今回は、『機動新世紀ガンダムX』の感想記事第13回目です。
いよいよ、『X』の物語は今回で最後。その結末は、「ニュータイプなどという人間はそもそも存在しない」という、かなり衝撃的な考え方が提示され、ただの人間として戦争の中で奮闘するガロードたちの姿が描かれました。ニュータイプが存在しないとはどういうことなのか?そして、ガロードたちの掴み取った未来とは?その詳細を、ともに追っていくことにしましょう。
なお、前回(第34~36話)の感想記事は↓コチラです。
bongore-asterisk.hatenablog.jp
第37話「フリーデン発進せよ」
1996年12月14日放送
登場した敵他:クラウダ、ジェニス(宇宙用)
「ニュータイプやオールドタイプと言った垣根を越えて、真の平和を求めてください。」
STORY:宇宙革命軍が地球方面へ針路をとり、また新地球連邦軍が宇宙へと飛び立ったことから、両者の開戦はいよいよ時間の問題となった。戦争が始まることを不安がるガロードたちだったが、その中でも、まだ希望を捨ててはいなかった。翌日、ティファが突然昏睡状態に陥ったという知らせを聞いて、慌てて病室に駆け付けるガロードたち。実は彼女は、眠りの中で、ある存在と出会っていた。その正体とは何か?そして、目覚めたティファの願いをもとに、ガロードたちは、再び宇宙へと飛び立つ!
いよいよ、新地球連邦軍と宇宙革命軍の間で戦争が勃発し、15年前の再来を予感させる一編。しかし、戦闘描写は次回以降にお預けとなり、戦争が起こるのが必至という状況下でのガロードたちの葛藤、そして感情の発露に、描写の重きが置かれていました。各メンバーたちが恋心を表すのは、やや急すぎる印象もありますが、「戦争がもうすぐ始まって、お互いどうなるかわからない」という状況下であることが、その違和感を軽減してくれていました。
ザイデル総統は自ら出撃し、宇宙革命軍を地球方面へと進軍。それを捉えた新地球連邦軍側も、ブラッドマン卿が自ら出撃し、宇宙へと向かいます。そのことを傍受していた、反政府組織経由でそれら情報を知ったガロードたちは、再び戦争が起きてしまうのかと暗い顔に。意気消沈する彼らを、何とか鼓舞しようとするパーラでしたが、そんな彼女に対し、トニヤたちは戦後地球で起きた出来事を語り始めるのでした。最終回まで残り2話ということもあり、いよいよ新地球連邦軍と宇宙革命軍の全面衝突を予感させるシーン(両陣営の描写)が印象に残る、Aパート前半。そうしたシーンと同じくらい、いやそれ以上に力が入れられていたのが、トニヤたちがパーラに対して語る、戦後の地球の惨状でした。このシーンで、トニヤたちが初めて、戦後直後の地球の状況を明確に語る形に。戦後直後の地球は、約7年間太陽光が降り注がない死の大地であり、その後も異常気象や治安悪化等の状況が重なり、トニヤたちは今まで決して楽ではない生活を強いられてきたことが判明します。よくよく考えてみると、登場人物が、戦後の地球の一般市民目線での状況をここまではっきり語るのって、今回が初めてですよね。明るく振る舞っていたトニヤたちにも、暗い過去があったんだなぁ。
ランスローが、ニコラから送られてきたメッセージを確認していた頃、地球・北米大陸は夜。戦争がはじまり、いつ死んでもおかしくない状況がすぐ目の前まで来ていることを悟った、ガロード・ウィッツ・ロアビィは、それぞれ自分の思う人のところへ向かい、その思いを伝えます。彼らの中で、明確な答えをもらえたのはガロードのみ。ティファとの思いが強くなる中、2人は―。宇宙での新地球連邦軍と宇宙革命軍の戦争の開戦まで、秒読み状態となるAパート後半。特段描写を挟まずとも、そうした状況はガロードたち側も視聴者側もわかっているため、ここでは“戦争”を前にした、ガロードたちの行動の描写に重きが置かれていました。