お前それ、ゾフィーにも同じこと言えんの?ver.2.0

主にウルトラマン・仮面ライダー・スーパー戦隊シリーズなどの特撮関係の話題等を扱っていこうと思います。

『新機動戦記ガンダムW』ちょっとした感想 W-18(OVA『EW』編)

今回は、『新機動戦記ガンダムW』の感想記事第18回目。初のTVシリーズからの純粋なスピンオフ作品(『0080』等は、ほとんどの主要キャラが一新されているので)である、『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』を取り上げます。

 

戦争が終わり、平和を取り戻したはずの地球。しかし、それを良しとせず、トレーズの名を借りて時代を引っ掻き回そうとするマリーメイア軍が現れるのが、『EW』のストーリー。TVシリーズにおいて、『W』の物語が完結していることから、続編のお話を考え出すのはとても難しかったかと思われますが、ひねり出されたそれは、なかなか面白いものだったなと感じました。ただ、全3話という尺は、ちょっと短すぎたかな…。

 

なお、前回TVシリーズ第48・49話(終))の感想記事は↓コチラです。

bongore-asterisk.hatenablog.jp

 

 

 

 

第1話「静かなる軌道(サイレント・オービット)」

1997年1月25日発売

登場した敵他:アルトロンガンダム、サーペント、リーオー、トーラス

「平和を願うのは勝手だが、問題は、人類そこまで成長しているか…ということだ。」

 

STORY:戦争が終結して1年後の、A.C196年のクリスマス。地球圏統一国家による終戦記念パーティーが、かつての戦場:資源衛星MO2で行われる中、政府特務機関:プリペンダーの一員となっていたノイン、サリィ、レディ・アンは、L3コロニー群内:X18999コロニーのきな臭い動きをキャッチしていた。行方不明となったリリーナ、トレーズの娘を自称する少女:マリーメイアの存在。そしてそれは、やがてX18999コロニーの独立宣言と宣戦布告を生み、人類は新たな戦いへと巻き込まれてしまうこととなる。独自ルートでこの事件を追い、さっそく本拠地に突入したヒイロとデュオが見たものは―!?

 

人類がつかんだ平和は、一部の人間の気まぐれで崩されるものなのか?『W』のOVA版である『EW』。その第1話である今回は、TVシリーズの戦争後のメインキャラたちや地球圏の様子と、新たなる火種を投下せんとするマリーメイア軍の台頭が描かれる形となりました。お話の展開上アルトロンガンダムを除きガンダムは登場しない形となりますが(回想シーンでは登場)、TVシリーズより圧倒的に緻密な作画、そして、ヒイロ側のメインキャラたちのほとんどが無事その後も生きているということが判明したことで、お話に引き込まれていきましたね。でも、ちょっと終盤の火種のつくり方が、強引ではあったかな。

 

あの戦争から1年。かつての連合側とコロニー側は、共に手を取り合って「地球圏統一国家」を樹立。民主的に選ばれた大統領がトップとなって統治していましたが、以降大きな争いは起きておらず、軍縮の一途をたどっていました。かつて戦争で活躍したガンダムたちも、今では無用の長物。カトルの提案により、廃棄のため太陽へ送られることとなりますが、一方でノインたちは、宇宙の漂流物より、戦火のにおいを感じ取っていました。本作から『W』に触れる人のことを配慮することも兼ねて、冒頭にはTVシリーズ最終回の振り返りが挿入。しかし、OV用に新規に描き起こされているうえ、各ガンダムのデザインが『EW』仕様のものに変更されていることから、TVシリーズから観てきた者にとっては、どこが違和感を覚えるものになっています。90年代のOVって、同じキャラや作品でも、デザインを一新することが往々にしてあったみたいだけど(『ダグオン』もそうでしたね)、うーん…。そんな振り返りのあとは、現在の地球圏の様子が描写。人々は平和を享受しており、戦争の気配もほとんど無かったことから、人類は軍縮へと舵を取り始めていました。しかし、政府としては、新たな戦争の芽を摘むため、特務機関:プリペンダーを組織しており、ノインたちがその任にあたっていました。TVシリーズであれだけいさかいの絶えなかった地球圏は、今では戦争のせの字も感じられない平和な世の中に。プリペンダーが動いているとはいえ、1年でここまで平和になってしまうのは、驚きを通り越してある種感心しました。ちなみに、プリペンダーのメンバーは、ノイン等TVシリーズではおなじみのメンバー。改心したとはいえ、レディ・アンがちゃっかりいて、しかもトップにおさまってるの、「それでいいのか?」って感じがしないでもないけど…。

