今回は、『機動戦士ガンダムSEED』の感想記事第4回目です。
第1クールもいよいよ終盤。今回ご紹介の3話では、前回から懸案事項となっていたラクスの件の解決や、キラのSEEDの能力の初発現、自ら軍に残ることを選ぶサイたちと、重要なストーリーが次々に描かれました。基本的にキラたちの仲間内で暗い雰囲気がないため、うっかりしているとスルーしちゃいそうになりますが、結果的にキラたちがどんどん自らの意思でこの戦争に介入していく構図になっているのが興味深いところ。「ガンダムシリーズ」らしい悲しさとはかなさを引き立ててくれています。
なお、前回(第7~9話)の感想記事は↓コチラです。
bongore-asterisk.hatenablog.jp
PHASE-10「分かたれた道」
2002年12月7日放送
「お前はちゃんと帰ってくるよな!?俺たちのところに―。」「必ずね。約束する。」
STORY:ナタルの機転により、無事帰還したキラとムウ。しかし、キラを待っていたのは、フレイからの容赦ない非難だった。打ちひしがれる彼の心を、ラクスの言葉が救ったが、そのさまをカズイに聞かれたことをキッカケに、サイたちのキラに対する信頼も揺らぎ始めてしまう。そんな中、無用な戦いをどうして求めたいキラは、独断でラクスを連れ出し、彼女をクルーゼ側に引き渡し、クルーゼの部隊を撤収させようとする。キラの思いを汲み取り、サイたちも協力するが、ラクスの引き渡し後にキラが戻ってくるかどうか不安があった。本当にキラは帰ってくるのだろうか。アークエンジェルから、エールストライクガンダムが飛び出した。
サブタイトル通り、キラとアスランが決別することになる一編。今までは、連合の作戦ややり方に振り回されていた感じのキラでしたが、今回は逆に、そのキラが積極的に行動し、結果的にアークエンジェルを救うという結果となりました。キラの心情変化にスポットが当てられているため、戦闘シーンらしい戦闘シーンはほぼなし。ですが、クライマックスにおけるキラとアスランのやり取り等に、しっかり時間がとられて描写されているため、なかなかに見ごたえがありました。
前回、卑怯とわかりながら、ラクスを人質に取る作戦を取ったアークエンジェル。ナタルの要求通り、クルーゼの部隊は後退し、この間にアークエンジェルは態勢の立て直しを図ります。そして、時同じくして、キラとムウも帰還。その際、気を失っていたフレイも目を覚ましますが、父ジョージを失った悲しみとショックは大きく、その叫び声を聞き駆け付けたキラに対して、容赦ない非難の言葉を浴びせるのでした。序盤では、命からがら何とか帰還した、キラとムウの描写ののち、フレイの描写へと移行。ジョージの死を目の当たりにした精神的ショックはかなり大きいものがあり、意識を取り戻したあとも錯乱状態だっただけでなく、キラに対し全ての怒りと憎しみをぶつけるかのごとく罵倒します。視聴者としては、キラの事情を分かっているため、ここでのフレイの言葉は不快に感じられるもの。しかしながら、「相手が同じコーディネーターだから、本気で戦えていないんじゃないか」等、この時点でフレイがキラとアスランの関係性を知らないにもかかわらず、真理を突くようなセリフを言っていることで、このフレイの罵倒にドラマ上の別の意味を持たせているのが興味深いです。でも、それを加味しても、フレイが現状キラたちに頼りきりで、自分から何もしようとしないのは、ちょっと不満だよね。まあ、かといって積極的に連合の軍人になろうとしたらしたで、ちょっと悲しくもあるけどさ…。
居ても立っても居られなくなり、フレイの部屋から飛び出して、人気のない場所へ移動するキラ。そこで偶然居合わせたのが、ラクスでした。キラが、彼女に対しアスランとの関係や事情を話すと、彼女もまたアスランを知っており、それどころか婚約者であることが判明。この会話で幾分心が救われたような感じのしたキラは、少しだけ表情が穏やかになります。しかし、この一連の会話を、カズイに偶然聞かれていたことに、全く気付いていませんでした。傷心のキラを救ったのは、ラクスの言葉。ここでは、彼と彼女がその中を深めていくと同時に、お互いがまだ明かしていなかった情報を知ること(キラがアスランの親友であること、ラクスがアスランの婚約者であること)、一連の事情をカズイが偶然聞いてしまったことで、それをサイたちも知ることになり、キラへの信頼に揺らぎが生じる等、単なる説明や感情描写にとどまらない、ドラマ上非常に重要なものをいくつも描いているシーンになっていました。