着実にカイザキ副隊長のメンタルを削っていくスタイル
浦澤さん、ここは、人間のいるべき場所じゃないんです!キチンとお別れを言うの!今回の『ウルトラマンデッカー』は、中野脚本×田口監督という、長きに渡ってニュージェネレーションヒーローズ作品を支える面々のコンビ回であり、実質的に本作最後の通常回。独特なテンポと世界観でお話が進み、「ラゴンというキャラにこんな使い方があったのか!」と驚かされました。
『ウルトラQ』や『ティガ』の実相寺監督回を意識した展開やカメラアングルになっていたこと、また特撮パートの火薬の使い方は、それぞれかなり注目させられましたが、全体を俯瞰すると、お互いはやや噛み合っていなかった印象。シーンごとの完成度は高いですが、前後の繋がり等は、ややしっちゃかめっちゃかでしたね。
なお、前回(第19話)の感想記事は↓コチラです。
bongore-asterisk.hatenablog.jp
◎ストーリー面
ラゴンを「らごんさま/羅権様」という存在とし、正確な正体やその目的を最後までわざと明かさず、語り部である浦澤ナギとイチカやカイザキ副隊長の交流を通して、視聴者に様々なものを訴えかけようとしていた今回。ラゴンの目的がボカされているのはGoodですが、その割にはラゴンの意思を感じ取れるシーンが少なく、やや制作側の意図しているものは伝わりづらかったかなという感じがしました。
ワダツミシティで頻発する、謎の生命体による襲撃事件。現地へ調査に向かったイチカとカイザキ副隊長は、そこでらごんさまの伝説と、語り部であるナギの存在を知ります。しばらくして、二手に分かれて調査を継続していると、ラゴン出現の報せが。駆けつけた2人のうち、イチカは偶然それと正面衝突し、相手を昏倒させてしまいます。その正体は…。今回のメインは、イチカ&カイザキ副隊長とナギのやり取りにあるため、前提となるラゴンの引き起こす事件については、カイザキ副隊長のモノローグを利用して描写を圧縮。しかし、それだけでは単調になってしまうため、細かいカット割りを挿入することで、絵的に飽きないような構成がなされていました。やや説明セリフがくどい印象もありましたが、まあこれはこれでいいでしょう。そんな、ワダツミシティでの事件調査において、イチカたちが出会ったのがナギ。彼女は、郷土資料館を運営する傍ら、ラゴンの語り部としての一面も持ち、イチカたちにそのことを話します。半信半疑のカイザキ副隊長に対し、イチカは興味を示してすっかり信用していきます。今回のキーパーソンとなるのが、ナギ。最初こそ伝説を語る役回り方思われましたが、実は、この街で実質的に最後にラゴンとかかわりを持った人物という要素も持っていました。それ自体はいいのですが、Aパート終盤でナギがラゴンのコスプレをして事件を引き起こすという展開はやりすぎだったかな。あれが「イチカたちが、ナギのラゴンへの思いを知るきっかけを作る」ために挿入されたシーンだとしたら、イチカたちを本物のラゴンと遭遇させて、その際ナギが我を忘れて取り乱す…って感じでも行けたと思うんだよね。
目覚めたナギから、彼女の思いを訊き出したイチカたち。彼女のラゴンとの思い出を知ったとき、突然海女の岩戸周辺で地震が発生。地盤沈下を起こし、巨大化したラゴンが出現します。ガッツファルコンで攻撃に向かったカナタは、撃墜されたためデッカーに変身。しかし、ラゴンの体表はかなりヌルヌルしており、それがデッカーを思いの外苦戦させます。中盤において、ナギの抱える背景とその思いをイチカたちが知ってから、物語の展開は一気に加速。海女の岩戸が自身とともに突然崩壊をはじめ、巨大化したラゴンが出現し、ワダツミシティを蹂躙していきます。本放送時は、その特撮描写に圧倒されたこともあり(詳細は後述)スルーしていましたが、よく考えると、ラゴンがなぜ突然巨大化したのか、そして暴れ始めたのか全く不明。一応、ドラマ展開を踏まえると「海女の岩戸を破壊しようとする人間たちへの怒り説」と「離れ離れになったナギと遊びたかった説」が考えられますが、前者についてはナギが目覚めたシーンあたりからほとんど触れられなくなり、後者についてはそれに対するラゴンの反応がほとんど確認できない(終盤のシーンのみくらいか)ため、どちらの説をとるにしても、イマイチ説得力に欠けるんですよね。制作側としては、わざとボカシてどちらともとれるようにし、ドラマに余韻を与えているつもりなんだろうけど、ちょっとボカしすぎかなぁ。
