今回は、『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』の感想記事第2回目です。
ひょんなことから縁ができて、本当の兄弟のように接するようになったアルとバーニィ。しかし、戦争が生んだその絆は、戦争自身がその継続を許しませんでした。今回はいよいよ、サイクロプス隊(バーニィ)とガンダムNT-1アレックスの決戦が描かれるパート。最後の最後までためられたその戦いは、いろいろと胸に来るものがありましたね。
なお、前回(第1~3話)の感想記事は↓コチラです。
bongore-asterisk.hatenablog.jp
第4話「河を渡って木立を抜けて」
1989年6月23日発売
登場した敵他:ケンプファー、ガンダムNT-1 アレックス、ジム・スナイパーⅡ、量産型ガンキャノン、ムサイ
「あれ(モビルスーツ)は、必要悪とでも言うべき機械で、人を幸せにするものではない。」
STORY:僕は、連邦軍の秘密基地で、見たこともないモビルスーツを見た。そのことをバーニィと一緒に報告したけど、シュタイナーさんたちはどこか不満そう。バーニィもだんだん様子がおかしくなって、僕がクリスのツテであの一帯を見学させてもらうことになっても、絶対行くなって言うんだ。それを無視してそこへ行ったら、ケンプファーの攻撃が始まった!戦闘が激しくなる中、あのモビルスーツが動き出す。そうか、あれがチェイたちの言ってた“ガンダム”か…!
ガンダム、ついに起動!そして崩れ行くサイクロプス隊―!物語も後半戦に突入し、今回は大きな動きが連続するお話。バーニィらサイクロプス隊がガンダムNT-1を奪取するために行動を起こしたり、バーニィとクリスの仲やサイクロプス隊内の絆が深まったりと、メインの登場人物1人1人の心の動きも丁寧に描写されている回でした。せっかくサイクロプス隊がいい感じになってきたのに、バーニィを残して今回でほぼ全滅。しかも、それがバーニィの言動に起因するものなんだから、やり切れねぇよなぁ…。
前回、連邦軍の秘密基地に潜入した、アルとバーニィ。アルはそこでガンダムNT-1を目撃し、カメラに収めます。アルの情報をもとにそれを基地に持ち帰るバーニィでしたが、シュタイナーたちもスパイであるチャーリーなどを通じて情報収集を行っており、なんで危険なことをしたんだと逆に大目玉を食らってしまいます。その後、アルを彼の家に連れ帰ろうとしたバーニィは、クリスのもとに立ち寄るのでした。アルのムチャな行動により得た、ガンダムNT-1の画像。これだけ見れば大戦果ですが、それまでの行動があまりにも無謀だったため、バーニィはガルシアから鉄拳制裁を食らうハメになります。そりゃそうだわなぁ、もし潜入がバレて自分たちの素性が知れたら、ルビコン計画はおじゃんになっちゃうからなぁ…。怒られてしまったバーニィは、その後アルを彼の家まで送り届けることに。ところが家についてもなかなかアルは起きず、彼の家の中にも誰もいない様子。そこでバーニィは、クリスの家に立ち寄るのことにするのでした。このあたりのシーンでは、バーニィを中心とした微笑ましいシーンが連続。アルが描いているサイクロプス隊の姿を見てバーニィが微笑んだり、バーニィとクリスがお互いのことをニックネームで呼び合ったりするようになります。じょじょに深まっていく、登場人物たちの関係。ああ、一年戦争という大きな溝がなければ、幸せな結末が待っていたのかもしれないのになぁ―。