1つのシーンに複数の意味を持たせるという構成は、何も『SEED』に限らず他の作品でも見られますが、ここまで違和感なく、そしてドラマに波を立たせているのは秀逸です。唯一ツッコむとしたら、「なんでカズイがそこにいるんだよ」ってことくらいかな…。ちなみにここでは、ラクスのハロを作ったのがアスランであること、またそのハロによって、何度も鍵がかかっているはずの部屋が開錠され外に出れてしまうことが明かされます。キラの鳥もアスランが作ったものですから、これで彼とラクスの共通項がまた1つ増えたことに。どんどん結びつきが強くなり、またキラとアスランの対立が悲しく印象に残るものになっていく形になっていて、Goodですね。それにしても、何でもかんでも開錠してしまう能力、ラクスのコーディネーターとしての力のせいじゃなかったのね。
サイたちの中でキラへの信頼が揺らぐ中、深夜、キラは密かに自室を抜け出し、ラクスを連れ出したキラ。彼には、争いの種となってしまったラクスをクルーゼ側に引き渡すことで、彼らを撤退させ平和的にことを解決しようという思いがありました。そんな彼に、偶然遭遇した、サイとミリアリア。キラの思いを汲んだ彼らは、その作戦に協力し、エールストライクガンダムを出撃させます。どうしても不安になり、キラに戻ってくるかどうか訊いてくる彼らに、キラは戻ってくることを約束するのでした。Bパートからは、キラが自分なりに戦闘を回避する方法として、ラクスをクルーゼ側に引き渡すことを決意し、独断で行動を開始するさまが描写。ここで「おおっ」と思ったのが、単にずっとキラに独断で単独行動をさせるのではなく、途中でサイとミリアリアと接触させ、彼らがキラのことを信頼して、進んで協力するという過程を経ている点です。キラの単独行動だけでも、ドラマを進めること自体は十分可能ですが、ここでサイたちを介入させることで、Aパート終了直前で挿入された彼らのキラに対する信頼の揺らぎに関するドラマの続きをも描き、結果協力させることで、彼らの思いをしっかりと表現しているのがグッとくるんですよね~。視聴者的には、キラがザフトにつくことはまずないだろうということはわかっているのですが、それでも、サイの「帰って来るよな?」という問いかけに、キラがちゃんと「帰って来る。約束する。」と返事をしたシーンは、緊張感と安心感が同時に押し寄せてきましたね。そんなサイたちの協力を得たキラは、最後の最後でバレてしまったものの、ラクスを乗せてエールストライクガンダムで出撃。自らクルーゼの艦にコンタクトを取り、ラクスの引き渡しを図ります。
クルーゼの部隊に独自コンタクトを取り、アスランのイージスガンダムを引きずり出したキラ。彼は約束通りラクスを引き渡し、その場から離れようとします。アスランはキラを自分のもとに引き入れようとしますが、キラは、アークエンジェルに守りたい友だちがいるとしてこれを拒否。これは2人の完全な決別を意味していました。そして、ラクスの引き渡し完了後、これをチャンスと言わんばかりに、クルーゼがシグーで攻撃を仕掛けようとしますが…。今回のクライマックスと言えるであろう、キラからアスランへのラクスの引き渡しシーンは、意外にアッサリ終了。しかしながら、その前段階におけるアスランの出撃シーンや、ラクス引き渡し後のキラとアスランのやり取りのドラマが、なかなかに濃密に描かれていました。特に、引き渡し後のシーンは、以前とは逆に、アスランがキラに対し「自分たちのところへ来ないか」と積極的に勧誘する構図となっており、それに対するキラのセリフはあえて少なめにされており、その分「(アークエンジェルには)友だちがいるんだ!」と叫ぶシーンに、彼の思いのすべてが凝縮されているように感じましたね。アスランとの決別を、キラ自らの意思で行ったという構図にしているのはGood。もっとも、「キラにとってはアスランも友だちなんじゃないの?」という話ですが、そうした一種の矛盾含めて、このシーンはとても印象深いものになっていました。こうしたキラの尽力で、ラクスの引き渡しが完了しますが、直後クルーゼはシグーでアークエンジェルの攻撃を画策。これを予測していたムウもスクランブル発進しますが、無用な戦闘を中止させたのは、ラクスでした。慰霊団団長権限で、クルーゼに戦闘中止と撤退を命令するラクス。さすがのクルーゼも、その肩書を使って兵士たちに聞こえるように指示されてしまっては無視することはできないようです。ラクスもまた、クルーゼにとっては面倒な存在。アスランとの関係性もあるので、すぐに消されるということは無いでしょうが、きっとこの先、そのクルーゼによる妨害や試練が待ち構えているんだろうな―。
