今回は、『機動戦士Vガンダム』の感想記事第17回目です。
いよいよ、『V』の物語も完結へ。V2アサルトバスターガンダムも登場し、ストーリー上の盛り上がりは最高潮となります。そしてそのラストは、このザンスカール戦争によって多くの人の人生や思考が狂い、ウッソたちも多くの犠牲を払ったものの、ウッソとシャクティは何とか無事生還するという形になりました。単純にハッピーエンドとは言えないけど、ある程度救いのあるラストだった…と言えるんじゃないかなぁ。
なお、前回(第46~48話)の感想記事は↓コチラです。
bongore-asterisk.hatenablog.jp
第49話「天使の輪の上で」
1994年3月11日放送
登場した敵他:ゴトラタン、ゲドラフ、近衛師団専用リグ・シャッコー、ゾロアット、アインラッド、戦艦アマルテア
「そんな…そんな、卑怯な手を使ってまで…。消えて…消えてください!」
STORY:リーンホースJr.から離れて、カルルマンの勘を頼りに、ウッソたちはエンジェル・ハイロゥにたどり着きました。そこで待っていたのは、新型モビルスーツ:ゴトラタンに乗って狂気をむき出しにするカテジナと、彼女にそそのかされて無謀な戦いを強いられる、ネネカ・ニブロー隊でした。夢か現かわからない状況下で、全てを排除したウッソは、とうとうエンジェル・ハイロゥの中心部に突入。カガチを抑え、シャクティの奪還に成功します。しかし、エンジェル・ハイロゥはその動きを止めず、そのまま大気圏内に突入してしまいます。戦いは、まだ終わってはいなかったのです―!
エンジェル・ハイロゥが秘める驚愕の真実、カテジナの狂気とそれに振り回されるはかなきネネカ隊、持論を展開し自己を正当化しようとするカガチ等、ストーリー上重要なことがいくつも展開された、濃厚な一編。ウッソたちは終始苦しい戦いを強いられますが、そんな状況下でも正気を保ち続け、シャクティ奪還に成功したのは、彼らが持つ純粋さのおかげでした。こうしたことの裏で、ユカが戦死したり、短いながらV2ガンダムVSガンイージという通常あり得ない対決が展開されたりと、順当な盛り上がりポイント(ユカの死は喜ばしいことではありませんが)もきちんと用意されていましたね。
ズガン艦隊やモトラッド艦隊に向けて、行動を開始したリーンホースJr.等リガ・ミリティア側。その一方で、ウッソたちホワイトアークは、カルルマンの勘を信じて、シャクティを救出すべくエンジェル・ハイロゥへと向かっていました。カテジナの乗る新型モビルスーツ:ゴトラタンの脅威が迫る中、ウッソのV2バスターガンダムは、途中でマーベットたちの支援を再度受け、アサルトパーツを追加したV2アサルトバスターガンダムへとパワーアップ。攻撃力も防御力も増したその機体で、ゴトラタンの攻撃を振り切り、エンジェル・ハイロゥに接近します。ガンプラにおけるアンケート等でも常に高い人気を獲得し、見た目的にも強さ的にも相当なインパクトを誇るV2アサルトバスターガンダムが、ここでようやく初登場。「旧キットにおいて、なんでV2バスターガンダムが商品化されてるのに、V2アサルトガンダムとV2アサルトバスターガンダムはされてないんだろう?」とずっと疑問でしたが、それはアサルトパーツの登場が今回と、かなり終盤だったからなんですね。そうしたV2アサルトバスターガンダムに前後して登場したのが、カテジナの専用機ゴトラタン。個性的な見た目に、猫のような二つ目というのは、今までのベスパのモビルスーツの意匠を踏襲していますが、ほっそりした見た目で縦横無尽に動き回るそのすばしっこさが、今までの機体と一線を画している印象を受けます。『V』のラスボスモビルスーツにふさわしいデザインと言えるでしょう。