翌朝。アルはチェイたちクラスメイトから、ジオン公国軍は悪であることと、連邦軍のモビルスーツ:ガンダムの存在について知ることになりますが、彼のジオン公国軍(というよりもバーニィたちサイクロプス隊)推しは変わらず。放課後バーニィと話し、アルはガンダムの強さをさらに知ります。そしてその夜、サイクロプス隊はルビコン計画の最終打ち合わせに入り、各々の持ち場を確認。しかしその中で、指揮官であるシュタイナーは、自分たちの役割に疑問を持っていました。アルが登校してみると、チェイたちの考え方はジオン公国軍=悪であるという思想一色。その理由は、初めてジオン公国軍が攻めてきてから(第1話)以降、コロニー内のニュースはジオン公国軍のマイナスイメージをアピールするものばかりだったからでした。中立コロニーであるここリボーを最初に攻撃したのはジオン公国軍なので、悪であるのは間違いないのですし、リボーの人々が今まで一年戦争とは無縁の生活を送ってきたということもあるとはいえ、たった数日でここまで考え方がみんなガラリと変わっちゃうのは、ちょっとゾッとする描写ですね。いや、ジオン公国軍の肩を持つわけじゃないけどさ…。そしてこの夜、サイクロプス隊はルビコン計画の最終打ち合わせに突入。各々の持ち場を確認して翌日に備える彼らでしたが、シュタイナーは密かに、ジオン公国軍は一年戦争に敗北すると確信していました。この打ち合わせのシーンでは、バーニィ以外のサイクロプス隊の心の動きが丁寧に描写されているのが印象的。チャーリーからの情報もあり、自分たちは捨て駒でありジオン公国軍は敗北すると確信しているシュタイナー。なんだかんだで、一番若くて経験の浅いバーニィの身を案じるガルシア。ケンプファーで出撃することになり、自分は囮であることを知って出撃準備にいそしむミーシャ…。皆サイクロプス隊を愛し、戦いの先に待つものが悲しいものかもしれないと知りつつも、黙々と己の任務を全うしようとする姿が、何とも言えません。
アルはサイクロプス隊のために、クリスのツテを使って連邦軍の秘密基地一帯の見学の約束を取り付けることに成功。しかしその日は、ルビコン計画の実施日でした。バーニィは必死にアルを止めますが、アルはそれを無視して現地へ。そして彼がルムンバ博士と見学をしている時、ルビコン計画が始動します。バーニィたちは連邦軍兵士に変装してガンダムNT-1のもとへ。ミーシャはケンプファーでわざと街へ繰り出し、破壊の限りを尽くします。応戦するスカーレット隊も退け、作戦は順調かに見えましたが…。ルビコン計画の大まかな内容はシンプルで、ミーシャのケンプファーが暴れて連邦軍を引き付けている間、バーニィら残りのメンバーが基地内に潜入し、ガンダムNT-1を奪取しようというもの。この作戦は途中までは順調にいき、ケンプファーは連邦軍の攻撃を退け、バーニィたちも無事ガンダムNT-1のもとへとたどり着きます。Bパート前半で目立つのが、やはりミーシャの乗るケンプファーの活躍。市街地を蹂躙しながら、連邦軍の一部隊であるスカーレット隊を次々に迎え撃ち殲滅。たった1機で、リボー内の連邦軍を全滅させるのではないかという勢いで攻撃を仕掛けていきます。スカーレット隊、ジム・スナイパーⅡとか量産型ガンキャノンとかを大量に用意してたのに、あっという間に全滅しちゃったなぁ。もうちょっと粘ってもよかったかも…。ちなみに、この戦闘シーンで面白いのが、視聴者はサイクロプス隊の事情を知っているので彼らに感情移入ができるのに対し、その戦いの構図自体は完全にサイクロプス隊が悪に見える形で描かれていること。このギャップが非常に興味深いですね。
