今回は、『勇者特急マイトガイン』の感想記事第7回目です。
物語もそろそろ折り返し地点。今回より『マイトガイン』の中盤以降のメインの敵となるエグゼブが登場します。エグゼブの登場により、ウォルフガングら敵側の陣営にも変化が。今回以降のウォルフガングの物語上での動き方も、興味深いものになって行きます。
第19話「よみがえる戦国武将」
1993年6月12日放送
「貴様たちを、科学という名の神に生贄として捧げてやる!」
STORY:舞人が目撃した、暴走トラックの事故。その荷台には1人の少年がいた。舞人の家で目を覚ました少年は九条太郎清丸と名乗るが、どこか現実離れしていて戦国時代の風習と記憶を持っていた。それを執拗につけ狙うショーグン・ミフネと影の軍団。夜の街をロボが襲うとき、清丸の真実が明かされる!その非情な現実の前に清丸の取った行動とは!人の命をもてあそぶ敵を、動輪剣で叩き斬れ!
『マイトガイン』のお話としては珍しい(?)、テーマが重く涙を誘う一編。前半でちりばめられたクローン技術に関する要素が、後半明かされる清丸出生の秘密に収束。この流れがストーリーを面白くすると同時に悲哀を感じさせます。清丸の結末、子供としてはあまりにも衝撃すぎたなぁ
バイオテック社からの帰りに、ハイウェイでコントロールを失ったトラックを目撃した舞人。その直後事故を起こし停車したトラックにいたのは、重傷を負った身元不明の運転士と、なぜか荷台で大事に保護されている1人の少年でした。舞人はバイオテック社はバイオテクノロジーの研究に傾倒する会社であり、旋風寺コンツェルンに資金援助と協力を依頼してきた会社。このバイオテック社の存在自体はストーリーとは関連しませんが、今回のお話自体がどういうものをテーマにして進むのかということを知らせるヒントになっています。荷台にいた少年は、ただ荷台の中にいたわけではなく、チューブが大量に繋がれたカプセルの中で眠っている状態。この時点で、この少年がタダ者ではないということがうかがえますね
少年は舞人の手で家へと連れて帰られ、翌朝覚醒。突然真剣を抜いて暴れだしますが、舞人の説得で落ち着きます。彼は九条太郎清丸と名乗りますが、風貌も所作も戦国時代チック。そんな彼はいつの間にか舞人の家を抜け出してしまい、その出先で影の軍団に襲われるのでした。サブタイトル通りの戦国時代の少年:清丸。刀の腕は確かなようで、舞人の屋敷の関係者を威嚇し、出先で影の軍団に襲われた際はまともにやりあって立ち回るなど、なかなかの戦闘能力を見せてくれます。その一方で戦国時代の価値観や食事などを好み、これらにより清丸が単なる少年ではなく、「戦国時代と何か関係ある少年ではないか」と視聴者に予測させてくれます。視聴時点ではてっきり清丸は戦国時代からタイムスリップしてきたのかと思いましたが…、はてさてその真実やいかに。この清丸にはショーグン・ミフネ配下の科学者:ドクター・ゲンパクが深くかかわっているようであり、彼は何としてでも清丸を奪還しようと、影の軍団の忍者たちに清丸を襲わせます。ゲンパク曰く、清丸に関する研究は30年8か月間にわたる研究の成果らしい。なんで数字がそんなに細かいんだ…。影の軍団の襲撃に対して、清丸は最終的にトラックに乗ることで応戦。無知な清丸がトラックを暴走させてしまうシーンですが、これも実は後半の展開の伏線になっていました
清丸が舞人のもとにいることを知ったドクター・ゲンパクは、釣り鐘型の巨大ロボを繰り出してマイトガインを挑発、おびき出して彼を徹底的に苦しめます。同じ頃トラックの運転士が目を覚ましたという知らせを受けた舞人と満彦は、病院へ急行。途中戦闘のために抜けた舞人に代わり、満彦が清丸に関する衝撃の事実を知ることになります。今回ショーグン・ミフネ(の配下であるドクター・ゲンパク)が繰り出したロボットは、釣り鐘にヘリコプターのローターを合体させたような巨大ロボ。見た目はアンバランスですが、これがまたなかなか強い!何本も生えた腕を使って、マイトガインや出撃してきたバトルボンバー・ガードダイバーを苦しめます。強力な火器を装備しているうえに、見た目はかなり細いのに強靭な腕を持つ、ドクター・ゲンパクのロボ。これも彼の研究成果だったりするのでしょうか。病院に入院していたトラックの運転士は、かつて独自の精神科学理論により学会を追われた前野博士。彼は目覚めたことで、清丸の秘密のすべてを満彦に話します。清丸の正体は、かつて戦国時代で活躍し、猛将としておそれられた戦国武将:九条景清。ドクター・ゲンパクは残された甲冑から彼の毛髪を採取し、クローン技術により景清のクローンを作ることに成功。