 

サーカス団の一員として、平和な生活を送っていたトロワは、サーカスの客の入りが悪いこと、そして何らかの監視の目を感じ取ったことをきっかけに、バートン財団の暗躍をキャッチ。それをきっかけに、X18999コロニーにて密かに組織されている、マリーメイア・クシュリナーダ率いるマリーメイア軍に潜入します。しかし、途中で潜入がバレ、やむを得ず強硬策に変更。そんな彼の前に立ちふさがったのは、五飛でした。同じ頃、リリーナは外交業務のためそのコロニーを訪れていましたが、睡眠薬を盛られて意識を失い、監禁されてしまいます。マリーメイア軍の動きに対し、最も早く行動を起こしていたのがトロワ。しかし、その潜入は途中でバレてしまいます。OZ宇宙軍に潜入したときは、途中までバレてなかったのに…。マリーメイア軍は優秀ですね。いや、今まであれだけハデな行動をしてたら、バレないほうがおかしいか。こうした描写のあと、シーンはリリーナとマリーメイアのやり取りへ。マリーメイアは自らトレーズの娘だと名乗り、戦争行動を起こすことを宣言します。マリーメイアの戸籍上(?)の本名が、「マリーメイア・クシュリナーダ」ではなく「マリーメイア・バートン」であることは、早い段階で明かされますが(ガンダムヘビーアームズパイロット:トロワは、「トロワ・バートン」の名前をコードネームとして使っているだけなので、マリーメイアと血縁関係はない)、父親が不明とされており、さらに本人曰く「DNA鑑定で証明されている」ということから、戸籍上の名前は違えど、本当にトレーズの娘らしい。もしかしたら今後、「DNA鑑定の情報はウソでした」という展開がある可能性もありますが、本当に血縁関係があるのなら…トレーズ、レディ・アン以外とも、やることやってたんだなぁ。

 

ノインたちが、リリーナが行方不明になったことを知った頃、ヒイロとデュオも独自ルートでそれをキャッチ。オペレーションメテオの任務から離れていた彼らでしたが、リリーナのため、地球のため、とろうとしていた行動は一致していました。デュオ操縦のシャトルで、マリーメイア軍の本拠地へ向かう道中、ヒイロは夢を見ていて…。後半より、ヒイロが登場。彼も独自ルートで、リリーナの行方不明とマリーメイア軍の不穏な動きに気づいており、調査を進めていました。ネットミームとしても有名な、デュオの「世間はクリスマスだってぇのに、働き者はいるもんだ。」というセリフは、ここで登場。「ああ、これか!」と感じると同時に、その登場の仕方が非常にデュオらしいなと感じて、ニヤリとさせられました。そんなデュオと、考えが一致したヒイロは、さっそくデュオの用意した輸送船で現地へ向かうことを決意。長い道中で眠ってしまい、その中で過去の任務の夢を見ます。ここで挿入される、ヒイロの回想。彼はOZ基地破壊のためにあるコロニーに潜入した際、誤って周辺のマンションにまで被害を拡大させてしまい、任務の直前に出会った現地の少女を死なせてしまうという、悲しい過去がありました。この事件がキッカケで、彼が感情を殺すことになるのがわかるほか、登場するクマのぬいぐるみから、TVシリーズ前期OPを意識したものであることも窺えるこの描写。描写自体は秀逸ですが、これが今後『EW』において、どのような意味を持つようになるかが気になるところです。無意味な描写を挟むはずはないから、きっと何らかの意味があるんだろうなぁ。

 