ガンダムNT-1の目の前まで来たバーニィたちでしたが、あと一歩のところで自分たちの正体がバレ、格納庫内で戦闘が勃発。その中でシュタイナーは負傷、ガルシアは重症の末爆弾で自爆します。バーニィは何とか生き残り、また偶然格納庫付近にいたアルも、爆風に巻き込まれたものの生還。バーニィはガンダムNT-1の奪取をあきらめ、ここからの脱出を優先します。一方ミーシャのケンプファーは、連邦軍の秘密基地に降り立ち、ガルシアが爆破してあけた穴からガンダムNT-1を破壊しようとしますが、その時クリスが駆けつけてガンダムNT-1を起動。最初こそほとんど動けない状況でしたが、ケンプファーの攻撃でアーマーが破壊されてからは身軽になり、両腕のガトリング砲であっという間にケンプファーを倒してしまうのでした。順調だったルビコン計画の、突然の失敗。その原因は、バーニィが自分の出身をシドニーだと偽った際、現地は冬だと口走ったからでした。シドニーは南半球なので、12月である現在なら夏のはずなんですよね。余計なこと口走らなかったら、作戦は失敗しなかったかもしれないのに…。このような形で急転直下、戦闘状態に突入したバーニィたちでしたが、シュタイナーは負傷しガルシアは自爆。やむを得ず、バーニィはガンダムNT-1をあきらめて脱出を選択します。同じ頃、ケンプファーも連邦軍の秘密基地に到着。ガンダムNT-1を破壊しようとしますが、連邦軍からの連絡で駆け付けたクリスがそれを起動。逆にケンプファーを返り討ちにしてしまうのでした。ガンダムNT-1は、ニュータイプ専用機でありガンダムの上位互換機として開発されているからか、その武装は超強力。スカーレット隊を全滅させたケンプファーを、両腕のガトリング砲のみで倒してしまっています。これが実戦配備されてアムロが使うことになってたら、それこそいろんな意味でとんでもないことになってたろうなぁ…。こうして戦闘は終わり、ルビコン計画は失敗。エンディングで、お互いボロボロの状態で出会うアルとバーニィの姿が、哀愁を誘います。
第5話「嘘だといってよ、バーニィ」
1989年7月22日発売
登場した敵他:ガンダムNT-1 アレックス、ケンプファー、ザクⅡ改、核弾頭ミサイル、戦艦グワジン、ムサイ
「2人でやれば、きっと上手くいくよね?」「ああ、上手くいくさ。」「大好きだよ、バーニィ!」
STORY:昨夜の戦い以降、ジオン軍に対するみんなの風当たりは強くなった。肝心のバーニィも、すっかりガンダムにビビっちゃってる。クリスマスまでにガンダムが倒せなかったら、リボーが核爆弾で破壊される?なんだよ、だったら僕たちでガンダムを倒せばいいじゃないか!バーニィはリボーから逃げようとする一方で、僕は正直迷ってた。誰に言っても、何も信じてくれない。そんな時、1本の電話がかかってきた。電話の相手は…バーニィだ!
モビルスーツ同士の戦いは一切なく、アルとバーニィそれぞれの考えや心の変化にスポットが置かれた異色編。こうして登場人物の心情描写に重きを置けるのも、OVA作品ならではの構成といえますね。自分たちをコテンパンにしたガンダムと、核爆弾の脅威を前に、恐怖し逃げ出そうとするバーニィと、それでも何とか戦おうとするアル。しかし、両者の心の中には迷いがある―。複雑な心理描写をよく表現しており、その迷いからの復活描写もGoodでした。