ウィッツはトニヤに、ロアビィはサラに気があったことは、以前からうっすら描かれていましたが、いよいよ今回は、2人が意を決して大胆な行動に出ます。自分の恋心を相手に伝える際の振る舞い方が、それぞれキャラにマッチしてていい感じ。ウィッツの純粋でストレートな感じもいいけど、ロアビィのカッコつけながらも自分の意思をハッキリ伝える感じも、いいよね…。そんな2人が、相手から明確な答えが得られなかった一方、最もいいムードとなっていたのは、ガロードとティファ。彼らはお互いそこまで多くを語らず、段々と近づいていき、やがてキスをするまでに至ります。ガロードとティファがもうカップル同然の関係というのは、視聴者も明らかにわかっていたので、ここでしんみりじっくり2人が近づいていくシーンを魅せてくれたのは、グッと来たなぁ。そしてこのシーンで、相手に対してより積極的な発言をしているのが、ガロードではなくティファであるところが、これまた興味深いです。
ガロード「たとえ、地球がメチャメチャになっても、俺…ティファのこと、守ってみせる。」
ティファ「…私も、何が起きても、ガロードのそばを離れない!」
翌朝。昨夜まで特段変化が見られなかったティファが、昏睡状態に陥り目を覚まさなくなる事態が発生。テクスの診察でも原因は不明であり、ガロードたちは、不安に駆られます。彼女が昏睡状態に陥っていたのは、その眠りの中で、D.O.M.E.と接触していたから。その意思を初めて知ったティファは、彼が存在する月面にすべての答えがあると確信し、月行きを強く進言します。Bパート前半では、Aパート後半のムードをつんざくように、ティファが昏倒するというアクシデントが発生。その原因は、過去にもあったニュータイプの力を使いすぎた等ではなく、精神世界の中でD.O.M.E.と接触していたからでした。ここ数話で、名前のみ登場していたD.O.M.E.が、初めて劇中に登場。光の球体となっている彼は、ティファに対して自分の意思を伝えます。この展開で秀逸なのが、「ティファが純粋なニュータイプであるためD.O.M.E.と接触できた」という構成になっているのはもちろん、そのD.O.M.E.によって月に導かれることにより、「ガロードたちが一刻も早く宇宙へ行かなければならない状況」を作り出している点。このD.O.M.E.の話がなくとも、ガロードたちは宇宙へ行こうとしていましたが、D.O.M.E.の介入により、物語の展開を速めているのがGoodです。
地球攻撃前にファーストニュータイプの力を確保したいザイデル総統は、月へと針路を変更。それを察知し、彼の狙いがD.O.M.E.であると悟ったブラッドマン卿もまた、新地球連邦軍を月へと向かわせます。同じ頃、カリスのムチャもあって、ガロードたちは、何とか宇宙戦艦1隻を確保。カリスによって「フリーデン」と名付けられたそれに乗り、ガロードたちは、再び宇宙を目指します。最初は、カリスを通じて反政府組織とキチンと交渉して、宇宙戦艦を借りようとしていたガロードたち。しかし、反政府組織はあくまでも新地球連邦軍と対立する組織であり、新地球連邦軍と宇宙革命軍の戦争に介入しない姿勢を見せ、話が遅々として進まないことから、最終的にカリスが強行突破して宇宙戦艦を拝借(半ば強奪)。それに“フリーデン”と名付け、ガロードたちは宇宙へと向かいます。終盤のカリスの大胆な行動は、「多分そうするんだろうな」と予想できたものの、本当に彼がそれをやってのけてしまったことに驚かされました。だってさ、フォートセバーン時代の彼って、そんな危ない橋わたるタイプじゃなかったじゃん?カリスもガロードたちとの出会いを通じて、いい意味でかなり変わったんだなぁ。そんなカリスの尽力により、再び宇宙へ出たガロードたち。ですが、時同じくして、新地球連邦軍も宇宙革命軍も、D.O.M.E.を狙って月へと針路をとっていました。さて、D.O.M.E.に最初にたどり着くのは、誰だ―!?