ヒイロたちは、ムチャを承知で、マリーメイア軍の本拠地に強行突入。最初こそその行動に戸惑ったノインたちでしたが、通信でシャトルに乗るのが彼らだと知って以降、かつての戦争の時と同じく、自ら進んでバックアップに回ります。そして、彼女らの尽力もあり、ヒイロとデュオは内部に潜入。リーオーを強奪して一気に侵攻しますが、途中で2体のモビルスーツの猛烈な抵抗を受けます。新型モビルスーツ:サーペントと、よく知る機体:アルトロンガンダム。それらに搭乗していたのは―!終盤で、冒頭の回想シーンを除き本作初となる戦闘シーンが挿入。トーラスの攻撃の雨あられを潜り抜けるヒイロたち、彼らをバックアップするため、ミサイルを次々にぶっ放すノイン等、TVシリーズでは観られなかった、ハデで細かい作画が堪能できました。このように作画にこだわれるのが、OVAのいいところですよね。こうした形で、マリーメイア軍の本拠地に強行突入し、リーオーを強奪して着実に侵攻していたヒイロたち。しかし彼らの前に、サーペントに乗るトロワと、アルトロンガンダムに乗る五飛が立ちふさがります。本作で初登場のモビルスーツが、サーペント。ビルゴを軽快にし、遠距離攻撃に特化させたようなデザインをしています。こんなのが量産されたら、軍縮気味の地球圏統一政府軍は、ひとたまりもないでしょうね…。そして今回は、トロワや五飛がヒイロたちを攻撃するところでおしまい。彼らがなぜマリーメイア軍に身を置くことにしたのかは気になるところですが…、きっと各々の考え方や信念のためなのでしょう。でも、ヒイロたちと袂を分かつことまでは、しないような気がするな。

 

 

 

第2話「過ぎ去りし流星(オペレーション・メテオ)」

1997年4月25日発売

登場した敵他:アルトロンガンダム、サーペント、リーオー、トーラス

「この宇宙に、命より重いものは存在しない。サンドロックは、僕にそう教えてくれました。」

 

STORY:五飛とトロワの攻撃の前に危機に陥ったヒイロとデュオだったが、トロワの行動により窮地を脱し、X18999コロニーに潜入。デキムの狙いが「真のオペレーションメテオ」にあると気づいた彼らは、その阻止のために行動を開始した。同じ頃、マグアナック隊とともに1人別行動をとるカトルは、決死の行動で廃棄資源衛星に追いつき、まだ破壊されていないガンダム4機を確認する。デキムの地球侵攻に、トールギスⅢが直接抵抗する中、廃棄資源衛星は地球へ向けて針路をとった!

 

前回と次回が戦闘中心のお話になるからか、戦闘よりもドラマ展開に重きが置かれた今回。若干シーン構成がわかりにくかったですが、デュオ・トロワ・カトルのオペレーションメテオ前の姿も挿入され、『W』第1話前に彼らが何をしていたのか、そしてそもそも「オペレーションメテオ」とは一体何だったのかということ等、TVシリーズでは明かされなかった情報が公開される形となりました。オペレーションメテオが、当初の計画から単なるガンダム降下作戦に変更されたのは、デキムの暴走を良しとしないガンダム開発者たちの意思…でもあったのかな。

 

前回、ガンダム4機回収のため、太陽へ向かう廃棄資源衛星を追いかけ続けていたカトルたち。計算上ギリギリのところで間に合う見通しが立ちましたが、依然それは危険な賭けの状態でした。ラシードたちマグアナック隊を巻き込まないために、カトルは単独で廃棄資源衛星への潜入を決意。その際彼は、オペレーションメテオ開始直前のことを思い出します。同じ頃、ヒイロとデュオは、五飛やトロワと交戦中。トロワのサーペントの攻撃に、死を覚悟したデュオは、一瞬オペレーションメテオ直前の自分のことを思い出します。今回はまず、カトルとマグアナック隊の奮闘が描写。彼らの努力により廃棄資源衛星に追いつくことは確定的となりましたが、そこでの滞在時間はそれほど長く確保できる状況ではなく、依然油断ならない状態でした。TVシリーズのときから勇敢で頼れる仲間たちであるマグアナック隊ですが、今回も命を賭す覚悟で勧んで危険な行動を買って出たり、カトルのことをこれでもかというほど心配したりと、本当に人が良いんだなとわかる描写が散見。グッと来させられました。本当、ラシードたちは『W』の良心というべき存在だよ…。そんなやり取りの後は、唐突にカトルの回想シーンが挿入。その後、ヒイロとデュオの戦闘描写を挟んで、今度はデュオの回想が挿入されます。TVシリーズでは、ガンダムのことばかりに興味を示し、ヒイロたちパイロットには無関心なように描かれていたガンダム開発者たちでしたが、今回の描写を見ると、真のオペレーションメテオ(後述)には反対しており、各パイロットたちには「自分の意思で戦え」ということをアドバイスしていた模様。彼らのことなので、100%それが本心だったかどうかは疑わしいですが、その行動から察するに、少なくとも真のオペレーションメテオに反対していたことは、事実なのでしょう。