それが清丸だったのでした。そして清丸の持つ戦国時代の記憶は、すべて前野博士によって作られた疑似的な記憶だったのでした。単にクローンを生み出すだけでなく、それに疑似的な記憶を植え付けることで、故人を現代によみがえらせることに成功したドクター・ゲンパクと前野博士。かなり高度な技術ですが、これをもとにショーグン・ミフネがやりたかったことは、単に「歴史上の人物を現代によみがえらせること」らしい。武将などをよみがえらせて街を襲撃することも考えていたのかもしれませんが、彼のことだし、もしかすると案外純粋に復活させるだけ復活させて、それにより古き良き日本を形だけでも取り戻そうとしていた可能性も否定できませんね
満彦たちの話を立ち聞きしてしまった清丸は、自分の正体を自覚。清丸が捨て身の行動をとったことでマイトガインは立ち直り、最後は動輪剣により決着をつけたのでした。すべての真実を知った清丸がとった行動は、タンクローリーに乗り込んで敵ロボットの特攻すること。タンクローリーの自爆により敵ロボはバランスを崩し、マイトガインに逆転のチャンスが生まれます。中盤でトラックを清丸が運転したことが、こんな形で後半に生かされることになるなんて、悲しいけど予想できなかったなぁ。あまりにも清丸の最期が壮絶すぎるけど…。清丸の死に悲しみ怒った舞人は、マイトガインで動輪剣縦一文字斬りにより勝利。必殺技自体はいつものバンクシーンですが、音楽は「嵐の勇者(ヒーロー)」のピアノアレンジであり、必殺技が決まった後もなかなか動輪剣を引き抜くことができないマイトガインの姿が、舞人の悲しさを表現しています。ああ、このような悲しい形で今回のお話が完結することになるとはなぁ…
第20話「うごめく巨大な悪の影」
1993年6月19日放送
登場した敵他:シックス(エグゼブ配下)/勇者特急隊のスパイ
「世界中に本当の平和が訪れるまで、この勇者特急計画は完了しないんだ!」
STORY:両親の命日に、お墓参りをする舞人たち。そこで彼らが出会ったのは、舞人の祖父:裕次郎だった。上機嫌になった彼は、舞人たちに舞人の父:旭のことを語り始めた。今明かされる、勇者特急隊誕生の秘密!そして、青戸の工場で開発中の新装備とは何か?そんな舞人たちをつけ狙う、新たなる巨悪の正体は―!?
今回は、勇者特急隊設立のきっかけと礎をつくった、舞人の父:旭に関するお話が中心。マイトガインの活躍は後述する満彦制作の総集編ビデオで補完されており、同時に今までの総集編の要素も持っていました。
今日は舞人の両親:旭と瑠璃子の命日。両親の夢から目覚めた舞人は、朝食をとりながら両親が亡くなったときのことを思い出します。その後両親のお墓参りに行くことになりますが、彼らを尾行する何者かがいて―。旭が亡くなったのは3年前。新幹線の事故に巻き込まれたことで死亡したことになっていましたが、旭の残した最期の言葉が、舞人にこの事故への疑念を抱かせていました。旭が死ぬ間際に語ったのが、巨大な悪とそれに対抗する勇者特急隊計画の存在。今回から『マイトガイン』通しての巨悪が登場することもあり、この展開が『マイトガイン』のストーリーをさらに盛り上げてくれることになります。舞人の両親は霊園墓地で眠っているようですが、そのお墓があまりにもバカでかい。うーん、これはやっぱり裕次郎の意向なんだろうか…
霊園で裕次郎と出会った舞人たちは、彼に言われるがままに茶店へ。そこでサリーと再会した舞人は彼女のことをみんなに紹介し、それに上機嫌になった裕次郎は旭の過去を語り始めるのでした。サリーのフルネーム等をみんなに紹介する舞人。今回は上述の通り総集編としての要素も持っているため、キャラの再確認ということもあってこういったシーンを挿入したのでしょう。サリーが舞人の彼女だと勘違いしたからか、いつになく上機嫌な裕次郎は、舞人にも伝えていなかったという旭の過去を話します。舞人の父:旭は、旋風寺コンツェルン次期社長という座を約束されていたにもかかわらず、若くして家出。世界各地を放浪しては正義のヒーローのように人助けなどを行っており、その中で舞人の母となる瑠璃子と結婚。その後もそういった生活を続けていましたが、ある日突然裕次郎の元に戻り、旋風寺コンツェルンの2代目社長として働き始めたようです。舞人があんな感じなので、父親もやっぱり舞人に似たナイスガイ。渡り鳥生活を送るうちに巨大な悪の存在に気づき、勇者特急計画の構想を作り上げたようです。渡り鳥生活時代の旭の格好は、ギターを担いだジーンズ姿。おいおい、これ『キカイダー』のジローじゃないか!