第38話「私はD.O.M.E. …かつてニュータイプと呼ばれた者」
1996年12月21日放送
登場した敵他:ガンダムヴァサーゴ、ガンダムアシュタロン、ドートレス・ネオ、ドートレス、バリエント、クラウダ(ランスロー・ダーウェル専用機)、クラウダ、オクト・エイプ
「もしかしたら、未来は…この世界に生きる人々の数だけ、あるのかもしれませんね。」
STORY:新地球連邦軍も宇宙革命軍も、ともに目指していたのは、月面基地に存在するファーストニュータイプ:D.O.M.E.の力だった。両軍が、D.O.M.E.の放つビットモビルスーツの攻撃に苦しめられる中で、ガロードたちは、サテライトシステムを使って真っ先に活路を開く。そんな彼らの前に立ちふさがったのは、フロスト兄弟だった!ニュータイプへの憎悪を爆発させ、ガロードたちに襲い掛かってくるフロスト兄弟。彼らとの戦いの行方はどうなるのか?そして、ガロードたちを自らの場所へ招く、D.O.M.Eの真意とは?
新地球連邦軍と宇宙革命軍の全面戦争、開始!最終回前後編の前編に当たる今回は、ガロードとフロスト兄弟の激しい戦闘を中心に描写。そしてこれを通じて、彼らの持っていた憎しみや狂気のすべてが、初めて明かされることになりました。カテゴリーFの烙印を押されて以降、自分たちの力を認めなかった新地球連邦軍、そして世界に憎悪を抱くようになったというフロスト兄弟。そこには同時に、驚くほどの自分自身の力への過信がありました。彼らもある意味、ニュータイプという言葉、そして力にとらわれすぎた、オールドタイプと言うべき存在だったんだなぁ…。
フリーデンを航行させ、とうとう戦闘宙域に差し掛かるところまで来たガロードたち。帰ってこれないかもしれない戦いにその身を投じるにあたり、彼らは皆、この戦争が終わったその後のことを考え始めます。大人たちが、まず目の前の戦いを乗り越えることを優先しようとする中、ガロードら戦後の人間(少年少女)たちは、その先にある未来に希望を抱こうとしていました。序盤では、宇宙に出たガロードたちの様子が描写。ここで絶対に見逃してはならないのが、先述の通り、ジャミルたち大人が「今この戦いを乗り切るのに精いっぱい」の旨言って“今”に重きを置いているのに対し、ガロードたち子供は、「世界をまわって見たことない景色を見たい」等と、戦いの終わったあとの“未来”に重きを置いている点です。生きるか死ぬかの瀬戸際の状況であるため、どちらの考え方も一理あるものですが、ガロードたち側の考え方のほうが、純粋で、かつ「未来はより良くなるだろう」とぼんやりながら信じていることに、一種の希望を感じられてGoodでしたね。ジャミルたちのほうが確かに現実的な考え方なんだけど、なんと言うか…「それ以外にも考えるべきことがあるんじゃない?」って思っちゃうんだよなぁ(とはいえ、大人である管理人が、いざ同じ状況に置かれれば、やっぱりジャミルたちと似た考え方をしちゃうんだろうけど)。
