お前それ、ゾフィーにも同じこと言えんの?ver.2.0

主にウルトラマン・仮面ライダー・スーパー戦隊シリーズなどの特撮関係の話題等を扱っていこうと思います。

『吸血鬼ゴケミドロ』 ちょっとした感想

僕たちは生きるんだ。どんなことをしても生きるんだ!今回は、1968年8月14日公開の映画『吸血鬼ゴケミドロ』の感想記事です。

 

松竹が『宇宙大怪獣ギララ』に続いて制作した特撮映画であり、眉間がパックリ割れた鮮烈なポスタービジュアルとそのタイトル、そして救いのない結末が、あまりにも強烈すぎるインパクト持つ本作。ホラーやエログロナンセンス映画も気にせず観れる私ですら、この『ゴケミドロ』は、そうした前評判のせいでビビッて観ることができていなかった、数少ない作品の1つでした。

 

しかし今回、意を決して視聴。思ったほどホラー感はなく、ビビらず観ることができましたが、試行錯誤の末生まれたであろう特撮演出、そして現代にもつながる(通用する)ドラマ作りなどに、とてもうならされました。なるほど、本作が「すべてのホラー映画は『ゴケミドロ』に通じる」と言われている理由が、よくわかりましたね。

 

※なお、今回は敬称略でお送りします。

 

 

 

STORY:1960年代後半のある日。羽田空港から伊丹空港に向かう旅客機が、外国大使暗殺犯:寺岡博文(高英男)によってハイジャックされた。しかしその旅客機は、直後謎の発光体(=ゴケミドロの円盤)に巻き込まれ墜落。生き残ったのは、副操縦士の杉坂英(吉田輝雄)、スチュワーデスの朝倉かずみ(佐藤友美)、与党の重鎮政治家の真野剛造(北村英三)、兵器製造会社の重役:徳安(金子信雄)と妻の法子(楠侑子)、宇宙生物学者の佐賀敏行教授(高橋昌也)、精神科医の百武(加藤和夫)、未亡人の外人女性:ニール(キャシー・ホーラン)、自殺志願者・松宮(山本紀彦)だけだった。最初こそ、協力して生き抜こうとしていた杉坂たちだったが、極限状態に置かれた彼らの中から、じょじょに欲望やどす黒い感情を見せる者が多発する。そしてその陰で、宇宙生命体ゴケミドロに寄生された寺岡による、吸血惨劇が始まっていた。果たして、杉坂たちは生き延びることができるのか!?

 

タイトルやポスタービジュアルだけ見ると、生き残った人間=杉坂たちとゴケミドロ=寺坂とのバトルがお話の中心になっていそうに錯覚しますが、実際は、極限状態に置かれた杉坂たちの、生存本能と理性のぶつかり合いがその中心。ぶっちゃけた話、物語の大半は、ゴケミドロがいなくても成立する作劇になっています(杉坂たちにとって脅威である寺坂が、生き延びてどこかで潜伏しているという要素のみで十分)。

 

そうした状況下で描かれるのが、人間のエゴと、それが引き起こす醜さ。主人公の杉坂や、メインヒロインのかずみ以外は、皆音を上げてじょじょに狂気を見せ始め、最終的にはほとんどがゴケミドロに襲われるか事故死してしまいます。特に、後年も悪役演技でその名を轟かせることになる、金子信雄の演技が光っています。

 

また本作では、ホラー作品の定番とも言える要素が多数詰め込まれており、「金で解決しようとする成金」・「妙に事態に精通している学者」・「偶然乗り合わせている医者」・「パニックを起こして絶望感を煽る死にたがり」と、閉鎖空間でのホラー作品ではよく観るものがどっさり。「すべてのホラー映画は『ゴケミドロ』に通じる」と言われる理由は、ここにあるんですよね。

 

特撮面に目を向けると、ゴケミドロは中盤あたりまではなりを潜めていますが、後半からは一気に登場。幾度となく杉坂たちを襲おうとします。ゴケミドロの特撮はかなり力が入れられており、アメーバ状の生物という表現もさることながら、ゴケミドロが寄生or離脱する際に使用されている、演者たちのマスクの出来も秀逸。1960年代であのリアルさは、かなりの高クオリティーと言えるでしょう。一方で、クロマキー合成は若干浮き気味だったので、改善の余地ありだなと感じました。

 

そしてラスト。杉坂たちがかなりの犠牲を払って脱出に成功しますが、既に町はゴケミドロの襲撃を受けて壊滅。さらに宇宙からはゴケミドロの増援部隊が迫っており、地球危うしという感じを視聴者に叩きつけて終了します。最後の最後に視聴者を絶望に叩き落とすというのは、ホラー作品の演出としてGoodですが、これまでの流れを踏まえて観ると、いささか唐突すぎる印象。こうした最後をやりたいのであれば、もっと早い段階で、「なぜか放送が途切れていくラジオ」や「パニックの末事切れる無線通信」等、「杉坂たちだけでなく、世界がゴケミドロに襲われていることをにおわせる表現」がほしかったですね。

 

最後に、出演者に目を向けると、のちに東映異常性愛路線作品でも主演を務める吉田輝雄のほか、「ウルトラシリーズ」にも見られた顔ぶれであるキャシー・ホーラン、そして上述の金子信雄等、なかなか注目すべきキャストが多め。個人的に一番ビックリしたのは、若き日の高橋昌也でした。この人、大映ドラマでいっつも重鎮役やってるイメージがあったけど、『ゴケミドロ』にも出てたんですね〜。髪の毛は黒々してたけど、その顔はハッキリとわかりました。

 

 

 

 

 

日本のホラー映画演出の礎を築いたとも言える作品、『吸血鬼ゴケミドロ』。観ていて決して楽しい作品ではありませんが、間違いなく損はしないし、同時に勉強になる作品と言えるでしょう。

 

ちなみに私って、冒頭述べたような理由で、東宝の『マタンゴ』とかも観れてないんですよね。いつか観ないとなぁ。でも…やっぱりビビっちゃうなぁ。

 

 

 

 

 

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