PHASE-11「目覚める刃」
2002年12月14日放送
登場した敵他:ブリッツガンダム、バスターガンダム、デュエルガンダム
「そうよ、皆やっつけてもらわなくっちゃ。でないと、戦争は終わらないのよ―。」
STORY:ラクスを敵に引き渡すという独断の行動につき、マリューらの軍法会議にかけられるキラだったが、彼女の計らいにより軽度の注意程度で済んだ。キラの処遇にひと安心し、味方艦隊との合流も間近に迫り、だんだん安心してきたサイたちだったが、そのわずかなスキを突かれて、イザークたちの奇襲を受けてしまう。フレイのどこかおかしい様子が気にかかりながらも、キラはムウとともに出撃するが、ブリッツガンダムやバスターガンダムの妨害を受けて、アークエンジェルを危険にさらしてしまう。そして、デュエルガンダムの攻撃がアークエンジェルに迫るとき、キラのある能力が発動した。
フレイの様子がだんだんと別方向におかしくなっていくと同時に、キラがSEEDの能力を初めて発現させ、イザークらを圧倒する一編。サブタイトルにもなっている「目覚める刃」は、話を観るに、このフレイの中で芽生えるすさんだ感情と、キラの発現したSEEDの両方を意味しているのでしょう。そんなSEEDの力により、イザークたちを打ち負かしたり、キラ自身も前回のことはほぼお咎めなしとなって再び仲間として受け入れられたりと、今回のお話の雰囲気自体はやや明るめ。しかし、そんな中でフレイの異常さが、視聴者をかなり心配させてくれます。
前回、独断でラクスを連れ出し、ザフト側に引き渡すという行動に出たキラ。これを重く見たマリューらは、急ごしらえの軍法会議を開き、ムウが弁護側、ナタルが追及側として、それぞれ裁判を進めます。そして、マリューの下した判決は、まさかの軍規の多重違反による銃殺刑。これにはさすがのキラもギョッとしますが、この判決には続きがあり、結果的にキラは最低限の注意だけで済むのでした。序盤では、キラの前回の行動を受けての、簡易的な軍法会議のさまが描写。一応、二手に分かれてキチンと裁判らしい裁判が行われていましたが、マリューらの最終的な結論(判決)は決まっていました。正規の軍人であれば、軍規の多重違反で銃殺刑となりかねないものでしたが、結果的には最低限の口頭注意のみだけでおしまい。ここでは、少なくともマリュー自身とムウはその処分で納得しているさまが描かれており(ナタルは不満でしょうが、さすがに銃殺刑にしろとまでは思っていないでしょう)、『SEED』の優しさを感じました。これが『ガンダム』とか『Ζ』だったら、間違いなく独房送りですよね。それで、ストライクガンダムがどうしても出撃しなければならないってタイミングまでずーっと監禁状態ですよ。そんな最低限の処分で、済んだキラでしたが、銃殺刑を言い渡されてショックを受けているさまは、あまりにも展開が急転直下すぎて、ちょっと笑っちゃったなぁ。その後、艦長室から出てきたキラは、サイたちに報告。それに安心するサイたちでしたが、キラとアスランの関係を再度口走ったことを、フレイに聞かれていることに気づいていませんでした。
ザフト側では、アスランがラクスのことを心配し、イザークたちがアークエンジェルに最後の奇襲をかけようと画策していた頃。食堂で食事をとるサイとカズイは、これまでのこととこれからのことについてあれこれ会話。そうしているうちに、キラとフレイが、相次いで食堂に入ってきます。キラの姿を見つけるや否や、今までのことを謝罪するフレイ。キラは恐縮そうにして彼女の顔を上げさせようとしますが、一方でサイは、そんな彼女のみせた一瞬の黒い顔を見逃していませんでした。Aパート後半では、今までの行いを素直に謝罪するフレイのさまが描写。これだけ観ると、彼女も心を入れ替えたのかなと感じますが、その前後のシーンでは、うわ言のように「皆やっつけなきゃ戦争は終わらない」とつぶやいていたり、時々不穏な笑みを浮かべたり、女の子の手を異常なほど強く握ったりと、明らかに精神的に不安定になっているさまが描かれているのがかなり気になります。このまま病んじゃうルートに突入して、変な気起こさなければいいけど、「ガンダムシリーズ」だとそのパターンもありうるから、心配になりますよね。