前回、失敗に終わったルビコン計画。それを知ったキリング中佐は、核弾頭ミサイルをリボーに向けて発射し、コロニーごとガンダムNT-1を葬り去ろうと企てます。作戦実行日時として設定されたのは、12月25日のクリスマスの0時ちょうどでした。同じ頃、クリスは昨夜の戦いの件で警察の事情聴取中。一方、仲間を失ったバーニィは、かつて大破しそのまま放置されていたザクⅡ改のもとに身を寄せていました。キリング中佐はなんとしてもガンダムNT-1を亡きものにしようと考えているらしく、核弾頭ミサイルしようという強硬策を提案。反対派の上層部を暗殺し、作戦を強行します。このときのジオン公国軍は、一年戦争へ敗戦が濃厚で苦しい状況でしたが、かといってガンダムNT-1にそこまで固執しても大きく戦況は変わらないと思うんだけどなぁ。それだけ追い詰められていたのか、それともキリング中佐が単に功を焦ったからなのか…?そうした作戦が水面下で進んでいた頃、リボーではクリスが昨夜の戦いの件で事情聴取中。「中立コロニーでガンダムの実験をしていました」と口が裂けても言えない彼女は、なんとか最低限のやり取りで、事情聴取を乗り切るのでした。昨夜の戦いでは、100名超の死者と500名超の負傷者が出たとのこと。クリスの言う通り「戦っていなければもっと多くの死傷者が出た」のは間違いないですが、この後挿入される街の惨状のシーンで、リボーの人々が前回の戦いでどれだけの“ダメージ”を受けたかがわかるようになっており、クリスの認識とのギャップが窺えます。今まで戦いとはほぼ無縁のコロニーだったからなぁ。一晩でこれだけの被害が出たら、そりゃ皆動揺するよね。
ハンバーガーセットを買って、密かにバーニィのもとを訪れたアル。しかし、当のバーニィはアルの思いとは裏腹に、ガンダムNT-1との戦いを放棄し、逃げる算段を進めていました。何を言っても考えを変えないバーニィに、ついに愛想をつかしてしまったアル。彼と別れた後、クリスと出会ったアルは、彼女なりの戦いに対する哲学を聞くことになりますが…。アルにとって、バーニィは憧れの存在。それゆえに、ガンダムNT-1と戦って勝利してほしいと願っていましたが、肝心のバーニィ自身は、すっかりガンダムNT-1の強さと核弾頭ミサイルの脅威に恐怖し、一刻も早くリボーから脱出することを最優先で考えていました。ここで見逃せないのが、バーニィとアルの感情のぶつかり合い。バーニィは自身の行動を正当化し、アルに理解してもらおうとするために「ガンダムは怖い」・「本当はモビルスーツを1機も落としたことがない」と半ばわざと弱音を吐きますが、それに対しアルは、その言葉を信じずに「僕らならガンダムに勝てるはずだ」と言い出します。アルが「バーニィの意気地なし!」と見切りをつけずに、ギリギリまでバーニィとともに戦おうとしているのが注目ポイント。アルの純粋さとバーニィへの信頼が窺い知れます。弱さを見せてもアルに自分を信じてもらえるなんて、バーニィも幸せ者だよなぁ…。しかし、こうしたアルの説得にもバーニィは応じず、そのままケンカ別れすることに。その後クリスと出会ったアルは、思い切って「このコロニーが危機にさらされた場合どうするか」と訊いてみます。それに対するクリスの答えは「戦う」というものでした。仲間のため家族のため、恐怖心があっても戦うといって見せたクリス。その一方で、逃げるという選択を否定せず、また戦うという選択も自分が一人ぼっちになりたくない=ある種のエゴだと表現しているのが興味深いです。結局、戦うのか逃げるのか、どちらが正しいとか間違ってるとかはないんですよね…。
