お前それ、ゾフィーにも同じこと言えんの?ver.2.0

主にウルトラマン・仮面ライダー・スーパー戦隊シリーズなどの特撮関係の話題等を扱っていこうと思います。

令和の今こそ、『TAROMAN(タローマン)』を振り返る。

今回は、7月18日よりNHK EテレNHK教育)で深夜集中放送されていた、『岡本太郎式特撮活劇 TAROMAN(タローマン)』のレビューです。

 

1970年代に、岡本太郎の美術やその思想を受けて制作された特撮作品が、令和の世に復活・再放送!…ではなく、そうした体で制作された、レトロ調の特撮作品。大阪を皮切りに、全国で展開予定の岡本太郎展に合わせて制作された作品ですが、あらゆる面で「べらぼう」で「なんだこれは!」と感じる作風になっており、強烈なパッションを感じる作品になっていました。

 

現代のカメラをはじめとする映像技術は、あまりにも高画質・高精細になりすぎているため、たいてい昭和レトロを再現しようにも、画質が良すぎて違和感バリバリとなる作品がほとんど。しかしこの『TAROMAN』は、そうした問題を難なくクリアしており、絶妙な編集技術で“それっぽさ”を表現できていました。なんだ、本気でやれば、現代でもこうした映像が作れるんですね。

 

 

 

徹底的に「1970年代に制作された作品を、現代で深夜帯に集中再放送しています」という体がとられ、本編だけでなく解説パートでは、存在しない歴史や小道具どころか、当時の出演者が時を経て再出演するという(もちろん、実際はそういう“設定”)ことまでやってのけるなど、もはやその作り込みには、あっぱれどころか狂気しか感じられない『TAROMAN』。そうしたネタ的なところに、どうしても先に注目が行きがちな本作ですが、本編ではかなり岡本太郎の持つ思想というか、エッセンスをしっかり作品内に落とし込んでいるように感じました。

 

岡本太郎の発言は、その言葉だけ聞くととんでもない言葉に聞こえますが、それを美術ひいては創作活動や人生に当てはめて考えると、なかなか深い意味を持っているなと感じられるもの。この『TAROMAN』は、そうした岡本太郎の言葉そして思想を、彼の作品を怪獣化して登場させ、ナレーションを多用して解説を挿入しまくることで、明快かつ力強いメッセージとして、視聴者に訴えかけてくれているのです。

 

でたらめをやってごらん」・「自分の歌を歌えばいいんだよ」・「一度死んだ人間になれ」・「同じことをくりかえすくらいなら、死んでしまえ」・「真剣に、命がけで遊べ」・「美ってものは、見方次第なんだよ」・「好かれるヤツほどダメになる」・「孤独こそ人間が強烈に生きるバネだ」・「なま身の自分に賭ける」・芸術は爆発だ」―。改めて『TAROMAN』を振り返ってみると、全てのお話が、タイトルとなっている岡本太郎の言葉の本質を、タローマンを始めとする登場キャラクターたちの行動やドラマで、キチンと表現していたのがよくわかると思います。でたらめをやっているように見えて、この作品はとてつもなく緻密なことをやっていたんですよね。

 

個人的に好きだった表現は、奇獣 未来を見たが登場する「一度死んだ人間になれ」の戦闘シーン。タローマンも他のキャラクターと同じく、未来を見透かされてしまいますが、その行動があまりにもでたらめすぎて、未来を見たの理解を超越していたため、それが勝機につながるというのが、たまらなく「気持ちよかった」ですね。未来を見たからすればでたらめなことでも、タローマンは本気でやっている。わかりきった未来から、脱却しようとしている。言葉では表現しにくいですが、人間の固定観念から抜け出そうともがいているその姿に、強いパッションを感じました。

 

また、こうした一連の話をして、ラストに来るのが「芸術は爆発だ」。最終的にタローマンが守ってきていたはずの地球が、奇獣 太陽の塔もろとも爆発し消滅するというブラックジョークというかバッドエンド的な終わりを迎えますが、私はこれを全くバッドエンドだとは思いません。あれは、人間の中に眠るあらゆるモノ―それは思想や欲望、感情等―が、タローマンの手により爆発させられた結果に起きたことであり、岡本太郎からすれば、人間のあるべき終わりの姿だったのではないでしょうか。まあでも、結局あの世界の人間は、タローマンに最後まで文句ばかり言って散っていったことに変わりないけどね…。

 

さらに、この『TAROMAN』を観たことで、改めて感じるのが、岡本太郎の偉大さ。彼の残した作品や思想は、それらを通じて人間誰しもが忘れてはいけない大切なことを、発信し続けていたんだなぁ。関西人の私としては、太陽の塔の作者で、アレの内部もかなり作り込んでたというイメージしかなかったけど、本当に見方が変わりましたよ。

 

 

 

 

 

 

でたらめに見えて緻密、そしてそのでたらめを本気でやっていた、狂気の特撮作品『岡本太郎式特撮活劇 TAROMAN(タローマン)』。岡本太郎展に合わせて制作した作品としては、あまりにも突飛なものでしたが、この作品に出会えたことを、私は本当に幸運に思いました。いやあ、その特撮描写もさることながら、岡本太郎という人間や、生前氏の持っていた思想の魅力に触れられた感じがしましたよ。

 

そして、肝心要の岡本太郎展は、現在大阪・中之島にある大阪中之島美術館で開催中。10月中旬からは東京で、そして来年1月からは愛知県で、それぞれ開催が決まっています。東京に来たら、ぜひ川崎にある岡本太郎美術館や、港区の岡本太郎記念館とともに行ってみたいですね。いや、今のうちにもう行くべきか?でもきっと、今は混んでるだろうなぁ…。

 

観る者に、様々な強烈なメッセージを与えてくれた『TAROMAN』。色んな感情や思いが渦巻きますが、それらを全て一言でまとめて表すなら、本作の冒頭でいつも述べられている「なんだこれは!」に収束するのが、非常に面白いです。我々も、べらぼうな夢を持って、日々全力で命の火を燃やして、人生を生き抜かねばなりませんね。

 

タローマンの自由すぎるふるまいを見て、彼ら(バンドマンたち)は思った。他人が笑おうが笑わまいが、自分の歌を歌えばいいんだと。人の判断ばかりを気にしていてはダメだ。そう、岡本太郎も言っていた。―第2話ナレーションより

 

↓なんだこれは!?

bongore-asterisk.hatenablog.jp

 

 

 

 

 

 

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