今回は、『∀ガンダム』の感想記事第10回目です。
前回より、第3クールにふさわしい大きな展開が出始めた『∀』。今回ご紹介の3話でもその傾向は続き、ウィルゲムによりグエンたちが宇宙へ飛び立つことに、次第に重きが置かれていくようになります。これに関連して、ロランが宇宙に行きたい理由付けも自然なものが用意されていますが、その代わり核爆弾の話はまだまだしばらく引っ張ることに。これ、もしかして宇宙で最終的に使うことになる…なんて展開もあるのかなぁ?
なお、前回(第25~27話)の感想記事は↓コチラです。
bongore-asterisk.hatenablog.jp
第28話「託されたもの」
1999年10月22日放送
登場した敵他:ムットゥー、ゴールドスモー、シルバースモー、ウァッド
「私の名はラルファ・ゼノア。核兵器の存在を知ったら、戦う気がしなくなった軍人だ。」
STORY:核爆弾の爆発は、ロランたちやゼノアに大きく戦慄させた一方で、フィルにはこれこそ戦局打破の切り札になるという野望を抱かせた。ディアナ主導による地球入植が遅々として進まないことから、公然と彼女を批判し、その退位を求めるまでに至る。同じ頃、残る核弾頭を持ったまま敵味方の攻撃を避けようとするゼノアは、偶然ロランたちと出会い、そして彼らに核弾頭の処理を託す。彼は今回のことをキッカケに、ディアナに戦争中止の直訴を計画しており、その思いに共感したソシエとメシェーも、同行を決意した。ゼノアの直訴は上手くいくのか?そして、ソレイユ内部の内紛の結末は―?
前回発生した核爆弾の爆発をキッカケに、登場人物たちの思いや欲望、それらによる行動が交錯する一編。フィルの行動や考え方が急にデカくなった印象を受けますが、ディアナの地位が危なくなるなど、引き続き第3クールにふさわしい大きなドラマ展開が用意されていました。ゼノアは結局、直訴に失敗して今回で死亡。彼の思いはよくわかりますが、もう少しうまく立ち回っていれば、もっと生き延びることもできただろうし、より良い展開を生み出すこともできたことでしょう。でも…そうした余裕をなくすくらい、彼は誰よりも核爆弾の恐怖を身に染みてわかっていたんだろうなぁ。
前回起きた、核爆弾による大爆発。その跡地を見て、ロランからの説明もあり、ソシエとメシェーが戦慄していた一方、ディアナ・カウンターのフィルは、これこそが対地球戦での切り札になると考え、ポゥに残る核弾頭の回収を命じます。その核弾頭を持っていたのは、ゼノア。彼は敵味方どちらにもこの兵器を使わせまいと、何らかの形での処理を模索していましたが、その際ポゥのシルバースモーが現れて小競り合いに。ビームライフルによる攻撃まで受けてしまいますが、部下のアシストもあり、何とか無事窮地を脱出します。序盤では、ロラン・ソシエ・メシェーの3人が、核爆発の爆心地跡を見つめ、その恐怖を反芻し理解するシーンが挿入。できるだけBGMやセリフを押さえることで、静かながら力強く、ロランたちの知った核爆弾の恐ろしさを表現してくれていました。爆発からまだ間もない時期に、生身のまま爆心地に近づくのは非常に危険なはずですが、ロランのセリフで「本当は生身で近づくのも危ないんです」というものがあったことから、ある程度補完されていましたね。防護服を着て近づくのがベストなはずなんだけど、この地球にそんな技術も無いだろうしなぁ…。そんなロランたちと同じく、知識としても肌感覚としても核爆弾の恐ろしさを知っていたのがゼノア。彼は未来のために核爆弾を安全に処理しようとしていましたが、その威力に魅せられたポゥが強奪しようとし、結果的に同じディアナ・カウンターなのにも関わらず争うハメになってしまいます。フィルの指示で、核爆弾を回収しようとするポゥ。核爆弾は危険だの、味方に背くのかだの言ってる割には、自分が一番ゼノアに向けて発砲してるし、言ってることとやってることが矛盾してるんだよな…。