 

意図的にヒイロとデュオを脱出させたトロワは、その際自分の過去を回想。その後、マリーメイア軍に戻り、水面下でオペレーションメテオ阻止のための行動を開始します。一方のカトルは、ついに廃棄資源衛星に突入。様々なアクシデントに見舞われたものの、無事ガンダム4機のもとにたどり着き、廃棄資源衛星の方向を変え、あと24時間以内に地球圏に到達できるようにします。カトル→デュオと続いて挿入されるのが、トロワの回想。デュオやカトルとは違い、トロワは当初からガンダムヘビーアームズパイロットではなく、成り行きによりそうなったことが明かされます。もともとガンダムヘビーアームズは、本物のトロワ・バートンが搭乗する予定でしたが、ガンダムの力を用いて地球を実効支配しようとするオペレーションメテオの目的に反対するドクトルSの部下によって射殺。ヘビーアームズの整備スタッフとして偶然そこに居合わせていたトロワは、自らが代わりに“トロワ・バートン”となってガンダムパイロットとなることを志願し、現在に至っていました。TVシリーズで一時的に戦線離脱することもあったからか、この『EW』では、トロワがかなり優遇されている印象。彼の過去がここまで詳細に追加で明かされるとは、思ってもみませんでしたね。

 

ヒイロたちからの連絡で、真のオペレーションメテオのことを知ったノインとサリィ。さらに、マリーメイア軍のトーラス部隊がモビルドール部隊であることを見抜き、本隊を追うため急遽方向転換します。しかし、既にデキムの地球侵攻作戦は始まっており、大量のサーペント部隊が地球降下作戦の展開目前という状況。このままデキムに出し抜かれるのかと思われましたが、そんな彼の前に姿を現したのは、トールギスⅢに搭乗したゼクスでした。前回終盤よりその存在が示唆されていたトーラス部隊は、全てモビルドール。この部隊自体、デキムの陽動作戦であり、彼自身とマリーメイア軍の本隊は、既に大量のサーペント部隊を引き連れて、地球を目指していました。サーペントは1体だけでも厄介な存在なのに、それが何十機もいたら、ガンダムのいない今の地球はひとたまりもない状況。しかもデキムは、マリーメイアという象徴と、リリーナの求心力をも使って、地球を内面(心理面)からも支配しようとしていました。かなり強硬に作戦を進めているので、「本当にそう上手くいくものか?」と感じるところはありますが、デキムの地球を内面と外面双方から攻撃して支配しようとする作戦は、なかなかいい線行っているなという印象。『EW』全3話で描くには、ちょっと規模がデカすぎて時間が足りないように思えるので、話数を伸ばすか、もしくはTVシリーズ内でじっくりやってくれると、もっと面白くなったかもしれませんね。こうした強大な力で地球を攻めようとするデキムに対し、敢然と立ち向かうのが、ゼクスと彼の乗機であるトールギスⅢ。コロニー落としを盾に取られたため、完全にマリーメイア軍を沈黙させることはできませんでしたが、それでも本拠地の1つである資源衛星MO2をサーペント部隊ごと破壊しているので、かなりの戦果を挙げたと言えるでしょう。いやはや、トールギスⅢの攻撃力、高すぎでしょ…!