両親の墓参りの後に、満彦の提案で青戸の工場に立ち寄ることになった舞人。そこで彼は、マイトガインに次ぐ勇者特急計画の第2段階、そしてその計画の真の全貌を目の当たりにします。数話後に登場することになる2号ロボ:ドリル特急マイトカイザーが初登場。まだ現段階では開発中のため、ロボット形態は出てきませんでした。大阪工場長曰く「あと4週間で完成する」とのこと。これ、ちゃんとマイトカイザー初登場回のタイミングに合わせてるのね…。そして勇者特急計画はこれだけにとどまらず。ロコモライザー等が格納されているマイトステーションの大列車フォートレスなどのイメージ映像も登場。物語の後半戦に向けて、しっかりとそれらの登場を示唆してくれました。ここまでマイトガイン等の活躍がありませんが、それらの活躍は満彦が作ったというオリジナルビデオ『マイトガイン 激闘の記録』で補完。BGMには、挿入歌として頻繁に使われている「レッツ・マイトガイン」がチョイスされていました
突然工場内に響き渡る警報音。それは何者かの侵入を警告するものでした。舞人は侵入者であるシックスを追い詰め吐かせようとしますが、彼が自分のボスを語ろうとした瞬間、突然身体が発火。今までとは違う何か別の巨悪の存在に気づいた舞人は、戦慄するのでした。今回以降物語でメインの敵となるエグゼブが登場。しかし名前は語らず、その素顔も影により隠されていました。今までの敵とは違い、部下に対しても容赦ない仕打ちを与えるエグゼブ。やはり彼は、舞人たちにとって強敵になりそうですね
第21話「勇者特急調査指令」
1993年6月26日放送
登場した敵他:セブン(エグゼブ配下)/ウォルフガングへの脅迫他
ウォルフガング/無差別テロによる勇者特急隊のデータ収集
「闇にうごめく悪党どもめ!正義の裁きを受けるがいい!」
STORY:草野球の興じる舞人たちの陰で、ウォルフガングは史上最大のピンチを迎えていた。得体のしれない巨悪からの誘惑、そして脅迫。愛すべき部下を誘拐された彼は、その巨悪に命じられるがままにマイトガインら勇者特急隊のデータを収集し始めた!事件を解決していく中で不自然な点に気づいた満彦は、逆にこの状況下を利用しようとする。そして暴かれる敵のアジト。そこでウォルフガングが見た真の巨悪の正体とは!?
前回からその登場がほのめかされていたエグゼブが、今回堂々の登場。そして、彼のあくどいやり方の前に、ウォルフガングも彼の手に堕ちることになりました。今回はエグゼブの実質的な初登場回であると同時に、ウォルフガングのメイン回。彼の心情描写などが細かく描かれていたように感じました。
友人たちと草野球をする舞人と満彦は、そのコンビネーションで快勝。その勝利の秘密を、舞人は満彦から教わります。同じ頃ウォルフガングは、自分の引き受けた仕事をきっかけに巨悪の存在を確信。手を引こうとしますが、部下であるイッヒとディッヒを誘拐されてしまいます。満彦が草野球に勝った秘密は、もちろん舞人とのコンビネーションもそうですが、ハンディコンピューターによりバッターのデータなどを解析していたため。これにより舞人に性格の球の投げる位置を教えていました。おいおい、試合中にそんなもの使うなんて、いくら何でも反則じゃないのか…?一方のウォルフガングは、ある機械の製作中にそれがマイトガインら勇者特急隊の戦闘データを収集するためのメカであることを察知。依頼してきた相手が自分と同じ悪であることに気づいたウォルフガングは、その依頼を急遽断ろうとしますが、その相手は部下のセブンを使って、イッヒとディッヒを誘拐してしまいました。ここで注目したいのは、セブンのウォルフガングに対する脅迫の仕方。彼はイッヒとディッヒを誘拐した際、ウォルフガングに対して「部下思いのあなたが部下を見捨てられるわけありませんよね」と詰め寄り、無理やりメカの開発を続行させます。第17話で部下に対する認識を変えたウォルフガングだからこそ、強烈な効果のある脅迫。これよりも数話前の彼には通用しなかった脅迫だろうなぁ