そのままウァッドで逃げ続けるゼノアは、偶然ロランたちと遭遇。戦う意思はないと表明したうえで、ロランが∀ガンダムのパイロットであることを知り、核弾頭を彼に託して山中に埋めるよう懇願します。それを引き受けたロランが、ゼノアの今後について訊くと、彼はディアナに対して戦争をやめるよう直訴するつもりだとのこと。その思いに共感したソシエは、メシェーとともに、ゼノアに同行しソレイユに向かうことを希望します。ロランと偶然再会したゼノアは、彼がムーンレィスにも一定の理解があり、また核爆弾の恐怖を知っていることから、核爆弾の処理を依頼。サブタイトル通りの展開となり、ここからロランと核爆弾の話もスタートします。処分を託されたロランは、すぐにできることではないため、とりあえず∀ガンダムの胸部に格納し、土を詰めてガッチリ固定して収納。しばらくはなんと核爆弾を抱えた状態で行動・戦闘を行うことになります。とんでもなく危険な行動のはずですが、信管が作動しないかどうか確認するために、∀ガンダムがチェックのため小刻みに動くさまは、どこか微笑ましいもの。こうした雰囲気を作り出せちゃうのが、『∀』の強い魅力だよなぁ。そして、こうしたことを経て、ゼノアが戦争中止の直訴をしようとしていることを知ったソシエは、彼に同行し協力することを提案。ロランの反対を押し切り行動を開始します。あれだけムーンレィスに対して敵愾心を持っているソシエが、こうした行動を進んでしようとするのは意外。それだけ、核爆弾の恐怖は彼女に一定の心情変化をもたらしたということなのでしょうか。
地球入植がなかなか進まず、また核爆弾という強大な兵器を目の前にしても、その姿勢を崩さないディアナに業を煮やしたフィルは、公然とその目の前でディアナを批判します。そんな中、ゼノアがソシエたちを連れてソレイユへ帰還。ディアナへの直訴をその目的と何度も訴えるゼノアでしたが、防衛ラインを強行突破しようとしたことから、戦闘が勃発してしまいます。この混乱の中で、フィルはディアナを拘束しようとして…。Bパートより、今までディアナ・カウンターのいち軍人に過ぎなかったフィルが、大きくストーリーに介入。いきなりディアナを倒すという野心を見せて、公然と彼女を批判するようになったほか、ドサクサに紛れて親衛隊のシルバースモーを自分たちのものにしてしまいます。「ガンダムシリーズ」においてこうした展開は珍しくない、むしろよくあることですが、冷静に考えると、ちょっと急過ぎるよなぁ。今までディアナに反感を持っているさまの描写はあったけどさ…。そして、このようにソレイユ内部がゴタついている中で、敵であるソシエたちを連れて直訴に戻ってきたのがゼノア。彼もキチンと事情を説明し、またディアナ・カウンター側もそれを聞く姿勢さえあれば、争いは起きなかったはずですが、お互いそんな余裕がなく過程をすっ飛ばしたことから、不要な内紛が起きてしまいます。
ロランが∀ガンダムで核爆弾の処理を行おうとしていた頃、ゼノアは攻撃してくる自軍にやむを得ず応戦。しかし、いくら言っても聞く耳を持たない相手の猛攻の前に、ついにウァッドが大破してしまい、志半ばでその命を落としてしまいます。一方、ディアナの裏に隠れていたキエルは、ハリーの手助けもあってソレイユから脱出。ディアナ本人はフィルに拘束されてしまいますが、自身がディアナの代わりを演じて、ザックトレーガー経由で月に向かい、その内情を確認することを進言します。前回からストーリーに関わってきたゼノアですが、ここであえなく死亡退場。自身の思いや要求が聞き入れられるどころか、まともに自軍の兵士たちに伝えることもできずに、蜂の巣にされたウァッドごと爆発してしまいます。彼の死は、ここまでの関わりっぷりから考えると、あまりにもはかなくそして悲しいもの。ゼノアの思いは確かなものだったけど、彼もある意味やり方を誤ったと言えるでしょう。もう少し上手く立ち回っていれば、少なくともここでこんな最期を遂げることはなかったろうにね…。そして、こうした混乱の最中、ディアナはフィルたちに拘束されてしまうことに。しかし、ここで彼女はキエルを脱出させ、その姿をフィルたちに目撃させます。この一瞬の行動が、今後のお話にガッツリ絡んでくることに。キエルとディアナが瓜二つであるがゆえのドラマは、まだまだ続きそうです。
第29話「ソレイユのふたり」
1999年10月28日放送
登場した敵他:ムットゥー、シルバースモー
「胸にはアツい情熱の“核”を秘めて…、か。」
STORY:フィルたちに捕らえられたディアナだったが、自らをキエルだと何度も名乗ることで、相手を撹乱し、しばらくの時間稼ぎをすることに成功した。ハリーとともに脱出したキエルが、ディアナである可能性を捨てきれなくなったフィルは、ポゥに銘じて彼女らを追跡。宇宙への窓口と言える地:マニューピチを目指すグエンらのウィルゲムと接触したところで追いつき、ハリーのゴールドスモーと戦闘になる。そして、ポゥはスキを突いてキエルに近づき、シルバースモーのビームライフルの銃口をキエルに向ける。そのとき、彼女の胸に去来する激しい葛藤。ポゥはこのまま、その引き金を引いてしまうのか!?
