって、時代を開けるはずだ!!」
月光蝶システムの起動により、地上でも混乱が生じ、ルジャーナ・ミリシャもバラバラ状態。そんな中、偶然ウィルゲムが近くに不時着し、そこから脱出していたミハエル大佐の気球も付近を航行していきます。こうして偶然の再会を果たした、リリとグエン。グエンは未だ自分の野望を捨てていない一方で、リリの目はかなり冷ややかでした。今回の前半15分は、先述のとおりロランとギンガナムの戦いの描写が中心となりますが、その合間を縫う形で、リリとグエンたちのやり取りの描写が挿入。被弾したウィルゲムで不時着し、偶然リリと再会するも、彼女からは冷たくあしらわれ、最終的には同じく不時着したメリーベルとともに、一度は袂を分かったミハエル大佐の気球に便乗して脱出するさまが描かれていました。グエン自身が野望を捨ててはいないため、それほど悲壮感はありませんが、このときの彼の様子は本当に哀れ。それを直接的な描写(服がボロボロになる等の視覚的なもの等)ではなく、リリから冷たくあしらわれたり、前回考えが合わず逃げられたミハエル大佐の気球に捕まってその場から脱出を図ったり等、間接的な描写で哀れさを強調する手法がとられていたのがGoodでしたね。国とかを率いる器ではないなとは思ったけど、ここまで落ちぶれちゃうとはなぁ。逆に、登場当初はグエンにおんぶにだっこのように見えたリリが、ここまで凛々しくかつ自立した強い女性になったのも、とても面白いです。
リリ「ごきげんよう。アメリアは、私がスカートのまま治めますわ!」
∀ガンダムとターンXが激突する中で、戦うことを人間の闘争本能に理由があるとして、自分を正当化しようとするギンガナム。しかし、それはロランにとっては独りよがりな考え方にしか見えませんでした。黒歴史を繰り返させないという強い意思を持って、ロランはターンXを相討ちに持ち込んで撃破に成功。しかし、ロランと同じくギンガナムも機体からの脱出に成功しており、彼はロランと、剣による1対1の決闘を望みますが…。Aパート終盤からBパート前半にかけて描かれるのが、ロランの∀ガンダムとギンガナムのターンXの激戦。両者月光蝶システムを起動し、周囲に大きな影響を及ぼしながら戦い続けますが、最終的にモビルスーツ戦を制したのは、ロランのほうでした。月光蝶の中で戦う2体のさまは、どこか幻想的な印象を受けるものに。月光蝶のエフェクトがCGで表現されており、それが青や黄色を織り交ぜた、美しさと毒々しさのギリギリのラインを行くカラーリングだからでしょうか。そんな両モビルスーツの対決は、機体どうしのぶつかり合いよりも、ロランとギンガナムの考え方のぶつかり合いの描写が主。ギンガナムは人間の闘争本能ばかりを根拠として、自らの横暴を正当化しますが、理性を保っているロランは、それに真っ向から反論してみせます。このあたりの描写は、作画にかなり気合いが入っているため、ギンガナム側にも鬼気迫るものがあり、その理論も一理あるかのように錯覚しそうになりますが、実際に唱えているものはかなり稚拙。彼もまた、グエンのように野望があった一方で、やはり人々を率いる器ではなかったなぁ…という感じでした。そんなモビルスーツ戦は、ロランの∀ガンダムが、一瞬のスキをついて素早い攻撃を繰り出したことで、相討ちとなって終結。ロランはギリギリのところで脱出しますが、ギンガナムもターンXヘッドで脱出しており、ロランと1対1の決闘を申し込んできます。その結末は―。ロランとギンガナムの最後の戦いは、剣撃。しかし、どちらか一方がもう一方を打ち破るというものではなく、戦闘中、月光蝶の影響か、∀ガンダムとターンXを包み込んだ繭状のものがギンガナムをも取り込んでしまい、一方でロランはその場から何とか脱出に成功したことで、結果的にロランの勝利に終わるという結末でした。翅を開いた蝶が繭になるという、完全変態とは真逆の過程を取りながらも、幻想的な終わり方。∀ガンダムとターンXは、きっとこのまま永遠に眠り続けるのでしょう。人類が再び闘争本能にさいなまれ、戦争を巻き起こさない限り―。
ギンガナム「戦うと元気になるなぁ、ローラ?死を意識するから、生きることを実感できる!」
ロラン「その先にあるものが破壊だから、黒歴史は封印されました!」
ギンガナムとの決着から半年後。地球はムーンレィスの人々とともに復興の兆しを見せており、ウィルゲム改めローラ号と名前を変えた宇宙船により、月との定期航路も開通。平和が戻り、かつての仲間たちもそれぞれの人生を歩み始めていました。そんな中で、ロランの選択した、今後の人生の過ごし方とは―。ラスト10分では、ほとんどセリフが入ることなく、各キャラのその後の様子が描写。ロランたち主要キャラはもちろんのこと、アニス等のほぼ単発ゲストのキャラまで登場し、詳細に、それでいて視聴者にかなり想像の余地を与えるような形で、シーンが続いていきます。このシーンは、ここまで『∀』を観てきた者にとっては感慨深いものであり、そして情報量がかなり多いもの。私も1回見ただけではちょっと理解しきれなかったので、3回くらい繰り返して視聴しました。最終的には悪事の片棒を担いだグエンやメリーベルまでもが生き残り、それなりの未来を歩み始めていることには、ちょっと複雑な感じがしましたが(かと言って、天罰が下るがごとくあからさまに不幸になっていても、それはそれで興醒めだけど)、同時に、これもまた、『∀』という物語が伝えたい、ある種の人間賛歌なのではないか…とも思えましたね。本当に『∀』は、登場したキャラたちをしっかり大事にしていた作品だったなぁ。そして、この中でロランは、ソシエとも別れ、最後までディアナに尽くすことを選択。ラストシーンでは、アメリア大陸のログハウスに隠居するディアナの世話をする彼が描かれ、物語は幕を閉じます。「最後までディアナ命だったのかよ」という捉え方もできなくもないですが、このときのロランは、そういったものを超越した、(とても言葉では表現しにくいですが)別の意味でのディアナに対する敬愛を抱いていたのではないでしょうか。女王とその下にいる一般市民ではなく、1人の人間どうしとして―。
ロラン「ディアナ様。また…明日。」
『∀ガンダム』。これは、戦争に巻き込まれてしまった少年少女たちが、数多の困難を乗り越え、本当の人間愛を貫き通した物語である。
…こうして、『∀』の物語は完結となりました。
次回は総括として、改めて『∀』を振り返ってみることにしましょう。
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『∀ガンダム』の本編は、各種サイトで公式配信中!↓コチラもチェックだ!
☆ガンプラ Pick Up!
『∀ガンダム』に登場したモビルスーツのガンプラの一部を、ピックアップしてみよう!
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