ゲームセンターに寄っても気分は晴れず、学校へと向かったアル。しかし、校舎は昨夜の戦いで崩落しており、立入禁止状態。そんな中出会ったチェイたちは、校舎内から砲弾や薬莢を拾ってきますが、アルにはそれがひどくむなしく感じられるのでした。その後、やけを起こしたアルは警察に駆け込みますが、核攻撃の話など当然信じてもらえるはずもなく、つまみ出されてしまいます。クリスマスムードに一色の街に対する、アルの孤独さ。砲弾や薬莢を拾って喜んでいるチェイたちに対し、昨夜の戦いで戦死したサイクロプス隊のことを思い出し、涙ぐみながらもそれを人に知られまいとして作り笑顔をする彼の悲しみ。Bパート前半部分では、リボー内のあらゆる人や街とアルの対比が、アルの細かな心情を浮き彫りにしてくれています。回想シーンなどを一切挟まずにこれだけの描写でアルの心理描写を的確に表現しているのは驚異的。同時に、視聴者の涙を誘います。特に、チェイたちに対して泣きながら笑顔を作っているシーンはドキッとしましたね。誰かに本当のことを言えるわけもないから、つらいよな、アル―。
自宅に戻ったアルは、その日の夕食時、父母がよりを戻したことで、家族みんなでの生活が再開するのを知ることに。しかし、それがクリスマスの日からというのを知った時、彼の表情は一変します。このまま、クリスマスの日にリボーは核攻撃を受け、何もかもメチャクチャになってしまうのか?アルが絶望しかけたその日の深夜、突然一本の電話が入ります。電話の主は、リボーから逃げようとしていたはずのバーニィ。彼は、方針転換してガンダムNT-1と戦うことを決意しており、アルに大きな希望を与えるのでした。あれだけかたくなに逃げると決めていたのに、舞い戻ってきたバーニィ。それは、彼の中でガンダムNT-1と戦いたいという思いが芽生え、決心がついたからでした。この一連のバーニィの心情変化の描写について、ワンクッション挟むような形の描写をしているのが、興味深いポイント。普通なら、「旅立ちまでの時間に今までのことを思い出す→やっぱり逃げ出すわけにはいかないと決心して戻る」という流れになりそうですが、ここに「バーニィが自分と似たような境遇の女性を目撃し、彼女の思いや行動を通じて戻る決心をする」という過程が挿入されています。バーニィが目撃したのは、男に騙されたある女。酔っぱらって男に電話し、最初は気丈にふるまっていたものの、「本当は逃げ出したくない」とじょじょに本心を吐露して泣き崩れてしまいます。この女性にバーニィが自分を重ね合わせて、「彼女のような過ち(というべきか)を繰り返すまいと」して戻る姿がいいですよね~。このシーンで、バーニィがセリフを一言もしゃべらず、表情とわずかな回想で彼の葛藤を表現しているのもGoodでした。
第6話(終)「ポケットの中の戦争」
1989年8月24日発売
登場した敵他:ザクⅡ改、ガンダムNT-1 アレックス
「明日の2時。ガンダムやっつけて、このコロニーを守ってみせるさ。」
STORY:僕とバーニィの、ザクⅡ改の修理が始まった。連邦軍に持っていかれそうになったサイクロプス隊のトレーラーを奪い返し、工具を買い込み、トラップのための材料も盗んで、準備は万端。ザクⅡ改も動くようになって、あとはガンダムと戦うだけだ。頑張ってね、バーニィ!と思ったけど、翌日父さんから、核弾頭ミサイルを積んだ船は撃墜されたって話を聞いたんだ。なんだって!じゃあ、ガンダムを倒す必要はもうないんだ。待ってよバーニィ、もう戦わなくていいんだよ!
『0080』も、ついに最終回。ついにバーニィのザクⅡ改と、クリスのガンダムNT-1が真正面からぶつかり合うことになり、その激闘が描かれることになりました。その戦いは相討ちとなりバーニィ死亡という悲しい結末となりますが、この戦いの直前にアルが「バーニィがガンダムと戦わなくてよくなった」ということを知り、必死にそのことを伝えようとしていることが、余計に悲しさを引き立てています。バーニィの奮闘が、戦局に全く影響を与えなかった。これこそが、このドラマの最大の悲しみであり、見どころであるといえるでしょう。