ウィルゲムが本格的に稼働を開始すると同時に、ディアナとキエル双方のフィルたちへの撹乱作戦が楽しめるお話。ロランの出番は少なめでサブのような立ち回りであり、ほぼ全編にわたってディアナorキエルが登場し、彼女らがお話を回していました。キエルもしばらくディアナのふりをしていたこともあって、すっかりその演技が板につき、グエンすらも惑わせているのが面白いところ。そしてその結果、ロランがキエルに扮したディアナに代わって、今度はディアナに扮したキエルと行動を共にすることになる展開も、興味深いです。
前回、フィルの手で捕らえられてしまったディアナ。こんなところで捕まっている場合ではない彼女は、フィルたちを撹乱するため、かたくなに自分はキエルであると名乗り続け、さすがのフィルも、ハリーと脱出したキエルがディアナの可能性があることを捨てきれなくなり、ポゥに追跡と捕縛を指示します。同じ頃、ゼノアから託された核弾頭を抱えたまま、∀ガンダムで森の中に身を隠していたロランは、偶然追ってきたフランと再会するのでした。フィルに捕らえられて身動き出来ないものの、ここで時間を食っているワケにもいかず、かと言って処刑等されるのはもってのほかという状況。ここで彼女は、前回のラストでフィルたちがキエルの脱出を目撃していることを利用し、かたくなに自分はキエルであると言い張り、フィルたちを撹乱します。ディアナがとった作戦は、非常にシンプルなもの。ですが、ウソもつき続ければ本当のことのように感じられるということで、いくばくかの時間稼ぎに成功するのが面白いところです。視聴者にとってはすぐにどちらがどちらか見分けがつくこともあるため、よけいに滑稽に見えるんですよね。このように、ディアナが必死の行動をしていた頃、核爆弾の処理について考え続けていたのがロラン。彼はフランと再会し、ウィルゲムが宇宙を目指しているという話から、核爆弾をその宇宙に捨てることを思いつき、再びグエンたちに合流し宇宙行きを目指す選択をします。ここで、ロランがストーリー上宇宙に行かなければならない理由が出来るのですが、その流れが非常に自然に作られているのがGood。でも、ということは、∀ガンダムはまだしばらく核爆弾抱えたままで活動するってことか…。
ウィルゲムを安定して航行させることに成功したグエンたちは、ムーンレィスの技術者たちの進言に基づき、マニューピチを目的地として、順調に航行。その様を目撃したキエルとハリーは、彼らと接触し、キエルはディアナであると名乗って、グエンたちのマニューピチ行きを止めようとします。ハリーだけを連れて現れたディアナに、さすがのグエンも怪しみますが、ハリーがキエルをディアナとして扱っていることを見て、ひとまず彼女をディアナであるとして、交渉に臨みます。以前から登場し、断続的に飛行試験をしていたウィルゲムですが、今回になるとすっかり安定航行が可能となり、キッカケさえあれば宇宙にすぐ行けるまでに整備が完了。ラダラムたちが冗談を言いながら艦橋にいることからも、グエンたちに一定の余裕が出てきたのだなということが窺えます。ムーンレィスの技術者のおかげで、ここまで一気に飛躍してしまうとはなぁ。そんなウィルゲムが、ルジャーナ・ミリシャの海軍と合流するために、港町に降りた際、それに追いつき接触してきたのがキエルとハリー。キエルはディアナを演じて、グエンたちのマニューピチ行きを止めようとします。ムーンレィスの女王が、親衛隊長1人だけ連れて現れるだなんて普通あり得ないことであり、さすがのグエンも怪しみますが、じょじょにキエルの演技に騙されていき、混乱していくのが面白いところ。そりゃ、キエルは10話以上に渡ってディアナのふりをしてディアナ・カウンター内にいたのですから、ディアナの演技は折り紙つきですよね。