いよいよ戦闘宙域に入り、新地球連邦軍と宇宙革命軍の激しい戦闘を目の当たりにするガロードたち。彼らは、わざとサテライトシステムを起動し、ガイドレーザーの照射されるさまを見せることで、両軍をひるませ、月への針路を確保します。これをよしとしないフロスト兄弟は、小隊を引き連れて妨害。ジャミルたちは、襲い掛かるドートレス・ネオやバリエントの大群に苦しみながらも、ガロードとティファのガンダムDXを、さらに月方面へと向かわせます。Aパート後半より、いよいよ新地球連邦軍と宇宙革命軍の本格的な衝突が描写。彼らが激しい戦いを繰り広げて、月面への活路を開こうとしていたのに対し、ガロードたちは、ツインサテライトキャノンのシステムを利用することで、一切の犠牲を出すことなく、真っ先に月面への道を開きます。ガロードたちは、ハナからツインサテライトキャノンを使う気などさらさらありませんでしたが、それをチラつかせれば、両陣営ともにビビって周囲から離れるであろうと読み、こうした作戦を展開。結果、彼らの読み通り作戦は成功。この一連の流れは、鮮やかであると感じると同時に、かつてカトックが遺した「過ちは繰り返すな」という言葉を、ガロードはまだキチンと覚えて実行しているのだなと実感させてくれました。こうして、一気に月面へと近づくガロードたちでしたが、先程のツインサテライトキャノンのガイドレーザーがブラフだと気づいた新地球連邦軍が、追撃を開始。ウイッツやロアビィ、カリスがこれに応戦し、ガロードたちを先行させます。
ガンダムDXが先行しているのを見逃さず、執拗に攻撃を仕掛けてくるフロスト兄弟。大型ビームライフルや、大型ビーム・ソードを失う中、ガロードは彼らに、過剰なまでにニュータイプを憎み戦争を引き起こそうとする理由を問います。それに対しハッキリと回答したフロスト兄弟でしたが、それはガロードやティファにとっては到底受け入れられる者ではなく、ガロードはガンダムDXの拳で、ガンダムヴァサーゴやガンダムアシュタロンに鉄拳を食らわせるのでした。Bパートより、ガロードのガンダムDXと、フロスト兄弟のガンダムヴァサーゴ&ガンダムアシュタロンの全面対決がスタート。それと同時に、ついにガロードたちは、フロスト兄弟が一連の戦いを引き起こした真の理由を知ります。フロスト兄弟が、あらゆる者に戦いをけしかけ、そして新地球連邦が内で成り上がっていったのは、ニュータイプに等しい能力を持つカテゴリーFの自分たちこそが世界を支配すべき存在であり、両陣営間で戦争を起こさせて現代秩序を破壊することで、自分たちの思い通りの世界を作ろうとしていたため。その考え方はあまりにも身勝手であり、そして壮大なものでした。最初は、カテゴリーFの烙印を押したヤツらが許せず、見返してやろうとしていた程度だったのに、いつの間にか目的が異常なまでに肥大化していたフロスト兄弟。自分たちの作戦が上手く行ったり、新地球連邦軍がどんどん宇宙革命軍との戦争に突き進んで行く中で、自分たちの力への過信と、狂気に取り憑かれてしまったのでしょうね。そんな彼らを、ガロードが受け入れられるはずがなく、武器を失いながらも応戦。最後は、その鉄拳でガンダムヴァサーゴもガンダムアシュタロンも押し返し、月面へとさらに近づいていきます。
ガロード「誰だって、ツラいことや、悲しことがあるんだ!そんな勝手なことで…世界を滅ぼされてたまるか!!」