 

X18999コロニーで、マリーメイアが地球方面に向けて脱出するのを目の当たりにしたヒイロとデュオは、一般兵のみとなった軍本拠地に突入。真のオペレーションメテオ阻止のため、コンピュータールームへと向かいますが、そこには既にトロワがいました。彼とともにひと通りシステムを書き換え、さらにカトルからガンダム4機確保の情報を得たヒイロは、戦局を打開すべく、自身が先行して宇宙でウイングガンダムゼロを受け取ることを決意。トロワの協力を得て、先行して本拠地から脱出します。終盤で、ヒイロとデュオによる反撃が開始。マリーメイアが脱出したのを見計らって、人員が少なくなった軍本拠地に突入。コンピュータールームへ向かいます。そこには、先客としてトロワがいました。五飛とは違って、トロワは最初からデキムの作戦を止める気でいるため、この行動は全くおかしくないのですが、周りで白兵戦が展開されているという中でいつも通りの淡々としたスタイルでコンピューターをカタカタやっていたので、ちょっと笑っちゃいました。そんなコンピューターによる工作活動はほぼ成功し、あとは直接地球に向かっているデキムの部隊を止めるのみ。事態は一刻を争うことから、ヒイロは宇宙で先行してウイングガンダムゼロを受け取ると主張し、自分で立てた作戦のもとに行動を開始します。ヒイロが立てた、この群本拠地からの脱出作戦は、デュオを囮にしてそのスキに逃げるというものデュオがとばっちりを食らって投獄されるハメになってしまいましたが、まあ彼なら…なんだかんだで脱出できることでしょう。

 

 

 

第3話(終)「永遠への回帰(リターン・トゥ・フォーエヴァー)」

1997年7月25日発売

登場した敵他:サーペント

「戦いは、兵士だけで決するものではないのだ!これで俺も、戦いを捨てることができる。さらばだ、トレーズ―。」

 

STORY:先行してウイングガンダムゼロを受け取ったヒイロは、そのまま地球圏へと向かい、兵士の存在意義に思い悩む五飛/アルトロンガンダムとの決戦に挑む。その中で、ヒイロは過去の記憶を再び呼び覚まし、五飛は戦いへの新たな認識を得る。その後、たった2人でマリーメイア軍の地球本部へと突入したゼクスとノインは、厳しい戦いを強いられていたが、デュオたちの加勢を受けて何とか持ち直す。だがそれでも、物量面での圧倒的な差に変わりはなかった。武装も尽き果て、追い詰められる彼ら!マリーメイアに屈することが、地球の平和につながるのか?そのとき、アイツがまた帰ってきた!

 

『EW』の完結編となる今回は、かなり戦闘描写が多めとなる一編に。しかし、だからと言ってドラマがおざなりになっているわけではなく、戦いの中に各ガンダムパイロットたち&ゼクスたちの会話や心情描写を挟むことで、各々が何を考えているか、何を得ているかというドラマが、かなり細かく描かれていました。あれだけ兵士として戦う機会のように生きてきたヒイロたちが、今では不殺の平和を望んでいるというのは、彼らの人間性の成長を感じましたね。

 

前回、先行してX18999コロニーを飛び出したヒイロ。そのまま彼は、ウイングガンダムゼロの機体受領に成功し、一路地球圏へ向かいます。そこに待っていたのは、五飛/アルトロンガンダム。彼はマリーメイアに忠誠を誓ったわけではなく、戦争が終わった後の兵士の心身のよりどころを探して、今に至っていました。そんな彼を説得するヒイロですが、やがて過去の記憶がフラッシュバックして―。Aパート前半では、ヒイロと五飛の戦いがメインに。今までぼんやりとしか明かされていなかった、五飛がマリーメイア軍に身を置く理由が、このシーンにおいてはっきりと明かされ、同時に彼がオペレーションメテオ実行直前にどんな行動をとっていたかについても判明します。五飛は、平和が戻った地球に、その平和を取り戻すために戦った戦士たちの居場所がないことに思い悩んでおり、戦士としてのよりどころを探していました。いつも独自の考え方と信念に基づき行動し、それもキャラの魅力の1つであった五飛ですが、今回はいささかその理由が弱い印象。戦士としてのよりどころ探しというのは、よく理解できるのですが、そのための行動がマリーメイア軍への所属というのは、いささか単純すぎます。ヒイロの指摘の通り、それでは以前の戦争のときと何も変わらないのに…。それとも、それをわかっていて、あえて身を置いていたのかなぁ。そんな五飛に対し、ウイングガンダムゼロで戦いを挑んだヒイロ。両者拮抗し大気圏突入後も戦い続けますが、五飛を説得する中で、ヒイロの様子が変化し、なんと彼は自ら海中に没していきます。その姿を見た五飛もまた、心変わりが起き始めていました。五飛を説得する中で、かつての戦場での話(『EW』第1話・少女とクマのぬいぐるみの話)を思い出すヒイロ。彼がここまで自分自身とその弱さをさらけ出すなんて、今回が初めてではないでしょうか。