突然鳴り響く非常警報。それは、デュエルガンダム・バスターガンダム・ブリッツガンダムによる奇襲でした。アークエンジェルには、めぼしい戦力が未だにストライクガンダムとメビウス・ゼロしかないため、キラももちろん出撃。宇宙空間で3体のガンダムと相まみえますが、イザークたちはハナから、個々がストライクガンダムたちを引きつけて足止めしている間にアークエンジェルを叩く作戦を計画しており、キラたちはだんだんとその術中にはまってしまいます。そして、とうとうブリッツガンダムがアークエンジェルに張り付いて…。Bパートより、戦闘シーンが挿入。デュエルガンダムらガンダム3機に対し、アークエンジェルはストライクガンダムとメビウス・ゼロで対抗。戦力的には不利な状況でしたが、キラもムウも驚異的な粘りを見せて踏ん張ります。この戦闘シーンでは、デュエルガンダムに食らいつくストライクガンダムもカッコいいですが、それ以上に強烈に印象に残るのが、メビウス・ゼロとバスターガンダムの戦闘。どう観てもムウのメビウス・ゼロのほうが不利ですが、ムウのセンスとメビウス・ゼロ自体の小回りの利きっぷりでバスターガンダムを圧倒。なんと、最低限の被弾のみである程度のダメージを与えることに成功しています。今回の戦闘を通して、ムウの操縦センスの卓越っぷりを改めて思い知らされたなという感じ。彼もガンダムに乗れるようになれば百人力という感じですが…はてさて。一方のストライクガンダムも、デュエルガンダムとしっかり戦闘。今までの迷いを吹っ切ったかのように、正面から迎え撃っているのがGoodでした。
ミリアリアの連絡により、アークエンジェルの危機を知ったキラ。しかし、どう頑張っても戦局はほぼ互角であり、デュエルガンダムの攻撃に足止めを食らっている彼に、アークエンジェルを救いに行く余裕はありませんでした。しかし、彼自身の感情が高ぶったとき、彼は超人的な反応と挙動を見せ、それに呼応してストライクガンダムも俊敏な動きを披露。ブリッツガンダムをアークエンジェルから引きはがしたうえ、デュエルガンダムを返り討ちにし、イザークに重傷を負わせて撤退に追い込みます。2VS3ではさすがに物理的に分が悪く、ブリッツガンダムのアークエンジェル攻撃を許してしまったキラたち。キラが、何がなんでもアークエンジェルを守りたいと思ったとき、彼の目からハイライトが消え、同時にストライクガンダムが驚異的な挙動を見せるようになります。これこそ、『SEED』のタイトルの由来となっている、SEEDの能力の発現。その覚醒っぷりは、宇宙世紀系でニュータイプが本気を出したときの比ではないくらいの反応速度の速さであり、機体であるストライクガンダムもそれに呼応するためか、ほぼワープのような超スピードで動き、ブリッツガンダムとデュエルガンダムを攻撃。デュエルガンダムも負けじと不意討ちを食らわせようとしますが、キラの反応速度のほうが速く、ストライクダガーで逆に返り討ちにされ、イザークは右目負傷という重傷を負うことになります。あまりにも強すぎるSEEDの能力。これを使うことによる、それ相応の代償もあるのでしょうが、それは次回以降描かれることになるのでしょう。
PHASE-12「フレイの選択」
2002年12月21日放送
登場した敵他:イージスガンダム、ブリッツガンダム、バスターガンダム、デュエルガンダム、ジン
「何と戦わねばならないのか?戦争は、難しいですわね。」
STORY:ついに連合の第8艦隊と合流したアークエンジェル。これで除隊し地球に降りることができると考えたサイたちが安堵する一方、キラは心の中で迷いが生じていた。そして、連合内ではキラたち等の処遇に色々な思惑が絡みながらも、彼らが民間人であることを尊重して除隊を決定。キラたち宛に除隊証明書が発行され、これで彼らは普通の生活に戻れることになった。しかし、今度はフレイが自ら入隊を志願し、そしてザフトの攻撃が迫る。アークエンジェルに避難していた人々の脱出がまだ完了していない中で、キラたちはどんな選択をするのか。