ヌーベルトキオシティ近郊で、相次いで無差別テロ事件が発生。これらを解決すべく、勇者特急隊が総出動します。一見何の脈絡もないようなこの事件群。実はこれは、勇者特急隊のデータを収集すべくウォルフガングがわざと起こしていた事件だったのでした。ヌーベル越谷に出現したロボットにはマイトガインが、ヌーベル高島平で発生した大規模火災ではダイバーズが、そしてヌーベルトキオタワー崩壊の現場にはボンバーズが出動。各自その性能をフルに発揮して活動しますが、そのすべてのデータをウォルフガングによって収集されてしまいます。勇者特急隊の各ロボの活躍が楽しめると同時に、前回と同じように各ロボットの能力の復習もできるようになっているこの一連のシーン。やはり第2クール終盤以降に新ロボなどが登場するため、それに向けて今まで登場したロボットたちをおさらいしておこうという意味もあるのでしょう。ちなみにこのシーンでは唯一ボンバーズだけがロボット形態になりませんが、これにもちゃんと意味がありました。勇者特急隊のデータを着々と集めていくウォルフガングでしたが、彼の頭の中にあったのは、「このデータを利用して自分もマイトガインを倒そう」ということではなく、「とにかくイッヒとディッヒを助けたい」ということただ1つ。やっぱり本当に、あの第17話の一件で部下思いの悪役に生まれ変わったんですね
データ解析で悪戦苦闘する満彦でしたが、舞人の祖父:裕次郎の発言をきっかけの敵の目的を推測。逆にこれを利用して敵のアジトを突き止めようとします。そうとも知らずに敵のアジトへやってきたウォルフガングは、そこで自分たちを脅迫した真の巨悪を目の当たりにします。裕次郎の「気楽に考えてみる」という助言をもとに、データ解析だけでなく自分の目も信じるようになった満彦。コンピューター偏重だった彼が少し変わった瞬間でしたが、あっさり流してしまっていたのが少しもったいなくも感じました。その目によって、すべての事件現場に謎のトラックがいることを突き止め、敵が自分たちのデータを収集しているということに気づいた満彦は、次に起こった事件でわざとバトルボンバーに出撃を指示。敵が逃走したと同時にジェットダイバーで追跡するという作戦を立てます。『マイトガイン』にしては珍しい、サポートメカの単独活動。『マイトガイン』はガインを除いてほとんどのロボが「サポートロボへの合体要員」という形で扱われているため、こういった活躍シーンは非常に貴重です。それを知らずに敵のアジトにやってきたウォルフガングが目撃したのは、自分たちを操っていた真の巨悪:エグゼブでした。巨悪にふさわしい部下に対する情け無用の仕打ち、そして今までのメインの敵の1人であったウォルフガングを手中に収めるなど、視聴者にもはっきりと「タダ者ではない巨悪」だと認識させてくれるエグゼブ。今後どれくらいの巨悪っぷりを見せてくれるのでしょうか。
敵のアジトを突き止めた舞人は、マイトガインで強行突入。すでにエグゼブは逃亡した後でしたが、ウォルフガングと解放された部下たちによるクールミント3636とのバトルに。敵のステルス機能に苦戦しましたが、それを逆に利用して勝利を収めるのでした。ウォルフガングの乗っていたトラックは、クールミント3636というロボットに変形。おまけにこのロボットは対センサー用のステルス迷彩を持っており、光を封じられた採掘場内での戦闘でマイトガインはピンチに陥ります。ここから逆に光を放って逆転するわけですが、信号弾を発射し、その強烈な光で暗視ゴーグルを使っているウォルフガングたちの視界を奪い、そのスキに動輪剣横一文字斬りでフィニッシュ。信号弾を使って目くらましするとは、なかなか考えられたアイディアだと感じましたね。ウォルフガングを一応は退けたものの、勇者特急隊の戦闘データは、すべてエグゼブの手元にわたった後。そしてそのことを、舞人はまだ知らないのです―
今回はここまで。次回は第22話から第24話をご紹介予定です。『勇者特急マイトガイン』。正義の力が、嵐を呼ぶぜ―!
◎今日の勇者ソング◎
今日ご紹介するのは、1993年放送の『勇者特急マイトガイン』使用BGM「発進!マイトステーション」です。
劇中では主に、舞人のダイヤグラマーからの指令でロコモライザーが発進する際に使用されていたBGM。マイトステーションは前半こそ「ただの基地」という感じですが、今回紹介のお話で登場した大列車フォートレス構想を機に、基地以外の要素も持つことになりました。
聞けば、このマイトステーションも放送当時玩具化されたらしい。どれくらい売れたんだろう…。
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