市街地の被害が拡大する中、危険な海女の岩戸へ向かうナギ。彼女を追ったイチカたちは、ついにナギのラゴンにこだわる本当の理由を知ります。そして、ラゴンを追って、ナギも海女の岩戸へ突入。危険を顧みずイチカも飛び込み、2人ともラゴンとともに海深くに閉じ込められそうになりますが、ミラクルタイプの奇跡の力が、彼女らを救出します。こうして事件は終息。ラゴンの伝説は完全に途絶えてしまいましたが、イチカとナギの絆は、これから始まろうとしていました。終盤、デッカーの戦闘と同時並行で描かれるのが、ナギの行動とそれに対するイチカの勇気ある反応。ナギはかつてラゴンと離れ離れになったことを悔いており、彼(彼女?)と運命を共にしようとしましたが、イチカの行動とミラクルタイプの力が、それを阻止します。このシーンでのイチカの一連の動きは、ヒーロー番組のヒロインとしては本当に勇気あるものであり、カッコよさを感じるものになっていてGood。ただ、ナギのことを「あなたの心は岩戸と一緒なんです!」と叫ぶシーンは、絵的にちょっと狙いすぎな感じで浮いてたかな。そんな彼女とともに、ナギを救ったのがミラクルタイプ。今回は結局ダイナミックタイプが登場せず、ラゴンも倒さずに終わるという、「ウルトラシリーズ」だからこそできる一編でもありました。でもさ、ミラクルタイプが超能力でナギたちを一瞬で救っちゃったせいで、ナギはラゴンとお別れが言えなかったね…。
◎特撮面
第20話にして今作では初参戦となる田口監督が担当した、今回の特撮パート。独特なこだわりが随所に炸裂していたのは、「やっぱりな」という感じであり、1つ1つのシーンに本当に見ごたえがありました。ですが、いささか自分の趣味趣向に走りすぎちゃった感じがあるかな~。倒さないで事件を解決するという終わり方には、ちょっとなじまない感じの、ハデな特撮演出が連続していましたね。
地震の直後、海女の岩戸が爆発し、地底よりラゴン出現!人間への怒りか、それともナギを求めての悲しみか、ワダツミシティを文字通り蹂躙していきます。ムラホシ隊長の指示を受けて、出撃したカナタの攻撃は、ほとんど効き目がありませんでした。序盤で出てきていた海女の岩戸は、ちょっとCG合成が浮いており、「明らか合成じゃん」という感じでしたが、特撮パートに入った途端、ミニチュアで作ったそれを即爆破。この演出は、かなりインパクトがありました。やっていること自体は珍しくないんだけど、なんかこう、ガツンと訴えかけてくるものがありましたね。そうしたことを経て出現したラゴン、鬼神のような強さを発揮、市街地を破壊しまくり、干拓地であることから、次々に地面の下にある海底へと沈めていきます。干拓地という設定を生かし、建物が地底(海底)に沈んでいくという演出を取り入れているのは、非常に興味深いところ。それはいいんだけど、ラゴンって…こんなに強い怪獣だったっけ?
ガッツファルコンを失ったカナタは、すぐにデッカーへと変身。しかし、体表がヌルヌルしているラゴンには、キックやパンチどころかセルジェント光線も効かず、予想外の大苦戦を強いられます。光線の返り討ちに遭ったデッカーは、他の建物とともに海底に没してしまい…。戦闘パート中盤より、デッカーが登場。スーツの傷みや汚れをものともしない、(文字通りの意味で)ドロドロになる戦闘だけでも見ごたえがあるのですが、それを接写で映したり、カーブミラー越しに見るような演出を導入したりと、これまた面白い趣向が取り入れられていました。ヌルヌルしている光沢表現にも、かなり力入れられてたよなぁ。至近距離での爆破もかなりやってたし、今回の撮影で、アクション用スーツ1着かなり傷んでそうだな…。
ナギが羅権衆の舞いをしたことで、心を鎮めて海女の岩戸へとやってきたラゴン。そこへ戻っていく姿を見て、ナギも追いかけます。ラゴンと運命を共にしようとした彼女を救ったのは、イチカとデッカーでした。戦闘シーン終盤は、イチカとナギのやり取りがメインになるので、特撮描写は少なめ。それでも、お話的には無くても通じる、市街地を流れる川のシーンや、ラゴンの歩行により倒れていく自転車のミニチュアをわざわざ映していたのは、ギリギリまで特撮描写を挿入したいという思いゆえでしょう。後者についてはちょっとやりすぎ(逆に明らかな作り物感が出てしまっている)に感じるけど、こうした気概は大歓迎ですね。
開発中の新技術、Sプラズマ増殖炉。人類を光速へと導く夢のそれには、隠された大きな秘密があった。現れるスフィアジオモスと、またまた登場するアガムス&テラフェイザー。秘密と真実に直面するとき、カナタ/デッカーは、どんな反応を見せるのか!?
次回より、『デッカー』の物語は最終章へ突入。二大怪獣が登場するというビッグな展開と、明かされるという大きな秘密に期待がかかりますね。来週の放送回では、玩具も一気にドドンと発売されるし、こりゃ楽しみだ!
読むしかねぇ…。第21話の感想記事も、読むしかねぇんだ!
bongore-asterisk.hatenablog.jp
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