サブタイトル通り、フレイが自分の意思で戦うことを選択する一編。それだけでなく、キラたちメインキャラもまた、各々自分たちの道を自ら決めるお話となっており、1クール目完結直前にふさわしい一編となっていました。キラたちどうしの会話や、マリューら連合内のやり取りにかなり時間が割かれており、そのため今回は戦闘描写らしい描写は無し。でも、そうしたことは全く感じさせないくらいのドラマが展開されていましたね。
とうとう連合の大規模艦隊:第8艦隊と合流を果たしたアークエンジェル。これにより民間人はシャトルを通じて地球へ降下することになり、キラたちもまたその対象になることから、サイたちはやっとこの状況から解放されると安堵します。一方のキラ自身は、ムウのメビウス・ゼロの整備を手伝いながら、心の中で迷いが生じていました。その後マリューがやってきて、キラとはここでお別れという前提で挨拶をしてきますが、それでもキラの迷いは深まるばかりで―。今回は、アークエンジェルが、友軍である第8艦隊と合流出来たところからスタート。サイたちはこれで地球に降りられる→元の民間人に戻れると安堵していましたが、マリューとナタルの間では、キラ含む彼らの処遇で意見の対立が起きていました。2人の間での最懸案事項は、やはりキラの処遇。ナタルは彼のコーディネーターとしての能力やその操縦センスを買っており、ぜひ今後もパイロットとして働いてもらいたいと考える一方、マリューはそれでもキラ自身の意思を尊重し、アークエンジェルから降ろすつもりでいました。このシーンで興味深いのが、アークエンジェル内における以前から連合側の主要キャラの中では、「キラの意思を尊重して降ろすべき」という意見が多数派になっている点。軍人的な考え方としては、ナタルのものが合理的であり、過去の「ガンダムシリーズ」においてもそれが優先されてきたことが時々ありましたが、それがどちらかと言えば異質な意見として扱われているのが面白いです。これはマリューたちの考え方、ひいては本来持っている優しさによるものなのでしょうが、非常に現代的な価値観だなとも思えました。『SEED』はもう20年以上前の作品ですが、それでも他の「ガンダムシリーズ」作品の中では比較的新しい、21生気に入ってからの作品ですもんね。そりゃ、昭和後期の『ガンダム』や『Ζガンダム』に比べれば、価値観も変わっていて、どちらかと言えば現代寄りになりますよね。そんな、マリューたちがこうした意見を交わしている頃、当のキラは、地球に降りて一般人に戻る予定だったものの、ストライクガンダムやメビウス・ゼロのことが気になってしまい、ムウたちのメンテナンスの仕事を手伝うように。マリューの思いとは反対の方向に自然と向かっているのが、ドラマ展開としてこれまた面白いです。
マリューたちは、第8艦隊のトップであるハルバートン提督と面会。現状の戦局の情報を共有し、キラたちの処遇についても話し合います。ナタルは、今後の戦局打開と今までの戦いっぷりを踏まえ、キラを軍に引き留めて正式なストライクガンダムのパイロットにすること尾を提案しますが、ハルバートン提督はそんな彼女を一喝します。同じ頃、クルーゼは第8艦隊もろともアークエンジェルを叩くことを画策していて…。Aパート後半からは、第8艦隊のトップであるハルバートンが登場。大規模部隊を率いていることから、どんな軍人かなと思いきや、軍人らしい厳しさは持っているものの、基本的には人当たりもよく、考えていることも意見も実にまっとうな、本当にまともな人物でした。「ガンダムシリーズ」における軍人は、たとえ味方側であっても、人格や思考に難ありな人物が多いですが、ハルバートンは全くそんなことは無し。さすがに聖人とまではいきませんが、民間人や個々人の扱いや意思を大変尊重しており、キラのことについても、ストライクガンダムを動かせる唯一のパイロットであることをわかっていながら、それでも彼の意思にゆだね、ムリに軍人にさせないことを決定します。当然これにはナタルが反発しますが、ハルバートンはそんな彼女を一喝。意見を引っ込めさせます。「ガンダムシリーズ」では珍しいくらいのまともで話せるタイプの軍人であるハルバートン。こういう人物が味方にいると心強いのですが、こういうキャラに限って、早々に死亡退場しちゃうんだよね…。
