今回のお話は、どちらかと言えば純粋な刑事ドラマ向きのお話が多め。ですが、そこに鉄道要素が絡んだり駅の風景や様子を徹底的に事件のカギや舞台として盛り込んでいるのは、やはり『鉄道公安官』というドラマゆえの“意地”なのでしょうか。
第28話「スリからスッた公安官!?」
1979年11月26日放送
「俺、このままお前を死なせたくねぇんだよ。スリの足を洗わせて、真人間にさせなきゃ、俺嫌なんだ。」
STORY:榊はここ数週間、牧村伸子という女スリ師に手を焼いており証拠集めに苦労していた。そんな中、伸子はある思いからスリ師グループから金銭をスり元の持ち主のところへ返還したのだが、その直後持ち主が射殺されてしまった。目撃者である伸子は、捜査に協力するどころか、なぜかあちこちに榊を連れまわしてばかり。伸子はいったい、何を隠しているのだろうか―?
スリ師である伸子と榊の心の交流を描いた一編。当初伸子はなかなかウザったい女性に描かれていますが、彼女の心情描写のシーンを増やすことで、それが彼女の榊に対する強がりであることが窺えるようになっています。
物語が始まると唐突に始まる、榊が扮する宮本武蔵と伸子が扮する佐々木小次郎の一戦。実は榊の夢なのですが、史実とは反対に武蔵が待ちぼうけを食らった挙句小次郎に敗れるというオチになっています。これは伸子が「つばめ返しの伸子」という異名を持っており、また佐々木小次郎の得意技がつばめ返しだったことに引っ掛けたネタなんですね
伸子に振り回されながらも、楽しげにしている榊をうらやましく思う星野と古賀。古賀曰く、「中年男はああいう家庭の味に弱い」らしいけど…?
第29話「目撃者・C57とヤエモン」
1979年12月3日放送
主な登場列車:寝台特急「ゆうづる」、寝台特急「北星」、エル特急「はつかり」、寝台特急「あけぼの」、エル特急「やまびこ」、山手線103系普通電車、東北本線・高崎線113系普通電車、中央線103系普通電車
「東京・上野の街の朝は、動物園の動物たちのおはようの挨拶と、街の自由生活者の唯一の業務活動と、4時27分一番電車で始まる。」
STORY:上野公安室に応援に行っていた榊たちは、厄介な鉄道ファンの少年に説教する中で強盗事件に遭遇した。事件を目撃したのは、「C57(貴婦人)」のあだ名を持ち虚言癖のある沢田ミチと、「ヤエモン」のあだ名を持つホームレスだった。C57が勝手に犯人を追いかける一方で、なぜか犯人に関して口を堅く閉ざすヤエモン。彼が捜査に協力しない理由は、鉄道公安官への不信感か、それとも―?
東北地方への玄関口:上野駅とその界隈を舞台とした一編。序盤では榊がナレーションとして上野界隈の概要説明や発着列車の紹介を行っており、エル特急&ブルートレイン全盛期だった当時に思いを馳せることができます
事件のカギとなるのは、蒸気機関車に関するあだ名を持つC57とヤエモンの活躍。予告編ではC57の方がクローズアップされていますが、実際ストーリーでの要となるのはヤエモンの方でした。お互いの抱える背景もきちんと描写されています。
今回の事件の裏で問題となるのが、鉄道少年たちの暴走行為。今でも線路や駅などから物品を盗む「盗り鉄」が一定数いるようですが、ブルートレインブーム真っ盛りだったこの当時も似たような輩がいたようです。本当に、どうして「ヘッドマークや部品が欲しいのなら、どうして国鉄の即売会までお小遣い貯めて待てないんだ」ろうなぁ…?
終盤の犯人との駆け引きシーンは、青梅のつり橋(いわゆる「ダーマ橋」)でのロケ。古賀公安官役の赤木さんが、のちの『ゴーグルファイブ』を想起させるようなアクロバティックな危険アクションをこなしているのも注目です。
今回時々出てくるのが、「自由労務者」という単語。当時は「ホームレス」という単語がなかった一方で、「乞食」や「ルンペン」という単語が使えなかったから編み出された単語だと思われます。でも、空き缶あさりとゴミ拾いを「唯一の業務活動」と言っちゃうのもなかなか…。
ゲスト出演者には、『スーパーロボットレッドバロン』と『スーパーロボットマッハバロン』にレギュラー出演していた加藤寿さんがゲスト出演。また千石規子さんらがばっちり脇を固めており、ベテラン俳優が随所に活躍している一編にもなっています。
第30話「15歳・悪の罠」
1979年12月10日放送
主な登場列車:新幹線「ひかり」号
主な登場駅:上野駅、東京駅
「あなたはまだ子供だわ。だから法律からは逃げることができた。でも人間として、一人前の人間として、償わなければいけないことがあるはずだわ。」
STORY:ここ最近、東京公安室管内ではひったくり事件が頻発していた。その犯人は少年のようであり、おまけに驚くべき脚力を持ち風のように走り去ってしまうのだという。捜査の末容疑者と思われる少年が浮上する中、その犯行が次第に悪質化していることに気づいた榊たちは、その少年の背後に操っている“悪い大人たち”がいるのではないかと疑うが―。
当時問題になりかかっていた少年非行をテーマにしたお話。鉄道要素は「駅構内におけるひったくり事件」程度にとどめられており、もはや『鉄道公安官』というよりかは通常の刑事ドラマの一編と言っても過言ではないストーリーに仕上がっています
中学生とはいえ、当時は受験戦争が社会問題化する直前の時代。小学校時代からの友人が非行に走っていても、自分のことで精いっぱいなので相手に気をかけている暇がない―。そんな悲しい描写も取り入れられていましたね。
いつもは場を引っ掻き回すおてんば娘のような立ち位置出る島村泉は、今回は少年犯罪と向き合い、榊たちに対して自分の意見を積極的に発言する女性に。いつもとテイストが違うように感じますが、彼女が第3勢力のように発言することで、取り上げているテーマの難しさ、そしてそれによる榊たちの葛藤を描いているのが興味深いです
当初は心を閉ざしきっていた犯人である守少年も、反抗的だったものの被害者の1人が自殺未遂をしたことで心情に変化が。彼の脚力を利用し犯罪をさせていた“悪い大人たち”が、最後は彼の脚力により逮捕されるという構図になっているのはなかなか面白いです。
ゲスト出演者としては、守少年を操る“悪い大人”役として、当時刑事ドラマの犯罪者役の常連だった草薙幸二郎さんの姿が。また非行少年のたまり場となっている喫茶店のマスターとして、団巌さんが出演されています。
今回はここまで。次回は、第31~33話ををご紹介予定です。
◎今日の動画紹介◎
OPとEDは2年くらい前に紹介したような気がしますが、こちらは挿入歌。歌詞や音楽も相まって、かなり昭和特撮ソングのような雰囲気になっています。
一時期そこそこ流行った深夜特撮も、『牙狼』を残して今はめっきり現象。また90年代後半~2000年代のように深夜特撮をちょこちょこ制作してもいいと思うんですけどね~。
(ニコニコ動画非会員でも視聴できるニコビューアのリンクです)
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