エンジェル・ハイロゥの縁に到着した時、再びゴトラタンやゲドラフ部隊などが急襲。ウッソをサポートするため、シュラク隊のVガンダムヘキサが集結し、ウッソを援護。その中で、ユカが特攻して戦死。ウッソは悲しみを振り切って、戦闘によって生じた破損個所から、エンジェル・ハイロゥへと侵入します。そこから出てくる大量のサイキッカーたちの死体に、彼は戦慄するのでした。エンジェル・ハイロゥに接近してきたV2アサルトバスターガンダムを見て、その装備のゴテゴテっぷりを笑うカテジナ。しかし、V2アサルトバスターガンダムはV2ガンダムと変わらぬ高機動性を常に発揮しており、彼女のゴトラタンをもってしても、バスターパーツを破壊するのがやっとなほどでした。早い段階でバスターパーツを破壊され、V2アサルトガンダムになってしまうので、V2アサルトバスターガンダムの登場時間はかなり短め。ですがその間に、その豊富な武装でゾロアットなどの敵モビルスーツをこれでもかというほど簡単に次々と撃破し、鈍重そうな見た目なのに素早く動き回ってゴトラタンの攻撃をかいくぐるなど、目覚ましい活躍を見せてくれていました。なるほど、これだけの活躍をしていれば、ファンの脳裏に強く焼き付く機体になるわな、V2アサルトバスターガンダム…!こうした良い活躍が目立つこの機体ですが、それにはユカの捨て身の攻撃があったためというのも忘れてはならないポイント。彼女は特攻によりゴトラタンをひるませ、かつエンジェル・ハイロゥにダメージを与えることに成功。これによりできた破損個所から、ウッソは内部へと侵入します。その破損個所からは、流出する大量の人間の姿が。あの輪っかの中の大部分に、無防備なサイキッカーたちが閉じ込められているということなのか…!?
ユカ「マーベットが、私たちの子供を産んでくれるって意味、あんたらにはわからないよ!先に逝った連中に、このことを教えなくちゃならないんでね!」
現場に駆け付けるのが遅れ、エンジェル・ハイロゥへのウッソの侵入を許した、ネネカ率いる近衛師団の一個小隊:ネネカ隊。彼女たちを利用することを思いついたカテジナは、立場を利用し、水着にバズーカ砲という信じられない装備で、V2アサルトガンダムへ出撃させます。さすがのウッソもこれには困惑してひるみますが、エンジェル・ハイロゥの中にいることから、幻覚であると思い込み彼女たちを撃滅。そのスキを突いて、カテジナはガンイージで襲い掛かりますが、その卑劣な作戦に怒ったウッソの返り討ちに遭うのでした。「裸のお姉さんたち」で有名なネネカ隊が、ここで登場。近衛師団の一個小隊という、ベスパの中でも比較的高い地位の兵士たちのはずですが、カテジナにそそのかされて水着にバズーカ砲という装備で出撃、結局ほとんどV2アサルトガンダム→V2ガンダムの動きを止めることはできず、その攻撃の前に全滅します。こんな装備でモビルスーツに勝てるはずがないってわかるはずなのに、そのまま出撃していったネネカ隊。その装備で出撃する理由をけっこうマジに分析してたし、マジメすぎたのか…?そんな彼女たちを放ったのが、カテジナ。彼女はさらに、かつて鹵獲したガンイージを使ってウッソを倒そうとしますが、怒りに燃えて完全にカテジナへの思いを断ち切った彼の、怒涛の反撃を食らって撤退していきます。なんだかんだで、今まで恋心が捨てられず、カテジナを攻撃できなかったウッソ。そのスタンスが明確に崩れた瞬間でした。
カテジナをも一時的に退けたウッソは、エンジェル・ハイロゥの最深部に突入。カガチと対峙します。いったんは拘束されてしまう彼でしたが、オデロたちが駆け付けたことで形勢逆転し、見事シャクティの救出に成功。しかし、サイキッカーたちを生かすために、エンジェル・ハイロゥそのものを破壊しなかったことが仇となり、シャクティがいなくなった後もそれは動き続け、しかも大気圏への突入を許してしまいます。カテジナとの戦いを終えて以降は、ウッソたちはテンポよく突入。カガチとの対峙も果たし、なんとかシャクティを奪還してエンジェル・ハイロゥから脱出します。一連のシーンのやり取りで印象深いのが、ウッソたちとカガチの、人類に対する考え方。前者は自分たち子ども、ひいては未来の子孫たちが人類をよりよくしていくと捉えていましたが、後者は人類そのものに絶望しており、今修正しなければ取り返しのつかない事態になると考えていました。ウッソたちが未来を見据えた考え方をしているのに対し、今に固執しているカガチ。彼自身が60代中盤であるがゆえということもあるので、単純にその考え方を否定することはできませんが、少なくとも、こうした偏った考え方に人類全体を巻き込むというのは、許されることではないでしょう。
