今回は、1981年初版発行・1985年文庫化された、『落ちこぼれ軍団の奇跡』のレビューです。
TBS系ドラマ『スクール☆ウォーズ』のもととなった、伏見工業高校ラグビー部の更生と躍進を描いたノンフィクション小説。ドラマのヒットを受け、文庫版のタイトルには『スクール・ウォーズ』の名称が追加されています。
初版が発売されてから既に40年近く経過していますが、今も文庫版は版を重ねて発売中。現在発売されている最新版は、2019年のラグビーワールドカップなどの影響を受け、ラガーにゃんとコラボしたカバーが付属しています。この本自体が未だに売られていることにも驚いたけど、中身とカバーのギャップもこれまた凄まじいな…。
STORY:ラグビー日本代表を引退した山口良治は、幼い頃からの夢である教師への転身を模索中、熱心に自身のもとを訪れていた山本校長の説得により、京都市立伏見工業高校(以下、伏工)の体育教師として赴任することになった。しかしその学校は、「京都一のワル」と言われ、ラグビーゴールもへし折られているなど荒廃しきった有様だった。しかし、山口の尽力により、生徒たちも教師たちも、じょじょに代わり始める。進み始めた更生への道、そして幾多の挫折と苦難…。山口たちは試練を乗り越え、昭和56年1月7日、前人未到の「出場2度目にして初の全国優勝」という奇跡を起こす―!
『スクール☆ウォーズ』の原作小説であるため、当たり前ですがお話の流れはそれとほぼ同じ。ただし、『スクール☆ウォーズ』では生徒たちの更生の方に重きが置かれているのに対し、こちらは更生してラグビーにひたむきに努力するようになった後の、挫折と努力を中心に描いています。
伏工の話は『スクール☆ウォーズ』の他『プロジェクトX』などでも特集されたことがあるため、「伏工ラグビーの歴史=生徒たちの更生の歴史」と思われがちですが、実際はそうではなかったことには驚かされました。更生して「さあ、ラグビーを本気でやるぞ!」ってなってから、また壮絶な戦いがあったんだなぁ。
ラストの大工大高との戦いでは、当時出場した選手たちや、試合を見守っていた卒業生の回想を交えつつ、かなり濃密に試合の様子を描写。極限状態の中で、伏工が勝利を勝ち取ったことが窺えます。もともとノンフィクション小説であるため、登場人物本人の回想セリフなどは全体を通してところどころ入っているのですが、終盤はクライマックスということもあり、その頻度が高かったです。
『落ちこぼれ軍団の奇跡』。『スクール☆ウォーズ』に比べるといささか淡白な気がしますが(『スクール☆ウォーズ』が大映ドラマのため、いろんな意味でインパクトがデカすぎる)、それでもドラマに負けないアツさと感動、そして強いメッセージが込められていました。
人間、時間がかかるかもしれないけど、信念と誇りがあれば、必ず再び立ち上がることができるんだなぁ…。
山口「ラグビーをやる目的は勝つためだけではありません。敗けたけど貴重なものを手に入れる。そんなことも大事です。(中略)勝ちたい、勝とう、そこから努力が生まれます。そんな集積が大事なんですよね。」(P.128より)
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