 

ヒイロ「マリーメイアは歴史を繰り返すだけだ。悲しくみじめな、戦争の歴史をな!ここで流れを食い止めなければ、また俺たちと同じような兵士が必要となってくる!そうなれば、悲劇という名の歴史が、いつまでも続く!」

 

ゼクスとノインは、それぞれトールギスⅢとトーラスで、マリーメイア軍の地球本部に突入。無数にいるサーペント部隊を相手に、たった2機で応戦してみせます。かなりの粘りを見せる彼らでしたが、やはり圧倒的な物量差の前に、戦局はじょじょに不利に。そんなとき、サリィの手引きもあって、ガンダムを取り戻したデュオ・トロワ・カトルが加勢します。ムチャな戦いであるため、撤退を促すノインでしたが、デュオたちの思いは既に決まっていました。Aパート後半より、ほぼ戦闘シーンが連続。サーペント相手に奮闘するゼクスとノイン、彼らの使用機体は、それぞれトールギスⅢとトーラスでした。TVシリーズでの使用機をそのまま使い続けていたノイン。以前ビルゴ相手のときすら苦戦していたので(機体スペックが違うので当たり前)、サーペントとの戦いを乗り切れるのか?と思いましたが、想像以上に粘り強く戦い続けていました。いやはや、ここはトールギスⅢよりも、トーラスの活躍に注目させられたなぁ。ある意味、『W』の中で最も汎用性の高いモビルスーツは、トーラスなのかもしれないな…。そんなゼクスたちのもとに、やがてデュオたちも加勢。「兵士は殺さず、モビルスーツだけを倒す」という不殺の精神でどんどん敵を撃破し、じりじりとマリーメイア軍の地球本部へと迫ります。ここでようやく、デュオたちも登場。いつの間にか不殺の精神に目覚めているのは、ちょっと「あれ?」と感じるところもありますが、この戦いを通じて、今までの時代や戦争と決別しようとしている彼らの姿には、グッとくるものがありました。

 

デュオ「地獄への道連れは、ここにある兵器と戦争だけにしようぜ!」

 

デュオたちは、限られた戦力の中で戦い続けますが、サーペント残り十数機というところで武装が底をつき、本当に自爆しか方法がない状況に。しかし、兵士たちを殺さずにサーペント部隊を沈黙させるという方針の彼らにとって、その手段をとることは容易ではありませんでした。捕らわれのリリーナが、マリーメイア軍の通信回線を使ってマリーメイアへの従属への疑問を訴えかけるも、それはすぐに封殺。もはやこれまでかと思われたとき、復活したウイングガンダムゼロと、民衆を引き連れたアルトロンガンダムが登場。前者はツインバスターライフルを的確に連射して、マリーメイア軍の地球本部のシェルターをぶち抜き、後者はただひたすら、民衆の声を聴かせるのでした。いくら幾多の戦いを潜り抜けてきたデュオたちと言えど、武装が底をつきては戦いようがないというもの。あまりにも多いサーペント部隊を前にして、敵殲滅あと一歩手前で、いよいよ窮地に立たされます。最初は250機もいたのに、そこから十数機まで減らしてるんだから、これだけでも大したものなんだけどね…。そんな彼らに残された武装は、自爆装置のみ。しかし、不殺の精神の彼らは、それを容易に使うことはできず、打つ手なしという状況。そんなときに駆け付けたのが、生きていたヒイロウイングガンダムゼロと、五飛/アルトロンガンダムでした。ここでの戦闘では、デュオたちが「兵士たちを巻き込むのですぐに自爆はできない」と言っていたり、ヒイロがマリーメイア軍の地球本部の防護状況を確認したうえでツインバスターライフルを発射したりしているのが、見逃せないところ。皆出来るだけ犠牲を出さない形で、マリーメイア軍を沈黙させようとしているんですよね。ヒイロは相変わらず、言葉ではその本心を明かそうとはしていませんでしたが、行動によりその考えを示していました。