ウッソ「1人の頭でっかちの老人のおかげで、人類が絶滅するなんて―!」
第50話「憎しみが呼ぶ対決」
1994年3月18日放送
登場した敵他:ゴトラタン、リグ・コンティオ、コンティオ、ジャバコ、ブルッケング、ゾリディア、アインラッド、戦艦スクイード、戦艦アマルテア、バイク戦艦アドラステア、バイク戦艦リテシア
「戦場で歌が聞こえるだと!? …黙れ、カガチのリングめ!」
STORY:エンジェル・ハイロゥの力を使って戦争を止めるため、ウッソとシャクティは、自らの意志でそこに戻る決意をしました。リガ・ミリティア側の艦隊は、全力で援護に回りますが、その中で、戦艦ジャンヌダルクが、特攻をかけて撃沈してしまうのです。悲しみを振り切って突入したウッソは、シャクティをキールームに行かせた後、カテジナのゴトラタンと遭遇。シャクティの歌声にすっかり狂った彼女に、過去の面影はありませんでした。戦闘そのものが終局を迎えつつある中で、残存するモトラッド艦隊に対し、リーンホースJr.がとった選択は…!
最終回直前ということで、敵味方ともに主要キャラたちがどんどん死亡退場していく一編。中でもリガ・ミリティア側の被害状況は大きく、ゴメス以下リーンホースJr.の中高年以上の乗組員たちや戦艦ジャンヌダルクのムバラク艦長、そしてシュラク隊のコニー以下全員が、皆戦火の中に散っていきました。カテジナの「トチ狂って、お友だちにでもなりに来たのかい?」というセリフや、クロノクルを呼び捨てにするシーン、そしてリーンホースJr.による特攻シーン等、『V』でとくに有名なシーンが登場するのもこのお話。いろんな意味で、最終回と同じくらいの、深い、そして強烈なインパクトを持つ内容でしたね。
エンジェル・ハイロゥの力を用い、祈りの力で戦争を終わらせる決意を固めたウッソとシャクティ。彼らがそこへ向かうため、V2ガンダムは再びV2アサルトガンダムへとパワーアップし、シュラク隊とホワイトアーク、そしてオデロたちが全面バックアップ。途中ゴトラタンの襲撃を受けるも、なんとかエンジェル・ハイロゥにたどり着きます。一方、そのV2アサルトガンダムとゴトラタンの戦闘による流れ弾で、戦艦ジャンヌダルクはエンジンの一部が大破。ムバラク艦長は、ほとんどの兵士を退艦させたうえで特攻を決意しますが、志半ばで散っていきます。そこに、ハンゲルグの姿はありませんでした。前回は割とあっさり破壊されていたアサルトパーツでしたが、今回は強化パーツにふさわしい防御力を発揮。ゴトラタンの攻撃を真正面から食らっても、しっかりと機体そのものを守り破損することはありませんでした。しかし、その強すぎる防御力が仇となり、ゴトラタンの攻撃が周囲に拡散。戦艦ジャンヌダルクは被弾してしまいます。ゴトラタンの攻撃、そしてV2アサルトガンダムの防御力が、どちらもトップクラスだからこそ起きてしまった現象。実際に起きてから「しまった!」と気づくウッソに対し、カテジナはこれを予測していたような発言をしています。この辺りは、悔しいけど、カテジナの方が一枚上手だったという感じですね。そんな流れ弾により、エンジンの一部を損傷した戦艦ジャンヌダルク。敵艦隊を前にしてのムバラク艦長の決断は、一度引き返して補給を受けることではなく、そのまま特攻するというものでした。しかし、その特攻は寸前で失敗。その前後で、ハンゲルグも忽然と姿を消してしまいます。ムバラク艦長を置いて逃げた格好になったハンゲルグですが、彼の行動が単純に非難できるかと言われれば、難しいところ。確かに仲間を見捨てた格好ではありますが、彼はリガ・ミリティアの真のジン・ジャハナムとして、まだやるべきことがあったでしょうし、仮に彼自身が残るという決断をしていたとしても、ムバラク艦長がそれをよしとせず退艦させていたことでしょう。ムバラク艦長が、ハンゲルグがいなくなったことに気づいた時、決して彼を恨むようなことを言っていないことからも、彼を信頼していることが窺えますしね。