マニューピチへ行くことにつき、キエルとグエンたち双方の意見が平行線のままの中、シルバースモーとムットゥーで追跡してきたポゥが追いつき、先制攻撃。これに応戦するため、ハリーはグエンたちにキエルを託します。1対3ながら優勢で戦いを進めるハリーでしたが、ポゥがシルバースモーのスカートを利用してゴールドスモーをひるませ、そのスキにキエルに接近し、銃口を突きつけることに成功。このまま発砲すれば、彼女ひいてはフィルにとって、自分たちの王国を建国するための大きな一歩となるはずでしたが―。Bパートより、ポゥまでもが追いつき、ハリーにディアナ(キエル)を渡せと迫るも、ハリーが当然にこれを拒否したことから戦闘勃発。前回チラッと登場したモビルアーマータイプのスーツ:ムットゥーを引き連れて、1対3の戦闘を展開します。ムットゥーは、オレンジ色をした『Ζ』のバウンド・ドックのような機体。戦闘向けの可変機構があるモビルスーツは『∀』ではこれが初ですが、今回は思ったほどその特徴を活かせてはいませんでした。そもそも、数的には圧倒的に不利なのに、ハリーのゴールドスモーが普通に立ち回ってるから、イマイチムットゥーの強さがわからないんですよね。ここらへんは、さすがハリーと感じましたね。とはいえ、やはり3体全てを相手にするには限界があり、ハリーはスキを突かれて、ポゥのキエルへの接近を許してしまうことに。ビームライフルを発射すれば、確実にキエルを殺せるというところまでいきますが、ここでポゥは激しく動揺します。キエルと1対1で対峙した際、地球降下作戦の開始時にディアナを心から尊敬していた自分を思い出し、フィルの野望に振り回されている今の自分と比較してしまったポゥ。このシーンは、確かに彼女のツメの甘さをまず感じさせられますが、同時に、彼女の深い人間味を感じることも出来ました。立ち位置が悪いから、常に割りを食うような悪役ポジションになっちゃってるけど、もしロランたち側のキャラになってれば、意外に良い味出すキャラになってたように思えるなぁ。まあ、相変わらず泣き虫で時々凡ミスしそうではあるけど…。
キエルのピンチに駆けつけたのが、偶然追いついたロランの∀ガンダム。ポゥノシルバースモーだけでなく、初見の機体であるムットゥーに対しても、全く苦戦することなく立ち回り、さらにその間にウィルゲムも反撃を開始し、ムットゥー1体をメガ粒子砲で木っ端微塵に吹き飛ばします。一気に劣勢に追い込まれ、∀ガンダムとゴールドスモーに追い詰められたポゥは、やむを得ず撤退。その後、ウィルゲムと合流したロランは、ディアナに扮したキエルの演技にすっかり騙されて、行動を共にすることになるのでした。ハリーのピンチに、半ば偶然駆けつけたのが∀ガンダム。自身は核爆弾を2つも積んでおり、またムットゥーは初見の機体でしたが、特に苦戦したり動じたりすることなく、キッチリ応戦し戦局をひっくり返してくれていました。核爆弾がお話上のカセになり、∀ガンダムが思うように動けない…なんて展開があるのかなと思いきや、そうしたことは全くなし。ある意味、思い切りのいい作風ですね。そんな中でも、∀ガンダムが敵を倒してめでたしめでたしという展開になってはおらず、ウィルゲムがが安易にメガ粒子砲を使い、核爆発に似たような大規模爆発を起こしてムットゥー1機を撃破するシーンが、個人的にはピリリと戦闘シーンを引き締めていたなという印象。どのキャラもセリフ上全く触れてはいませんでしたが、その描写の仕方から考えるに、制作側の「無知な人々が超兵器を使うことの恐ろしさ」を伝えようとしていたのではないかと感じました。
第30話「胸に抱えて」
1999年10月29日放送
登場した敵他:ウァッド、フラット
「ギャバン。ウェディングドレスを着た私、綺麗でしょ…!」