 

頼みのサーペント部隊は全滅し、砦である地球本部も崩壊寸前のマリーメイア軍。マリーメイア本人の心が揺れる中、デキムはそれでも地球支配をあきらめていませんでした。リリーナやレディ・アンの訴えをもってしても、デキムの考えは変わらず、その銃弾はマリーメイアに重傷を負わせることに。結果的に、デキムはマリーメイア軍の一兵卒に射殺され、マリーメイアは―。終盤では、ウイングガンダムゼロが大破し、舞台はマリーメイア軍の地球本部へ。ウイングガンダムゼロが迫ってくるということを通じて「戦いへの恐怖」を知り、目を覚ましたマリーメイアに対し、デキムはまだ地球支配の欲望を捨ててはいませんでした。最終的にこうした流れになるのは良いのですが、マリーメイアの改心があまりにも唐突過ぎる印象。戦いを通じて得た恐怖と、それに関連するリリーナとレディ・アン(単身潜入してきた)の説得の結果、こうした展開にするのであれば、もっと早くから、段階的にマリーメイアの恐怖を描写すべきでしたね。先ほどサーペント部隊に立ち向かうゼクスたちや、加勢してきたデュオたちの姿を見て、「ヤツらが迫ってくる」という恐怖心が少しずつ去来する描写を入れておけば、違和感を軽減できたことでしょう。そんなマリーメイアは、リリーナの尽力もあってすっかり改心。しかし、それを良しとしないデキムは、邪魔なリリーナをまず射殺しようとします。ところが、マリーメイアが彼女をかばう形となり被弾。デキムは錯乱状態に陥り、なおもリリーナを狙いますが、今度はその前に射殺されるのでした。反旗を翻した身内の一兵士に射殺されるという、息子と同じ末路(『EW』第2話参照)をたどったデキム。皮肉な結果だよねぇ。こうした混乱のあと、ヒイロが現れ、マリーメイアに銃を突きつけ発砲。しかし、そこに弾は入っておらず、空砲でした。ヒイロがマリーメイアを殺す気はなく、またこの行動を通じて、「過去のマリーメイアは死んだ」という形にしたかったのだろうなということは明らか。最後の彼のセリフでも、その思いを読み取ることができました。

 

ヒイロ「俺はもう、誰も殺さない。殺さなくて済む―。」

 

今度こそ本当に戦争は終わり、真の平和が訪れた。ガンダムを爆破して処分したデュオたちは、それぞれの道を歩んでいきます。そして、ヒイロもまた―。ラストでは、主題歌「WHITE REFLECTION」にのせて、その後のガンダムパイロットたち等の様子が描写。デュオはヒルデとの生活へ、トロワはサーカス団へ、カトルはマグアナック隊へそれぞれ帰還。五飛はサリィに誘われ、プリペンダーとして行方不明となったゼクスとノイン(実はリリーナのために新天地のテラフォーミングへと出発した)の捜索へ。そしてヒイロは、相変わらずリリーナのそばにいました。この中だと、ヒイロだけ身を寄せる場所がない形になっていますが…、彼にとっては、どんな形であれリリーナのそばこそがそれなのでしょう。だって、TVシリーズで、「リリーナを守る」って誓ったんですからね。これまでも、そして、これからも。

 

 

 

新機動戦記ガンダムW』。これは、地球と宇宙の戦争に翻弄された少年たちが、戦争を通じて心と平和を取り戻し理解した、人間としての成長物語である。

 

 

 

 

 

…こうして、『W』の映像での物語は完結となりました。

 

次回は総括として、改めて『W』を振り返ってみることにしましょう。

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新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』の本編は、各種サイトで公式配信中!↓コチラもチェックだ!

 

 

 

 

 

ガンプラ Pick Up!

ガンダムW Endless Waltz』に登場したモビルスーツガンプラの一部を、ピックアップしてみよう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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