前回、アルの働きかけと自身の経験から、リボーを守るためにガンダムを倒すと立ち上がったバーニィ。彼はそのまま残されていたザクⅡで戦いに挑むこととし、アルとともにその修理に取り掛かります。まず必要なのは、戦闘のための武器弾薬。サイクロプス隊が遺した補給用トレーラーがまだ1台残っていることを思い出したバーニィたちは、それを取りに廃倉庫へと向かいますが、ちょうど連邦軍がそれを引き上げようとしている最中でした。ここでアルが打ち出した作戦とは…。第4話でバーニィを残して壊滅したサイクロプス隊でしたが、彼らが使用していた廃倉庫やトレーラーは、連邦軍によって調査されつつあったもののまだ残存。バーニィはこれに目をつけていました。トレーラー2台のうち1台は既に連邦軍に回収されており、狙うは残った1台。しかし、バーニィたちがやって来た時は、ちょうど連邦軍によって回収される寸前でした。ここでアルが打ち出したのは、自分を使った囮作戦。わざと連邦軍のジープを傷つけ、泣きわめいて気を引いている間にバーニィがトレーラーを強奪する算段でした。アルは戦争で父を失った子供という設定で、ジープを壊して絶叫。連邦軍兵士もその様子に同情したのか、口頭注意する程度でアルを解放するのでした。アルの一連の行動は演技。ですが、本当に涙したり騒いだりと、一部「演技じゃなくて本心なのでは?」と感じる部分もあります。アルの近親者で戦死した人はいないけど、一年戦争のせいで両親の仲が裂かれたようなものだから、彼もある意味「戦争で父親を失った子供」なんですよね。そういった思いが込み上げて来たのかな―。
武器弾薬は入手できたものの、ガンダムと戦うにはあまりにも物資不足。真正面からの戦闘は難しいと感じたバーニィたちは、目の前に浮かんでいたアドバルーンをヒントに、あるトラップを思いつきます。夜中に倉庫からアドバルーンの材料を大量に盗み出し、翌日工具を買い込んで、彼らは、ザクⅡ改の修理とトラップの製造を本格始動。そしてついにザクⅡ改は再び動くようになり、バーニィは翌日の戦闘に向けて覚悟を決めるのでした。トレーラーから武器弾薬を回収出来たとはいえ、弾薬の数が極めて少なかったため、とれる戦法はヒートホークでの接近戦。しかし、真正面からガンダムNT-1を相手にすれば、間違いなくすぐやられる。そういった発想から、バーニィたちは必然的にトラップを用いた戦法をとることを強いられます。ここでバーニィが思いついたのは、アドバルーンとガスを利用した撹乱作戦でした。アドバルーン単体では何の武器にもなりませんが、着色ガスで敵の視界を奪い、その中でアドバルーンを膨らませれば、デコイとして使うことが可能。バーニィはそれを思いつき、夜な夜な倉庫に忍び込んで強奪します。トレーラー強奪の時はわりと慎重にやってた彼らですが、こちらでは警備の数が少なかったからか、鉄パイプで警備員を昏倒させてアドバルーンを奪うという力技を使用。警備システムとかあったらバレてたぞ、おい…。そして翌朝、工具を買い込んだ彼らは、本格的にザクⅡ改の修理に着手。それは見事成功し、バーニィは翌日の戦いに向けて決意を新たにし、アルに1つのビデオを託すのでした。ザクⅡ改の修理シーンは、OPテーマをBGMに和やか&楽しげに進行。バーニィとアルの笑顔が印象的でしたね。そんなザクⅡ改の修理は1日で終わり、いよいよ戦いの日を迎えるのみ。バーニィからビデオを託され、戦いから遠ざけられたアルは、その夜バーニィの勝利を心から祈るのでした。二度とイタズラはしないと誓い、バーニィの勝利を祈るアル。それはいいんだけどさ、今までやってきたイタズラがけっこうヤバすぎると思うんだけど…!?