フロスト兄弟の攻撃を潜り抜けると、D.O.M.E.のビットモビルスーツが出現。ところが、新地球連邦軍や宇宙革命軍のときとは違って、全く攻撃はしてこず、ガロードたちを招き入れるように、月面基地へと誘導します。やがて、D.O.M.E.と対面したティファは、真実を知るべき人間たちをここに招きたいとして、ジャミルたちやランスロー、ブラッドマン卿やザイデル総統らをもここに呼び寄せます。一方でフロスト兄弟たちは、かたくなにその誘いに乗ろうとはしませんでした。月面にあるということがバレているD.O.M.E.が、今まで新地球連邦軍の工作も、そして宇宙革命軍の攻撃にも耐え抜いて来たのは、異常なまでに強固な、ビットモビルスーツによる防衛システムがあったから。両陣営ともに、その攻撃により多大な被害を出す一方、事前にD.O.M.E.とコンタクトをとっていたティファ、そして彼女を連れているガロードは、まるでビットモビルスーツに案内されるかのように、なんの抵抗も受けずに月面へも降り立ちます。そして、D.O.M.E.まであと一歩というところまで近づいたティファは、ニュータイプの真実を知るべき者として、ジャミルたちフリーデンの仲間やランスロー、ブラッドマン卿やザイデル総統、そしてフロスト兄弟を招きたいと主張し、D.O.M.E.はその思いに応えます。ここで、ティファがそうした主張をしたということが直接的に描写されていないのが面白いところですが(シーンのつなぎ方でそれが匂わされる)、それ以上に興味深いのは、彼女の意思を受けてD.O.M.E.によって派遣され、そのD.O.M.E.のもとへ招待しようとするビットモビルスーツたちに対し、フロスト兄弟のみが抵抗していた点。彼らはニュータイプにかかる真実を知る機会があったにも関わらず、それを自ら放棄し、戦いへと突き進んで行く形になっており、「真実を知ることを自ら拒んだ者たち」という描かれ方をしていました。その行動からだけでも、このお話における彼らのそうした立ち位置がよくわかるのですが、ビットモビルスーツの招待を否定するセリフを言わせることで、本来のターゲットである子供たちにもそのことがわかるようにしているのがGood。フロスト兄弟、ここで素直にD.O.M.E.の意思に従っていれば、ガロードたちとの和解の未来もあったかもしれないのになぁ。こうしたことを経て、ついに一同に会してD.O.M.E.と対面するガロードたち。さあ、彼から明かされるニュータイプの真実とは何なのか?次回へ続く―!
第39話(終)「月はいつもそこにある」
1996年12月28日放送
登場した敵他:ガンダムヴァサーゴ、ガンダムアシュタロン、ドートレス・ネオ、クラウダ
「たとえ未来が見えたとしても、それを現実のものにしようとしなければ、それは手に入らない。」
STORY:人類初めてのニュータイプであるD.O.M.E.。彼に対面したガロードたちは、恐るべき真実と、彼のニュータイプに対する考え方を知る。そして、全てを知り月面基地の外へ出たガロードたちを待っていたのは、引き続き狂気にかられたフロスト兄弟たちの、依然として執拗な攻撃だった!ブラッドマン卿もザイデル総統も彼らの手により散る中で、ガロードは、「過ちは繰り返させない」という強い意思で、フロスト兄弟と最後の戦いに挑む。勝つのはガロードの意思か?それともフロスト兄弟のサテライトランチャーか?今、切り拓く力を持つ少年少女たちの心が、新たな時代への扉を開く!