ナタルの反対意見を抑え込み、キラたちも民間人として彼ら自身の判断にゆだねることとしたハルバートンは、除隊証明書を発行し、サイたちに配布。彼らはこれで本当に普通の生活に戻れると喜ぶ彼らでしたが、同時にこのアークエンジェルが今後どうなってしまうのか、不安を覚えます。そうした中で、今まで非戦闘員だったフレイが自ら入隊を志願。そのさまを見たサイたちは、自ら除隊証明書を破り捨て、志願兵としてアークエンジェルに残ることを決断します。いよいよアークエンジェルを降りることになり、その準備を進めるサイたち。彼らを戦争犯罪人にしないための除隊許可証も発行され、あとはシャトルに乗るのを待つのみという状況でしたが、ここでフレイが、連合軍人に志願するという真逆の行動をとり始め、サイたちも改め今後どうするべきか考えるようになります。今までのキラたちの戦いを見てきて、自分も守られているばかりではいけない、何とかして戦いたいと思ったことが、軍への志願理由だというフレイ。サブタイトルとおり、彼女自身で選択をし、戦うという決断をしたこと自体はいいのですが、どうも前回の病みっぷりを考えると、本当にそれだけが理由かなぁとも訝ってしまいます。今後いち軍人として、サイたちと同様キラの心強い仲間になってくれればいいんだけど…そう易々と上手くいく未来が現状見えないんですよね。そんなフレイの行動に刺激を受けて、改めて自分たちがどうすべきか考えたサイたち。出した結論は、自ら除隊許可証を破り捨て、志願兵としてアークエンジェルに残り続けるという者でした。自分たちも共に戦うと決意し、こうした選択をしたこと自体はいいのですが、同時にその中に、「どうせ民間人として地球に降りても、そこで平和に暮らせるとは限らない」という考え方も混じっているのが見逃せません。こうした構図にすることで、サイたちが自ら戦う決断をしたというプラスの要素と、戦争に翻弄されている悲しいマイナス要素を両立させているんですよね。
ストライクガンダムを見つめていた際、ハルバートンと会話したことで、さらに自分がどうすべきか迷うキラ。そう迷っているうちに、シャトルの発車時間が迫り、気づくとキラはその列に並んでいました。しかし、サイたちと再会して彼らが志願兵として残ると決断したことや、アスランたちの攻撃が迫っていることを知り、キラもまた自らアークエンジェルに残ることを決断。シャトルのハッチから離れ、ストライクガンダムのドッグへと向かうのでした。Bパートにおいて、サイたちの様子と同時並行で描かれるのが、キラの様子。マリューやムウから過去言われた、戦うことを鼓舞するような言葉にある種縛られていたキラは、ハルバートンの「力を持っていても、意思が無ければ無意味だ」という言葉を受け、それらの言葉からいったん解放。そのうえで、アスランたちからの襲撃が迫る中、危機に瀕する一般市民たちを目の当たりにし、サイたちとは別の理由から、自ら戦うことを決断するという形になっています。サイたちよりも、自分の中で状況を咀嚼し、そのうえで結論を導き出しているというのがとても印象的。そして彼なりのカッコよさを感じますが、やはり戦いから逃れることができないのかという悲しさも感じさせるのがいい塩梅です。そしてまたこのシーンでは、キラが決断する直前、サイたちが志願兵としてアークエンジェルに残ることになったことを知る描写も挿入。キラが、自分の友人たちが、自身の思いとは逆に戦いにさらに向かっていくことに悲しさを覚えるさまも、改めて描かれていることも見逃せません。こうして、それぞれの思いを抱えながら、再び前線に立つことになったキラたち、これから立ち向かうアスランたちとの戦闘に、勝つことはできるのか―?
今回はここまで。次回は、第13話から第15話をご紹介予定です。『機動戦士ガンダムSEED』。新たな未来へ翔べ、ガンダム!
『機動戦士ガンダムSEED』の本編は、各種サイトで公式配信中!↓コチラもチェックだ!
☆ガンプラ Pick Up!
『機動戦士ガンダムSEED』に登場したモビルスーツのガンプラの一部を、ピックアップしてみよう!
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