アル「神様、お願いをかなえてください。もう二度とイタズラしないと誓います。本当です。カエル殺して遊ぶのやめます。ヘビやトカゲを女の子の机に入れたりしません。だから、だからお願いです。バーニィをお守りください。このコロニーを、皆の命をお救いください。」
バーニィがザクⅡ改に乗り込み、連邦軍基地に接近していたのと同じ頃。アルは母親とともに、空港へ帰ってきた父親の迎えに行くことに。よりを戻した両親の話を聞いている間に、「リボーに接近していた核弾頭ミサイルを積んだ戦艦が、連邦軍に撃墜された」という情報を耳にします。バーニィがガンダムNT-1を倒す必要はない―。そう気づいたアルは、全速力で走りだしてバーニィのもとへ向かいますが、既にザクⅡ改とガンダムNT-1は交戦状態。アルが駆けつけた時は、両者相討ちとなり、ザクⅡ改は彼の目の前で爆発四散して…。バーニィがアルを戦いから遠ざけたのは、危険を回避するのはもちろん、この日帰ってくるというアルの父親を迎えに行かせるため。アルはしぶしぶ母親に同行して父親のもとへ向かいますが、そこで衝撃の事実を知るのでした。ガンダムNT-1が破壊できなかったため、月基地グラナダより発進した、核弾頭ミサイルを積んだ戦艦。しかしそれらはリボーの宙域に到達直前、連邦軍に発見され、交戦の末撃沈されていました。バーニィがガンダムNT-1と戦うのは、核弾頭ミサイルによるリボー攻撃を防ぐため。そう、ここでアルは、「このままではバーニィがムダな戦いをすることになる」ということを知るのです。アルはバーニィを止めるため必死に作戦地点へ向かいますが、ザクⅡ改とガンダムNT-1は既に激戦を繰り広げている状態。アルが駆けつけた頃には、両者相討ちとなり、ザクⅡ改はアルの目の前で爆発四散するのでした。ザクⅡ改とガンダムNT-1の戦闘は、わりと長めに時間がとられ、丁寧かつダイナミックに描写。かなり迫力がありました。これが全部手描きとは、アニメーターの頑張りをひしひしと感じます。そんな戦闘の結果は、両機相討ちとなったものの、ガンダムNT-1の辛勝。バーニィは連邦軍兵士曰く「ミンチよりひどい」状態になって死亡したのに対し、クリスは重傷を負いながらも生還します。ここでアルは、倒そうとしていたガンダムNT-1のパイロットが彼女であることを初めて知ることに。バーニィの死をの直後にこれを知るって、アルにとってはかなりツラい展開ですよね。そんなアルは、呆然としてしばらくその場から動けず、連邦軍兵士の呼び掛けにも応えない状態。彼の受けた衝撃がよく分かります。
バーニィから託されていた、ビデオテープ。夜、アルはビデオを観てから眠りにつきます。そのビデオの中には、バーニィの最期の言葉が残されていました。『0080』で最も有名とも言える、バーニィのビデオレターのシーンがここ。優しい語り口ながら彼の強い決意を感じさせるものでしたが、出来るだけ明るく振る舞おうとする彼の様子と、先述の通り核弾頭ミサイルを積んだ戦艦が事前に撃沈されたため、その決意と覚悟も全て無意味になってしまったことを考えると、なんとも言えません。あと1時間、いや30分戦闘開始が遅ければ、バーニィの死は回避できたのかもしれないのにね…。
バーニィ「もし、運よく生き延びて戦争が終わったらさ。必ずこのコロニーに帰ってくるよ。会いに来る。約束だ。…これでお別れだ。じゃあな、アル。元気で暮らせよ!クリスによろしくな。」
翌朝。アルは両親の話から戦争が終結したことを知り、登校。途中クリスと会い、彼女が地球に転任することになったことを知ります。そして、学校で開かれた演説の中で、アルは感情がこみあげてきて泣き出してしまうのでした。本作のラストシーンは、戦争終結により戻ってきたアルの日常が描写。クリスは地球へ転任となり、アルの学校も校舎が崩壊したものの通常授業が再開されることになりました。戦争がバーニィの戦闘直後に終結していることから、バーニィが戦おうが戦いまいが戦局には全く影響がなかったこと、クリスがバーニィの死を知らずに去っていくこと、そして、せっかく平和が戻ってきたのに戦争を待ちわびるチェイたちなど、わずか数分の間に視聴者の心をえぐるようなシーンが次々に登場。これらを観て、虚しさを覚えない者はいないでしょう。結局、バーニィの戦いは、一年戦争にとっては全くのムダだった。でも、完全に不要な戦いだったワケではありません。彼の奮闘や人柄は、アルの心に、確かに大きな爪痕を残したのだから。
『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』。これは、1人の少年が“戦争”に直面し、その中で人々の思いの交錯と戦争の悲惨さを目撃し体験した、心の成長記である。
…こうして、『0080』の物語は完結となりました。
次回は総括として、改めて『0080』を振り返ってみることにしましょう。
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☆ガンプラ Pick Up!
『0080』に登場したモビルスーツのガンプラの一部を、ピックアップしてみよう!
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