いよいよ『X』の物語も最終回。他作品以上に、全編にわたって「ニュータイプ」がストーリーの中核の1つとなってきましたが、その結論は、「ニュータイプなど最初からこの世には存在しない」という、驚愕の結論でした。この一言だけ見ると、かなりの暴論に感じますが、そこにはちゃんと深い意味が存在。そしてその後、フロスト兄弟との最終決戦と、その先にある未来まで、キチンと描かれていました。わずか1話の間に、これだけの量をちゃんと描ききったのは秀逸。そして何より、『X』は、やっぱり“優しさ”あふれる物語だったんだなぁと実感しました。
前回、ティファの願いとD.O.M.E.の意思により、D.O.M.E.のもとへとやってきたジャミルたち。彼らはD.O.M.E.の言葉を聞いた直後、一時的に意識を失います。同じ頃、各陣営が月面基地に入っていったことを確認したフロスト兄弟は、密かに準備していたサテライトランチャーを使用して、宇宙革命軍側を攻撃。こうして、かりそめの休戦協定は破られ、再び月周辺は、戦闘宙域と化してしまいます。Aパート前半では、D.O.M.E.と対面しているガロードたちメインキャラ側と、宇宙にいるフロスト兄弟とその他キャラとの対比が描写。前者が、最初こそ小競り合いをしながらも「とりあえずD.O.M.E.の話を聞いてみよう」でまとまるのに対し、後者はフロスト兄弟がわざと攻撃を仕掛けたことにより、ブラッドマン卿とザイデル総統が、それぞれせっかく出していた休戦命令を、兵士たちは破り、意味のない戦いが再び起きてしまいます。宇宙側の描写は、フロスト兄弟が明らかに悪いと感じると同時に、再び戦ってしまう両陣営の兵士たちに憐れさを感じるのが、なんとも言えないところ。そういやフロスト兄弟、サテライトランチャーなんてゴツい武器、いつ開発してここに持ってきてたんだろう?
D.O.M.E.の力により、未知なる空間へと一斉にいざなわれたガロードたち。そこで彼らは、D.O.M.E.の語るニュータイプの真実と、彼のニュータイプへの考え方を知ります。「ニュータイプなど、最初から存在しない」。驚くべき結論に、大人たちは各々ショックを受ける一方、D.O.M.E.自身は、ガロードをはじめとする戦後の人間たちに、未来を託し、全員を解放するのでした。Aパート後半でついに語られる、ニュータイプの真実。『X』の登場人物の多くが信じていたニュータイプとは、確かに超能力者であるのは事実ですが、それだけであり、人を導いたり世界を変えたりするような、神のような力は持ち合わせていない人間。ゆえに、登場人物の多くが、想像していたニュータイプなど、最初から存在しなかったのだというものでした。文章で端的に表現しようとすると、難しいものがありますが、要するに『X』におけるニュータイプだと思われていた人は、偶然人知を超えた能力が使え、そしてビットモビルスーツが操れただけの、ただの人間。ただの人間であるため、当然世界を変えたり人々を導いたりという力まではなく、“ニュータイプ”とは『X』の世界の人間たちが作り出した幻想だった…というオチでした。「ニュータイプなど最初からいない」というのは、かなり大胆な結論。「超能力を使える人間が“ただの人間”なのか?」という反論も考えられますが、私はこの『X』の、ニュータイプという概念に対する繊細な考え方を、支持したいなと思いますね。確かに、現実世界に置き換えれば、(その技が全て真実であると仮定して)スプーン曲げや透視能力を持ついわゆる超能力者のことを、確かにその力は人知を超えていると感じる一方、「この力を持つから世界を変えてくれる!」なんて思いませんもんね。『X』におけるニュータイプは、人々の超能力者への期待と、戦後の荒廃した世相の中で信じたかった希望が生んだ、悲しい幻想だったんですね―。このようなことを聞かされて、ニュータイプの存在信じていたジャミル含む大人たちは、強い衝撃を受け絶望。一方で、今までニュータイプとされていたティファは、素直に現実を受け入れ、その表情に暗さは全くありませんでした。ここでティファは、「ニュータイプはただの超能力者=超能力を持つこと以外はガロードと同じ人間である」という真実をしれたことで、初めて自分を受け入れて吹っ切れたのでしょう。今まで、ニュータイプとされる力を持っていたせいで、散々な目に遭い続けてきたからね…