女王マリアの娘であることを利用し、キールームに悠々と入ったシャクティ。彼女の祈り、そして歌声は、全宇宙と地球に拡散され、子供だけでなく大人にまで作用していきます。それを耳にし、いらだちを募らせたカテジナは、なんと自らの手でエンジェル・ハイロゥの破壊を開始。これをベスパからの離反だと勘違いしたフラニーは、ゴトラタンの攻撃を受け爆死。ミリエラもまた、それに巻き込まれ戦死してしまうのでした。Aパート後半から、カテジナの狂気は加速。もともとおかしくなっていた彼女ですが、シャクティの歌声が引き金となり、もはや作品序盤で見せた優しさは皆無の悪女へと変貌していきます。その象徴ともいえる行動が、フラニーの撃破。ふらふらと現れた敵機を撃破するのは、戦場ではおかしくない行動ですが、「トチ狂って、お友だちにでもなりに来たのかい?」なんて笑いながら倒すなんて、錯乱状態でないとできないでしょう。戦争のおかげで、彼女も変わってしまったなぁ…。
カテジナ「トチ狂って、お友だちにでもなりに来たのかい?」
エンジェル・ハイロゥに突入し、内部からの破壊を企むカテジナ。彼女を待っていたのは、V2アサルトガンダムの前に立つウッソでした。彼は必死の説得を試みますが失敗。カテジナからの攻撃されそうになりますが、逆にV2アサルトガンダムのハロに助けられ、その場を脱出。カテジナは、思わずクロノクルに助けを求めますが、そのクロノクルは、自らリグ・コンティオに乗ってリーンホースJr.を攻撃していました。ウッソの説得に、一瞬迷いを見せたカテジナ。そのスキが、V2アサルトガンダムの脱出のチャンスを与えてしまいます。この後出てくる彼女のセリフが、「クロノクル、来い!」というもの。字面だけ見ると、上官をとうとう呼び捨てにしたという感じのものですが、ドラマの展開から考えれば、カテジナは、クロノクルを一人の男として見ると同時に魅力を感じており、自分も同じ立場であるという思いから、呼び捨てにしたんだろうなということがはっきりとわかります。だから、このセリフって、そんなにネタにされるようなものじゃないと思いますね。
クロノクルの攻撃を受けて、大ピンチのリーンホースJr.。オデロたちの奮闘もあり大破には至りませんでしたが、左エンジンは破損し、このままでは墜落は時間の問題でした。意を決したジン・ジャハナム、そしてゴメスたちは、自分たち老人のみで、リーンホースJr.によるモトラッド艦隊への特攻を敢行。抵抗するクルーたちを全員退艦させ、ボロボロの艦とガンイージを使って、真正面から突っ込んでいきます。モトラッド艦隊はこのリーンホースJr.を撃沈することはできず、わずか1隻の老朽艦の特攻の前に全滅するのでした。今回最大のクライマックスと言えるのが、リーンホースJr.の特攻シーン。今までウッソたちのサブに回り続けていたゴメスやロメロといった老人たちが、ここでこそ自分たちが主役を張り仕事をする立場だとして突っ込んでいきます。よく考えてみれば、彼らは若干死に急いでいるような感じが否めませんし、特にロメロ・レオニード・オーチスはウッソたちを戦いに無理やり引き込んだ張本人でもあるので、「戦いに巻き込んでおいて、何勝手に先に死んでるんだ」という感じも少なからずあります。しかし、そうしたマイナスの感情を差し置いてでも、彼ら老人たちの決意と奮闘、そして全力で特攻をかけてモトラッド艦隊を全滅に追い込むその姿は、涙なしで観ることはできませんでした。挿入歌「いくつもの愛をかさねて」が、このシーンにはかなさと感動、そして不思議な美しさを与えてくれているのが、またGoodなのです。
ゴメス「―遅かったな!」
シャクティの祈りが強まるにつれて、エンジェル・ハイロゥは温かい光を拡散させながら、崩壊しつつ宇宙へと上昇。それは、シャクティ自身の祈り、そしてそれに同調したサイキッカーたちの思いの結集でした。それを追跡するウッソでしたが、クロノクルが追いつき交戦状態に。既にアサルトパーツを失っていたV2ガンダムとリグ・コンティオの、最終決戦が始まります。久しぶりに戦場で相まみえる、ウッソとクロノクル。互いが互いをフルネームで呼び合い、真正面からぶつかり合っているのが、最後の戦いという感じがします。そんな2人を遠くから見つめるカテジナは、自分のことを争って2人が戦っていると錯覚し、シュラク隊最後の生き残りだったコニーを破って、ウッソを再び狙います。さあ、この決戦の行く末はどうなるか―!?
