今回は、1988年に公開された映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の感想記事です。
「ガンダムシリーズ」としては、初の完全新作映画となった本作(『ガンダム』劇場三部作は、一部シーン追加と加筆を行った映画であるため)。その内容は、1979年から続いた『ガンダム』の物語の、集大成ともいうべきものになっていました。宇宙をまたにかけた戦争を演出しつつ、ドラマ面ではメインキャラクターを絞ってそのやりとりを中心に進めるというその手法は、なかなか興味深いものがありましたね。
なお、キャラクターとモビルスーツについては、↓下記公式HPをご参照ください。
また、前作(機動戦士ガンダムΖΖ)の総括感想記事は↓コチラです。
bongore-asterisk.hatenablog.jp
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』
1988年3月12日公開
「貴様ほど急ぎすぎもしなければ、人類に絶望もしちゃいない!νガンダムは…伊達じゃない!!」
STORY:宇宙世紀0093年。グリプス戦役(『Ζガンダム』最終回)の戦火の中に消えたかと思われたシャアは、新たにネオ・ジオンを結成。自らが総帥となって地球連邦政府に宣戦布告し、第二次ネオ・ジオン抗争が始まった。依然地球連邦軍に所属していたアムロやブライトは、その外郭部隊ロンド・ベルの一員として身を投じる。しかしこの抗争は、人類の命運をかけた戦いであると同時に、人の思いと関係が渦巻く戦いでもあった。政府高官の娘:クェス・パラヤ、ブライトの息子:ハサウェイ・ノアの他、様々な人々の絡み合いの末、ついに小惑星アクシズを背景に、アムロのνガンダムとシャアのサザビーの一騎討ちが始まる。勝つのはどっちだ―!?
劇中で終始展開されるのが、第二次ネオ・ジオン抗争の一連の流れ。しかし、単なる「連邦軍VSネオ・ジオン」という構図にはなっておらず、その中にいるメインキャラクターたちの動きや駆け引き、そして人間関係に重きが置かれているのが、本作の大きな特徴になります。
特に、劇中で重要な役割を果たしているのが、クェス。彼女は、最初は地球連邦軍側だったものの(不満だらけだったけど)、ひょんなことからシャアと接触し、あっさりネオ・ジオン入り。その中でニュータイプとしての力に目覚めていくと同時に、シャアに異常なまでに陶酔するようになり、それが彼女自身のネオ・ジオン内での立場を悪くし、また泥沼の戦いへと引き込んでいきます。
ややすっ飛ばし気味ではありますが、2時間という時間の中で、他のお話を描きつつクェスの“狂気”をしっかりと表現しているのは凄まじいなと感じましたね。それでいて、子供であるが故の無邪気さや純粋さはそのまんまなんだから、余計にその狂気が引き立つんですよね~。そして最期は、ハサウェイの目の前でチェーンの攻撃を受けて死亡。これがまたかなり、ハサウェイ自身にもそして視聴者にも、強烈なインパクトを残します。
このような本作初登場のキャラクターに負けないくらい(というかこっちが主役級)濃密に描かれているのが、アムロとシャアそれぞれの立ち位置と、彼らを取り巻く人々。どちらかといえば、アムロは過去にある程度区切りをつけて、前へ歩き出し、人類に対する可能性を捨てていない「強い人間」、シャアは、未だに過去にとらわれ、ある意味では後ろ向きな考えに固執し自分の殻の中に閉じこもっている「弱い人間」のような描かれ方をしています。どちらの考え方が正しいかはさておき、劇中で観た限りだと、アムロの方が進んだものの見方・考え方をしているなと感じました。シャアはネオ・ジオンを率いて戦意を維持するためにあれこれ言って大きな態度をとっていたけど、アムロの言葉を借りれば、実際はかなり「器量の小さい男」だったなぁ。
そんな2人がそれぞれ所属しているのが、地球連邦軍とネオ・ジオン。2人の考え方等が先述の通りなのに対し、彼らが所属している組織の考え方はどちらもそれと真逆になっているのが、これまた興味深いところです。色々考えさせられるところがありましたね。
こうしてどんどん展開される第二次ネオ・ジオン抗争のラストは、シャア=ネオ・ジオン側の敗北という形で終結。小惑星アクシズは一部が地球に落下しそうになりますが、それを止めたのはアムロの乗るνガンダム、そしてサイコフレームに引き寄せられたモビルスーツと、その中に乗る人々の思いでした。
このシーンにおけるアムロとシャアの会話は、人によってかなり解釈が違うような気がしますが、私としては、なんだかんだでシャアも人類の可能性や持っている優しさを信じていた、正確には信じたかったのではないかなと思います。でもそれと同時に彼は、戦争や過去の思い出を通じて、それらを持つ人間の恐ろしさも知っていた。だからこそ、本作のような極端な行動に走ってしまったのではないでしょうか―。
さて、戦闘面に目を向けると、そういったハデなシーンは、主に前半と終盤で展開。主要モビルスーツのほとんどがファンネル攻撃使用可であり、しかもすべてのモビルスーツが『ΖΖ』時代以上に改良されていることから、どいつもこいつも縦横無尽に動いては攻撃の雨あられを降らせており、その絵面の凄まじさに、ただただ圧倒されるばかりでした。
特に、終盤でνガンダムが本格的に登場してからの戦闘は、あまりにもすごすぎて言葉が出ないほど。これ、デジタル作画じゃなくて全部手描きなんですよね。本当にえげつないよこれ。制作陣のアニメーター魂を感じたなぁ。
「ガンダムシリーズ」10周年作品となり、これ以降しばらくはアムロやシャアが登場する作品が出てこなくなることから、彼らの物語の、一旦の完結編となったともいえる『逆襲のシャア』。それ以前の作品を観てあらかた話やキャラを理解していないと、この映画の話自体理解しにくいですが、逆にそれらを理解していれば、これほどいろいろなことを視聴者に訴えかけるガンダム映画は他にないと言えるでしょう。
本編時間ほぼ2時間ちょうどと、なかなかの長編映画ですが、『ガンダム』~『ΖΖ』までを観たのであれば、その完結編としてぜひ観ていただきたい映画ですね。
宇宙世紀0079に起きた、一年戦争。地球圏でアムロたちホワイトベース隊が激戦を繰り広げていたのと時同じくして、遠く離れた小さなコロニーで、別の戦いが繰り広げられていたことを知っている人は、どれくらいいるのだろう?クリスマスまでの数週間の間に起きた、少年と一ジオン公国軍の兵士の戦いを、観てみよう。
今でもたまに夢に見る。
運命は信じないけど、悲しいことばかりじゃなかった。
これは、誰にも話せてなかった、冬の出来事。
宇宙世紀0079―忘れられない、クリスマスの話だ。
バーニィ、忘れてないよ。
…というわけで次回からは、1989年発売のOVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』の感想記事が始まります。お楽しみに!
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☆ガンプラ Pick Up!
『逆シャア』に登場したモビルスーツのガンプラの一部を、ピックアップしてみよう!
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