D.O.M.E.「ガロード、ティファ。そして皆!古い時代は、これで終わりだ。」
ガロードたちが月面基地から脱出すると、そこは再び戦場。ブラッドマン卿とザイデル総統は、休戦協定が破られていることに驚きますが、そこへフロスト兄弟のサテライトランチャーが飛んできて、あっという間に消滅してしまいます。両軍の頭領がいなくなったことで、泥沼化し、フロスト兄弟の思惑通りの状況になっていく戦局。ガロードは、過ちを繰り返させないため、そして戦争を終わらせるため、堂々とフロスト兄弟の前に立ちはだかり、自分の意思でツインサテライトキャノンの引き金を握ります。両者の戦いの結末は―!?Bパート前半では、フロスト兄弟との最終決戦が描写。D.O.M.E.のもとから帰ってきたブラッドマン卿やザイデル総統が、旗艦もろともフロスト兄弟にあっという間にやられてしまうのに対し、ガロードはガンダムDXで最後まで粘りきり、初めて自分の意思でツインサテライトキャノンを発射することを決意し、フロスト兄弟の野望を完全に打ち砕きます。Aパートのほぼ全てを、ガロードたちとD.O.M.E.の語りに割いたことから、Bパートにおける戦闘シーンの描写は、短めかつコンパクト。しかし、フロスト兄弟がサテライトランチャーを発射するかもしれないという緊張感、そして、それに対しガロードがどう打って出るかというハラハラ感が、時間の短さを全く感じさせませんでした。戦いの結果は、両者相討ちとなって、機体は大きく損傷。一時的に全員生死不明となります。ああ、フロスト兄弟とは、最後までわかり合うことができなかったなぁ。それができそうな機会は、何度もあったのにね―。
戦いから半年後、地球と宇宙間では和平協議会が設置され、まだ各地で小競り合いが絶えないものの、共に手を取り合って平和を築いていこうとしていました。一方、ガロードたちは、フリーデンを離れ、各々の未来へと進むために、それぞれ別の道へ。彼らの顔に、不安感は全くなく、この先拓かれていくであろう道を、しっかりと見据えていました。終盤では、しっかりと時間を割いて、戦いの半年後の様子が描写。カリスはフォートセバーンに帰るところであり、ジャミルとサラ・ランスローは、和平協議会の各陣営側の代表の一員、ウイッツ・トニヤ・ロアビィはそれぞれ自由を謳歌しており、テクスは野戦病院の医師として勤務。キッドたちはパーラととにジャンク屋を経営し、そしてガロードとティファは、戦争中の発言通り、世界中を旅しているところでした。フリーデンのメンバーは、幸いにも全員生還。ロアビィのみ恋が破れた形になりましたが、それ以外のメンバーはほぼ穏やかな生活を手に入れており、ロアビィ自身にも後悔の念は全くありませんでした。フリーデンのメンバーが皆元気にしている時点で嬉しいんだけれども、それにさらにプラスして、ガロードたちが第1話でも登場した偽ニュータイプと出会い、「ニュータイプのことをよく知っている」と、明るくそして達観したように発言するのが、とてもグッときます。この一言には、ガロードたちの今までの思いや経験が集約されていると言っても過言ではないでしょう。偽ニュータイプたちにとっては?な発言でしょうが、我々視聴者にとっては、これ以上ないベストな言葉でしたね。そして、そんな彼らを遠くから見つめていたのが、フロスト兄弟。彼らが生きていることに驚きですが、なんとなくその背中から、もう今までのような悪事は働かないような気がしました。
偽ニュータイプ「ニュータイプって言葉、聞いたことあるだろ?」
ティファ「もちろんです!ね、ガロード?」
ガロード「ああ、よく知ってるよ。ニュータイプのことなら―。」
『機動新世紀ガンダムX』。これは、戦後の混乱の最中、未来を信じて精いっぱい生き抜いた、“ただの人間たち”の物語である。
…こうして、『X』の物語は完結となりました。
次回は総括として、改めて『X』を振り返ってみることにしましょう。
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『機動新世紀ガンダムX』の本編は、各種サイトで公式配信中!↓コチラもチェックだ!
☆ガンプラ Pick Up!
『ガンダムX』に登場したモビルスーツのガンプラの一部を、ピックアップしてみよう!
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