第51話(終)「天使たちの昇天」
1994年3月25日放送
登場した敵他:ゴトラタン、リグ・コンティオ、ブルッケング、ゾリディア、ゾロアット、戦艦スクイード、戦艦アマルテア、バイク戦艦リテシア
「荒んだ心に、武器は危険なんです!クロノクルさん!!」
STORY:エンジェル・ハイロゥを背にして、ウッソとクロノクルの決戦が始まりました。その裏では、残っていた戦艦ジャンヌダルクがズガン艦隊を撃沈した一方、オデロがカテジナのゴトラタンの前に散ってしまっていました。やがて、クロノクルを打ち破り、カテジナの騙し討ちを切り抜けたウッソは、シャクティを救出すべく、エンジェル・ハイロゥの中へ突入します。死んでいった仲間たちの魂に導かれるまま、ウッソがたどり着いたのは、待ち伏せをするゴトラタンの目の前でした!ウッソは、カテジナを倒してシャクティを救出することができるのでしょうか?光の翼を持つ“ガンダム”の力が今、奇跡を呼ぶのです―!
とうとう『V』の物語も最終回。その内容は、ウッソとクロノクル、そしてカテジナとの決着が中心になりました。ウッソはシャクティとともに生還し、ホワイトアークの面々も大半が生き残り、カサレリアで新たな生活を始めるという、戦いの結末とその後がしっかりと描写。敵味方ともに多大な犠牲が出、ラスボスに当たるカテジナは障碍者になりながらも生存という、決してウッソたちの完全勝利ではない状況でしたが、そのラストはどこか美しさを感じるものでした。なぜだろう?これが、『V』という作品の持つ意味、そして魅力なのでしょうね。
宇宙へ昇ろうとするエンジェル・ハイロゥを背景に、戦闘を続けるウッソとクロノクル。何度か窮地に立たされるウッソでしたが、そのたびにオデロたち仲間のアシストが彼を救い、クロノクルは着実に追い詰められていきます。同じ頃、ズガン艦隊は残存戦力で総攻撃を賭けようとしますが、その進路を分離したエンジェル・ハイロゥのかけらが妨害。さらに、艦橋を破壊されたはずの戦艦ジャンヌダルクが、意志を持ったかのように特攻を続け、その爆発に巻き込まれる形でズガン艦隊は全滅するのでした。V2ガンダムに対し、決して性能面では劣らないリグ・コンティオ。しかし、それを使ってもなおクロノクルが追いつめられたのは、ウッソの強さや彼の仲間たちのアシストもそうですが、何より自身の人間としての弱さが原因だったのでしょう。ウッソが指摘している通り、クロノクルは弱い一面(相手に優しかったり、いざという時の決断が遅かったり等)があり、それをカバーすることが今までできていなかった。それがカテジナの迷いや自分自身のスキを作り出すことになった…と言えるのではないでしょうか。そんな彼らの戦いの一方で、全滅してしまっていたのがズガン艦隊。モトラッド艦隊と同じく、たった1隻の艦の特攻の前に散っていきます。このシーンでは、戦艦ジャンヌダルクが意志を持ったように(おそらく、ムバラク艦長たちの魂か)動いているのもそうですが、それより強烈に印象が残るのが、エンジェル・ハイロゥのかけらがぶつかってきた際に、ズガン艦隊の艦橋の窓にへばりつく真っ赤なしぶき。クルーたちは「血ではない!」って言ってたけど、あれは間違いなく…。
ウッソ「クロノクル!あなたの弱さが、カテジナさんを迷わせたことが、まだわからないんですか!?」
