お前それ、ゾフィーにも同じこと言えんの?ver.2.0

主にウルトラマン・仮面ライダー・スーパー戦隊シリーズなどの特撮関係の話題等を扱っていこうと思います。

西鹿児島駅殺人事件

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降灰と、台風という二つの攻撃にさらされていても、夜が明ければ、西鹿児島駅は、平常どおり、駅としての機能を取り戻すのである。午前五時一〇分の、指宿枕崎線普通列車を皮切りに、五時三五分になれば、日豊本線のホームから、肥薩線経由の山野行きの普通列車が発車する。六時四五分には、今度は、鹿児島本線のホームから、博多行のL特急有明8号」が発車する。いや、発車させなければならないのである―。今回は、西村京太郎トラベルミステリーの1つ:『西鹿児島駅殺人事件』のレビューです。

 

上野駅殺人事件や長崎駅ナガサキ・レディ)殺人事件などに代表される、十津川警部シリーズの中でも「駅シリーズ」と呼ばれる作品の一種。西鹿児島駅は今でいう鹿児島中央駅のことであり、古くから鹿児島市、いや鹿児島県の代表駅として運行上の拠点となっていた駅でした。県庁所在地名を関する駅とは別の駅が代表駅になっているのは、山口県と同じですね。

 

 

 

STORY:国鉄分割民営化直前の1986年8月中旬。鹿児島市内で重大事件を起こした男:小西が刑期を終えて出所したのと時を同じくして、寝台特急「明星」51号の車内で、謎の女からラブレターをもらった男たちが次々と殺害された。その被害者の中に部下:田中刑事も含まれていたことを知った十津川警部たちは、九州・鹿児島へ飛ぶ。不穏な動きを見せる小西とその関係者たち。そして田中刑事たちを殺した犯人は誰なのか?台風と桜島の噴煙による降灰のダブルパンチを受けている鹿児島で、謎は深まっていく―。

 

物語の構成は、1人の犯人が連続的に事件を起こしていくという方式ではなく、特定の場所(=西鹿児島駅)を舞台に複数の直接的には関係ない事件が同時並行的に起こっていくという形式。そのため、1つ1つの事件は“ミステリー”としてはかなりシンプルなものになっており、謎解き要素はちょっと薄めになっています。

 

しかし、その分西鹿児島駅の駅員たちの奮闘や、同時並行で起きていくそれぞれの事件が生み出す緊迫感についての描写は濃密。西鹿児島駅の駅員たちが降灰&対策に四苦八苦する描写はドキュメンタリーを見ているような感覚になりましたし(もちろんある程度は脚色されているでしょうが)、事件についてはどちらも様々な事情により短期での決着が求められていたため、各キャラクターたちが常に動き回っており、読者を飽きさせないようになっていました。

 

「トラベルミステリー」のひとつというよりかは、西鹿児島駅の駅員たちの物語って感じでしたね。特定の駅を舞台に物語を展開しているので、そうなるのも仕方ないのかもしれませんが。

 

鉄道ファン的に結構ウケそうな要素もあるこの「西鹿児島駅殺人事件」ですが、今日に至るまで映像化の機会にはあんまり恵まれず(TBSの初期十津川作品くらいか)。十津川警部たちの活躍シーンが少ないこと、そして犯人により駅構内で爆破事件を起こされてしまうこと(映像として表現するにはお金がかかる)などが、その原因でしょう。というか、西村京太郎作品って結構鉄道施設が爆破被害にあうパターン多いよね。

 

 

 

「STORY:」でも書いた通り、時代設定が国鉄最末期であることから、旅情を感じるとともに当時の世間や国鉄職員たちの民営化に対する感じ方も読み取ることができる、この「西鹿児島駅殺人事件」。

 

ミステリー要素は薄いですが、興味がある方は一読する価値ありですよ。

 

 

 

 

 

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