今回のお話は、どれもやはり刑事ドラマ要素の濃いお話に。『西部警察』をはじめとするアクション刑事ドラマが再び活気を取り戻していたこの時期、ある程度そういった“煽り”を受けるのは仕方のないことだったのでしょうか。
第34話「公安官抹殺指令」
1980年1月14日放送
主な登場駅:東京駅
「俺たち鉄道公安官にとって、靴ってのはね、商売道具なんだよ!」
STORY:東京駅構内で、榊が射殺されたという情報が東京公安室に飛び込んできた。実際に射殺されたのは榊の名を騙った別人だったが、状況からみて犯人は榊の命を狙っていることは明らかのようだ。やがて犯人グループの攻撃は激しくなり、星野は被弾し榊は捕らわれの身に!犯人グループがそこまで執拗に榊の命を狙う理由は、いったい何なのだろうか―?
新年2回目の放送となったこの回は、今までの『鉄道公安官』とは明らかに違うテイストで作られた一編。『西部警察』をほうふつとさせるカーアクション、採石場で繰り広げられる果てしない攻防戦、そして車や小屋を実際に爆破!完全にアクション刑事ドラマのノリです
ベコベコにつぶれた靴を買い替えるため靴屋に寄り、かつ犯人側がまだ顔を知らなかったため難を逃れた榊。このつぶれた靴が、後半の展開で重要な役割を果たすことになるとは思いもしませんでしたね。
激しいカーアクションの末クラッシュ、敵の銃撃により被弾、満身創痍でも捜査を続行するなど、今回はかなり身体面でムチャをしている星野。演じる加納さんはこの数か月後から『西部警察』でレギュラー出演することになるので、今回に限っては星野公安官というより桐生刑事に見えますね。
最後は大量のパトカーとともに激しいカーアクションをや銃撃戦を行う、犯人と刑事たち。ですが星野をはじめとする公安官はやはり一発も発砲しません。ここに「あくまでもこの番組は『鉄道公安官』である」という制作陣の意地が感じられるような気がします。
ゲスト出演者は、当時に限らず刑事ドラマ等の作品で数々の悪役を演じてきた成瀬正さんと八名信夫さんが、主犯格である高林らを熱演。うーん、やっぱりこの人らは公安官の手におえる人じゃないよ…。
第35話「ちびっこ大捜査線!」
1980年1月21日放送
主な登場駅:東京駅、小田原駅、静岡駅
「僕は1年で母の日が一番嫌いだ。僕にはお母さんがいないからだ。」
STORY:古賀が無賃乗車の常習犯である純一少年に説教するさなか、大阪で銀行強盗を働いた2人組が東京駅に逃げ込んだとの通報が入ってきた。そしてその後、純一少年を送り出した直後に、博という男の子が東京駅から消えた!純一少年と博のドタバタ珍道中、銀行強盗の主犯格:田村の逃避行。やがて全く違う2つの事件は、意外なところでリンクする―!
無賃乗車の常習犯で、おまけに近所の子供にいたずらするようになってしまったやんちゃ少年:純一。最初はそういった負の面が描かれることで単なるクソガキのように感じてしまいますが、中盤以降純一少年の秘めていた想いなどを公安官たちが知っていくことで、純一少年が彼なりに抱えていた葛藤や悩みを知ることができます。
博と純一少年は東京から新幹線に乗り、本来降りるべきはずの小田原駅を通過して静岡駅で下車。そして東海道本線で金谷駅を経由し、大井川鐡道のSLに乗車します。このシーンなどでは「ホームタウン急行」がBGMとして流れており、純一少年たちの“旅”が楽しそうに描かれています。まあ、とはいえ実際はただの家出に近い冒険なんだけど…
銀行強盗犯の一件と純一少年たちの冒険がどのようにリンクするかと思えば、本当に「たまたま出会った」ことで1つになるというオチ。終盤の展開はありがちなものになりましたが、古賀公安官と純一少年の最後のシーンは、どことなく爽やかな、でも男らしいエンディングになっています。
ゲスト出演者としては、銀行強盗の一味の1人として大谷朗さんが客演。数多くの特撮作品にゲスト出演しストレートヘアーが印象的な彼ですが、今回は頭にパーマをかけており貴重な(?)姿を観ることができます。
第36話「新幹線・消えた美人画を追え」
1980年1月28日放送
主な登場列車:新幹線「こだま」号
「誰にだって夢がある。僕だってそうだ、最初から公安官をやろうと思ったわけじゃない。しかし今、公安官になったことで後悔はしていない。」
STORY:榊と古賀は突如、東京駅前のロータリーで沖一成という新進気鋭の版画家が轢き殺されるのを目撃する。そして同じ頃、小田原駅付近を走る新幹線「こだま」号車内で、貴重な版画が盗まれるという盗難事件が発生した。保険金はキッチリ支払われるようだが、なぜか捜査に協力しない関係者たち。謎が謎を呼び、事件が事件を呼ぶミステリー。実はこの事件、実はひとつの線でつながっていた―!
一見すると全く関連性のない2つの事件が、実は裏では1つにつながっているというミステリー仕立てのお話になっている一編。それぞれの事件を各公安官たちが担当することにより、メインキャストをバランスよく活躍させることに成功しています
事件自体は東京駅地下入口前と新幹線「こだま」号車内で起きているため、いわゆる鉄道公安官の管轄内での事件ではあるものの、公安官たちの捜査や主な活躍は周辺や関係者への聞き込み調査が中心。そのため、相対的に鉄道要素が薄く感じられてしまいます
中盤になると沖の妹が事件に介入し、第3勢力のような形で事件を引っ掻き回します。これがバラバラだと思われた事件を「何かウラがある」と公安官に思わせ、同時に銭谷たち犯人側を焦らせることになり、より両者のバトルを過熱させ面白くしていきます。
後半になると、榊と沖の妹の話がメインに。榊は沖の妹を説得するうえで「最初から公安官をやろうと思ったわけじゃない。」と語っています。榊が少年時代から国鉄に入職したかったことは既に第1クールで明かされていますが、あくまでも駅員業務等の志望で、公安官になる気はなかったということなのでしょうか?
最後は上野駅郊外の公園で事件が決着。沖の子供を抱いて沖の妹が新たな人生を歩むことを決意するエンドになっており、スッキリとお話がまとめられています。
ゲスト出演者には、のちに『爆走!ドーベルマン刑事』で小林公安官役の星正人さんとレギュラー共演することになる神保美喜さんが。また『冒険ファミリーここは惑星0番地』でレギュラー出演していた西川ひかるさんが、インパクトの強いおばさんを演じています。
今回はここまで。次回は、第37~39話ををご紹介予定です。
◎今日の動画紹介◎
今日ご紹介するのは、1960年12月公開の映画『ガス人間第一号』使用BGM「エンディング」です。
本編終盤、ガス人間である水野の最期に流れるBGM。憐れというべきかなんと言うべきか、その言葉にしにくい独特の悲哀を、このBGM画より盛り立ててくれます。
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