シャクティを救わせるため、そしてクロノクルと決着をつけさせるため、ウッソをエンジェル・ハイロゥへと先行させたオデロたち。それを追うようにカテジナのゴトラタンが出現し、これにオデロのガンブラスターが応戦します。彼はかなりいい攻撃を仕掛け、カテジナをあと一歩のところまで追い詰めますが、エンジェル・ハイロゥから放たれた光のせいか、最後の一撃を繰り出すことができず、逆にカテジナからのカウンター攻撃を食らい、ガンブラスターとともに爆死してしまいます。カテジナのゴトラタン相手に、オデロのガンブラスターはかなり奮闘。エンジェル・ハイロゥの光もあり、このままいけば本当に倒せそう…というところまで行きますが、そこでとどめを刺せずに返り討ちに遭い戦死してしまいます。オデロの死はとても悲しいし、「なんであそこでとどめを刺せなかったのか」と言いたくなりますが―あそこで攻撃を躊躇した、優しさが出てしまったのは、彼らしさの表れなのかなとも感じました。いつの間にか戦争生活に染まりきっていたけども、心までは染まっていなかった。それが彼の死につながりましたが、同時に最後の純粋性を象徴でもあったといえるでしょう。
オデロ「母ちゃん、俺のことほめてくれるのか?父ちゃん、ずっと俺のこと嫌い…嫌いじゃなかった?本当かよ―」
オデロの死を直感し、より戦闘に思いと力が入るウッソ。対するクロノクルも、最後の攻撃と言わんばかりに、強烈な接近戦を仕掛けてきます。両者武装がどんどん破壊されていく中、その決着をつけたのは、V2ガンダムが広げた光の翼でした。ウッソとクロノクルの戦いは、特殊な武器や技ではなく、今までウッソが使ってきた光の翼で勝敗が決まることに。こうした通常技で決着がつく時点で、クロノクルのはかなさが表現されていますが、その後の彼の死にざまが、よりそのはかなさと虚しさを強調してくれています。彼、死んだとわかっている姉の女王マリアに助けを求めながら、エンジェル・ハイロゥのかけらに思い切り頭をぶつけて死んでいくんですよね。下手に火に焼かれたり爆発に巻き込まれたりするよりも、生々しい最期でした。
クロノクル「姉さん…マリア姉さん、助けてよ。マリア姉さん!」
ズガン艦隊と別行動をとっていたカガチは、再度エンジェル・ハイロゥの中心部へ。キールームの様子を見るのが当初の目的だったはずですが、いつの間にかその足は女王マリアの玉座へと向かい、彼女の幻影を見て錯乱していきます。そうした中で、エンジェル・ハイロゥが中心部を残して、各かけらがすべて分離したうえで次々に合体。それの激突による爆発に巻き込まれ、カガチは死亡します。一方、同じくエンジェル・ハイロゥのかけらに着地していたウッソは、接近してくるゴトラタンを視認。降伏するそぶりを見せる彼女に対し、自らもコクピットから出て抱き合いますが、そのスキを突かれてわき腹を刺されてしまいます。ベスパの主要幹部は全員死亡し、女王マリアもとうに死んでいることから、その一般兵はじょじょに投降。それでもカテジナは、クロノクルの弔い合戦として、ウッソにこれまで以上に執拗に戦いを挑んでいきます。彼女の目的は、V2ガンダムを倒すことからウッソ自身を殺すことへと少し変化しており、そのためには騙し討ちで攻撃するという卑怯な手も使用するほどに。もう堕ちるところまで堕ちてしまったかという感じです。しかし、こうした騙し討ちに負けるウッソではなく、またカテジナのゴトラタンによる攻撃も、エンジェル・ハイロゥのかけらの予想外の動きにより失敗。エンジェル・ハイロゥから発せられるシャクティの祈りが、ウッソを救ったのでしょうか―。