STORY:ディアナに扮したキエルから、マニューピチ行きの取りやめを進言されていたグエンだったが、彼女がキエルだと見抜いたこともあり、グエンは取りやめには応じず、ついにルジャーナ海軍の協力を得て針路をとった。傷心のソシエを元気づけたロランもそれに合流し、順調に海を航行するが、ミリシャが核爆弾を保有しソレイユ攻撃に利用しようとしていると思い込んだ、レット隊のキャンサーとムロンの攻撃を受けてしまう。グエンたちはこの攻撃を排除することができるのか?時同じくして、ディアナは、何者かの手引きによりミドガルドと接触していて…。
第27話以来のレット隊の登場回。その登場とその攻撃は、完全な彼女らの思い込みによるものであり、直接的にはストーリーにかかわってきませんが、レット隊の(一方的ながら)ある種のロランとの決別、そしてこうした事件の裏でうごめくギンガナム隊という月の別の勢力の動き等も描かれ、単純な単発回にとどまらないお話となっていました。レット隊は自分たちなりの思いがあるのはわかるけど、やっぱり毎回登場するたびに厄介ごとしか起こしてないよな…。
前回、ソレイユ内の一般兵の手引きで、船外に脱出したディアナ。彼女はミランと合流し小型機に乗り込んだのち、とある草原に降ろされます。そこにやってきたのはギンガナム隊のミドガルドであり、目の前の彼女をディアナだと信じて疑わない彼もまた、ザックトレーガー経由で月へと戻ろうとしていました。同じ頃ロランは、メシェーやジョゼフからの進言もあって、ソシエを慰めていて…。前回のラストで、突然一般兵たちの手引で独房から脱出したディアナ。このときは「ディアナ・カウンターはやはり一枚岩ではないのだな」程度にしか感じていませんでしたが、今回の小型機への搭乗→ミドガルドの出迎え等、ギンガナム隊を中心にディアナを何かしら利用してやろうという別勢力がいることが窺えました。アグリッパの名前も以前から出ているし、ディアナが月から離れている間、けっこう好き放題にやってディアナにとって代わろうとしている説は十分考えられるなぁ。そんなギンガナム隊の1人であるミドガルドは、第23話以来久しぶりの登場。「自分はディアナとキエルの見分けくらいつく」という感じで話してきますが、その彼が見たキエルが、実はディアナが扮したものであるのが、とても笑えます。ディアナもそれをわかっているはずですが、あえてツッコんでいないのがまた面白いところ。制作側が、暗にミドガルドはこういうヤツなのだということ示しているように感じました。これと同じ頃、傷心のソシエを慰めていたのがロラン。ロランがムーンレィスの出身だとわかって以降、どこか壁がありながらの付き合いだった2人でしたが、ソシエの心を誰よりも早く復活させているところを見ると、やはり2人の結びつきは強いものなのだなと、実感しました。
ディアナと名乗る目の前の女性がキエルだと見抜いたグエンは、2人きりになった際、自身が宇宙を目指す理由を問われ、それを語ります。その後、各艦で出港準備が進められ、ようやくルジャーナ海軍の協力のもと、ウィルゲムやギャロップも出航。マニューピチへと針路をとります。一方、核爆弾の爆発から逃れて森の中に身を隠していたレット隊のキャンサーは、この日も悪夢にうなされていて…。ルジャーナ・ミリシャの海軍の協力を得て、マニューピチへの出航準備が大詰めを迎えるグエンたち。ここでちょっとビックリしたのは「ルジャーナには海がないけど、少なくとも300年以上前から海軍を持っていた」という情報でした。内陸国なのに未だに海軍を保有している、ボリビアみたいなものってことなのかなぁ?このように、グエンたちが目的に向けて前進している一方で、よくわからない方向へ進みそうになっていたのがレット隊。キャンサーが核爆発の悪夢にうなされていたこと、ムロンのもたらした中途半端な情報が組み合さった結果、ろくに証拠もないのに「ミリシャの持つ核爆弾を奪還してディアナに献上する」という作戦を開始します。これだから、地球側からもディアナ・カウンター側からも厄介者扱いされているっていうのは、いつになったら自覚するんだろうか…。