奇跡的にカテジナの攻撃を回避し、応急処置のうえ再びシャクティを救おうとするウッソ。当初はエンジェル・ハイロゥの破損個所から内部に侵入しようとしましたが、オデロたち死んでいった仲間たちの導きに従うにつれ、シャクティを救出する前にやるべきことがあると認識します。やがて彼がたどり着いたのは、エンジェル・ハイロゥの別のかけらの中で待ち伏せしていたカテジナでした。渾身の一撃を放ってくる彼女に対し、ウッソはV2ガンダムのミノフスキー・ドライブユニットの出力を全開にし、光の翼のパワーでそれを反射。これによりエンジェル・ハイロゥそのものが崩壊をはじめ、ゴトラタンもその中に巻き込まれていきます。シャクティの生存は絶望的かと思われましたが、ウッソは空の上で、光に包まれて浮かぶ彼女を発見するのでした。死んでいったものの魂に導かれ、最終決戦を迎えるというのは、『Ζ』を想起させる展開。『V』の場合、ウッソが向かった先に待っていたのは、ボロボロになりながらも彼を倒そうとするカテジナのゴトラタンでした。キャノン・ユニットを構えて攻撃する気満々の彼女に対し、ウッソはノーガード戦法で応戦。怒った彼女がビームを発射した瞬間、それを光の翼で受け止め、さらに防御力を生かして全方位に拡散させ、それによりエンジェル・ハイロゥを崩壊に追い込みます。ここでの光の翼は、皆の思いの詰まった渾身の技であり、表現にも力が入れられていてGood。本当に、V2ガンダムは「人と人とをつなぐモビルスーツ」だったんだなぁ。その後、四散したエンジェル・ハイロゥの中で、ウッソはシャクティを捜索。生存は絶望的かと思われましたが、光に包まれている彼女を発見し、救出します。彼女がなぜ生きて帰ってこれたのか?それはきっと…サイキッカーたちの、ひいてはエンジェル・ハイロゥそのものの意志が、彼女を守ったからではないでしょうか。
ウッソ「…ガンダムよ、天に昇れ!」
戦いが終わって、数日後。ウッソたちはカサレリアへと戻り、オデロたちの墓を作って、そこで暮らし始めました。墓参りをする彼らとは別に、川で洗濯をしていたシャクティは、目の不自由な1人の女性(=カテジナ)と出会います。壊れた部品を取り換え、目的地へと送り出したシャクティは、ウッソたちと合流後、降りしきる雪を見つめて涙を流すのでした。本作のラストで描かれるのが、カサレリアで平和な生活を始めるウッソたちの姿。それと同時に、実はカテジナが重度障害を負いながらも生存していることも明かされます。「ウッソたちの仲間の多くの命を奪ってきたカテジナが、なぜ生きているのか」という指摘も見受けられますが、個人的にはこの末路は十分ありかなと思いますね。“死”だけが、罪を償うこと、あるいは罪を清算することにはつながりませんから―。また、このシーンもう1つ気になるのが、シャクティがカテジナに気づいていたかどうかということ。これは私としては、割と早い段階で気づいていたのではないかなと思います。途中からシャクティのカテジナに対する態度がそっけなくなっていること、そしてウッソと合流したのち、降ってくる雪を見て涙を流していることが、その証拠と言えるでしょう。カテジナの姿を見て、変わり果てた彼女と、そしてそんな彼女を作り出してしまったザンスカール戦争に、深い悲しみを抱き、あえて「カテジナさんですか?」と訊かなかったのでしょうね。かつての敵に、そこまで慈悲を抱くかって?いやいや、シャクティはそういう女の子なんですよ。
シャクティ「どうしました?」
カテジナ「いえ。ね、冬が来ると…わけもなく、悲しくなりません?」
シャクティ「…そうですね。」
『機動戦士Vガンダム』。これは、戦争に巻き込まれた少年少女たちが、死と困難を乗り越えて未来をつなごうとする姿を通して、人類へのエールを送る作品である。
…こうして、『V』の物語は完結となりました。
次回は総括として、改めて『V』を振り返ってみることにしましょう。
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☆ガンプラ Pick Up!
『Vガンダム』に登場したモビルスーツのガンプラの一部を、ピックアップしてみよう!
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