順調に海上を航行していたウィルゲムの前に、突然ウァッドとフラットが1機ずつ出現。それに乗っていたのはキャンサーとムロンであり、核爆弾の引き渡しを要求します。最初は彼らの要求に素直に従い、格納庫を見せて無実を証明しようとしていたグエンでしたが、キャンサーたちがウィルゲムの武装解除をさせようとしたこと、また彼女らがキエルをディアナだと思い込んで攻撃を躊躇していることに気づき、攻勢に転じます。そんな中に、遅れて追いついてきたロランの∀ガンダムと、ソシエのカプルが合流してきます。ウィルゲムの順調な航行に水を差してきたレット隊。核爆弾の引き渡しを要求しますが、実際に持っていないグエンたちが何か出来るはずもなく、そのうえ偶然窓際にいたキエルの姿を見られたことから、「ミリシャがディアナを誘拐した」と誤認されてしまいます。Bパートに入ってから、レット隊の行動はますます斜め上の方向へと向かい、予想が外れたことから本来の目的も見失い始めてしまうことに。しかし、そんな展開でも不思議とストレスを感じないのは、なぜレット隊がそうなってしまったのかという過程を、的確かつ端的に、そして自然に描写しているからと言えるでしょう。格納庫開かせたらとりあえず武装解除させようとするし、キエルを見かけたらディアナだと思い込んで「ウィルゲムは落とせない!」と言って一時的に行動を止めてしまうし、本当、グエンたちからしてみると「何しに来たんだアイツら」って感じだよなぁ。
ロランがムーンレィスの出身であることを知っているムロンは、自分たちに協力するよう勧誘してきますが、ロランはそれに応えずじまい。これを裏切りと一方的にとらえたムロンは、あろうことかロランたちまで攻撃してきますが、ここは∀ガンダムの機転とカプルの敏捷性を生かして返り討ちにすることに成功。またキエルもディアナを演じて、レット隊に理解を示すふりをし、彼女たちを撤退させることに成功します。こうして戦闘を乗り越えたウィルゲムは、再びマニューピチへ向けて航行を再開するのでした。苦しくなった状況をなんとか打開するためか、唐突にロランに「同じムーンレィスのよしみ」ということで救援を求めるムロン。しかし、ロランが当然それに応じるはずもなく、逆恨みして一方的に襲いかかってきます。ムロンのこの行動は、明らかにまともではない展開。錯乱するにしても、これまた方向が斜め上過ぎなんだよなぁ…。そんなムロンは、フラットで大高波を起こして∀ガンダムとカプルを飲み込みますが、∀ガンダムがその程度で負けるはずがなく、またカプルが水中で予想以上の高機動性を発揮したため返り討ちに遭い、最後はキエルがディアナに扮して撤退するよう命令し、レット隊は撤退して戦闘は終結します。∀ガンダムによるロランの巧みな作戦は、今回も良い作用を生み出したと同時に、注目すべきは水中でのカプルの高機動性。劇中では「本来水中戦向けとして開発されたんじゃないか」と言われていましたが、実際には、デザインが似ている『ΖΖ』に登場したカプールが水中戦向けモビルスーツだったことによるものなんだろうなぁ。
今回はここまで。次回は、第31話から第33話をご紹介予定です。『∀ガンダム』。南の海で、風が跳ねる―。
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☆ガンプラ Pick Up!
『∀ガンダム』に登場したモビルスーツのガンプラの一部を、ピックアップしてみよう!
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